10日ヘーゲル国防長官は、カーター国防副長官が辞意を表明し、12月4日をもって退任するとの声明を発表しました。米国防省web記事によれば、10日朝ヘーゲル長官とカーター副長官が会談し、カーター氏の希望をヘーゲル長官が「reluctantly accepted」したようです。
ヘーゲル長官にとっては大打撃です。カーター長官は軍事作戦以外の国防省を取り巻く業務全体に精通し、強制削減対策方針であるSCMR取りまとめやインドとの軍事協力まで仕切った実力者であり、海軍基地での乱射事件への不測事態対応まで、大揺れの米国防省を支えてきた有能な人材です
実際、パネッタ前長官の後任者の最有力候補でしたから・・・
2011年10月から副長官でしたが、その前は2009年4月から技術取得兵站担当の国防次官として、ゲーツ元長官の下、「なれ合いの軍産関係」に切り込んでいった実力者でした。
背景に何があるのかは現時点で不明です。リトル報道官は退任理由を問われ「カーター氏自身の判断」とのみ回答しています
10日の声明でヘーゲル長官は・・
●10日朝、カーター副長官と会い、彼からの辞任の申し出を残念ではあるが受け入れた。彼は米国国防全域にわたる識見を備えた比類無き人物であり、それは直接又は間接的に仕えた11人の国防長官との仕事の中で培われたモノである
●パネッタ前長官時代から引き続き勤務してくれたこと、また12月まで勤務してくれることに感謝している。この困難な時期に国防長官の仕事を引き受けた私にとって、就任直後の時期を乗り越えられたのは他ならぬカーター副長官の支えがあったからである
●特に副長官が全霊を傾けて進めてくれたSCMR(Strategic Choices and Management Review)の取りまとめに感謝したい。この検討が予算が困難な中での国防省に力を与えてくれている。今後も国防省は、長くカーター副長官の功績から恩恵を得ることになるだろう
●私が就任する以前からの取り組み、つまり不意急襲に強い装甲車両の導入、国防省の購買力向上、サイバー対処能力の向上にも尽力してくれた。またインドとの軍事交流を強化してくれた最近の訪問も、忘れてはならない大きな功績である
●カーター副長官は秀でた戦略家であり極めて優秀な管理者であった。また彼の情熱、愛、如何なる官僚機構の障害をも乗り越える決意は、周囲から褪せることのない尊敬と評価を得ている
●国防省はカーター氏が職を辞することを本当に残念に感じているし、私も彼がいなくなることを寂しく感じている
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次官時代も含めば4年半の国防省高官勤務ですから、十分勤めは果たされたと思いますが、時期も時期、オバマ政権に嫌気がさしたのかもしれませんね
何せ、歴史と物理学の学位を持ち、理論物理の博士号をハーバードで獲得、次官就任直前まではハーバードのケネディースクール講座長だった引く手あまたの人材ですから・・・
ヘーゲル長官の声明からすると、パネッタ長官退任時に辞意を表明していたのかもしれません。なんとかヘーゲル長官の立ち上がりを支え、精根尽き果てた・・との感じでしょうか。
これだけの実力者で、学者としての経歴も立派ですから、ぜひ来日して頂き、講演などお願いしたいモノです。なんなら、日本のNSCの部外相談役とか、防衛省の顧問なんかにもいかがでしょうか
カーター副長官のお仕事ぶり
「米印関係アップ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-01-1
「2013年春のアジアツアー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-22
「2012年夏の来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-21
「国防省の調達改革」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-14
カーター国防次官時代のお仕事ぶり
「副長官へ議会で証言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-14
「コスト超過は企業責任」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-20
「調達制度改革は進展」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16-2
「国防省コストカット発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30-1
「KC-X最終決定:泥沼回避」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-25