中国は「サイバー世界にルールはなく、従って我々は何のルールも破っていない」と考えている
「米企業は独自に反撃を開始しており、影響を懸念」
27日、デンプシー統合参謀本部議長はBrookings研究所のイベント「Defending the Nation at Network Speed」で講演し、米中間で大きな問題となってきている中国によるサイバー攻撃問題について冒頭の表現で実態への懸念を表明しました
同議長は、本件に関して米中が対話を続け、何らかのルール作りを行うべきだと述べ、事態がエスカレーションの一歩手前まで来ている深刻な状態にあることを訴えています。
デンプシー大将はBrookings研究所で・・・
●中国との対話の中で私は、サイバー攻撃による知的財産の強奪について話題にするが、おおよそ「双方が不同意であることを確認する」ことになる。
●中国の考え方は「サイバーの道にはルールがないのだから、ルール違反と呼ばれる筋合いはない」である。米国は、行動の基準がないなら協議を重ね、両国の摩擦を防ぐための「何らかの道路規則」を確立しようと中国に投げかけている
●中国の指導者は認識しているだろう。来月予定の米中のサイバー安全保障の対話で、米企業からのデータ強奪問題が取り上げられるであろう事を。
●(元CIA職員スノーデンが米による中国ハッキングに言及していることに関し、)国家が通常行う情報活動と知的財産の強奪は異なる。例えば、我々が偵察機を中国領空外に飛ばすのは世界中の国が行う一般的な情報活動である
●中国による米国へのサイバー侵入はここ数年で飛躍的に増加している。私が統合参謀本部議長に就任して2年経過しない間に、17倍にも増えている。
●サイバー攻撃の急増により、いくつかの企業は独自の攻撃的なサイバー手段により「hack back:反撃」を行っている。
●専門家は、サイバー領域における防御とは異なり、サイバー世界で何が攻撃的行動かは明確ではないものの、低レベルの行動であっても国家間の事案になり得ると見ている。私はこの傾向を憂慮している
●公的機関でない組織の活動が国家の敵対行動と見なされる恐れがあり、この問題は国として取り上げて対応しなければならないと考えている
●現在米軍の戦略コマンド配下にあるサイバーコマンドを、戦略コマンドと同格扱いのコマンドにする案もあるが、将来の可能性はあるものの、今の段階では現状で問題ないと考えている。
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「hack back:反撃」する企業の気持ちはよぉ・・・く分かりますが、この問題はサイバー戦をいっそう複雑にしています。
誰が発信源か判別が困難なサイバードメインで、国家主体だけでなく、私企業やアノニマスのような団体が入り乱れることになれば、本当に収拾が付かなくなってしまいます。
技術の拡散により、高校生のいたずら集団が事を起こしたり、ネット上で集合した「マニア集団」が暗躍したり・・との時代が来るのでしょうか?
中国にも困ったものです。「サイバー世界に規則はなく、従って我々は何のルールも破っていない」発言が計画的なものなのか、既に国内サイバー攻撃業者や軍サイバー攻撃部隊を統制できなくなっているのか・・。
何となく統制力が弱まっている気もします。
Brookingsの関連webページ(講演原稿も)
→http://www.brookings.edu/events/2013/06/27-defense-cybersecurity-dempsey