3日付Defense-Newsは、4月下旬にスペイン沖の大西洋で行われた欧州の国際共同で進む「無人機の衝突回避試験」の様子を紹介し、無人機が有人機と同様の空域で飛行できるようにするための努力を紹介しています
同時に、無人機の民間分野への参入を製造企業が懸命に推進する中で、民間操縦者の「職域防衛」のために足踏みしているとの「いずこも同じ」現象も紹介されています。
また、無人機製造・運用のパイオニアで、40年に及ぶ実績を持つイスラエルのIAI(Israel Aerospace Industries)社の「sense-and-avoid:自分で感じて衝突回避」技術開発の奮闘振りも伝えています。
4月24日の試験の様子を・・・
●スペイン南東海岸に面した空軍基地から、イスラエル製の無人機Heron1が離陸し、スペイン空軍参謀総長のほか、欧州国防庁や欧州宇宙庁、更に欧州7カ国の軍需産業関係者らが見守る中で実験は始まった
●見通し線を越えた無人機は、やがて衛星回線による遠隔操作に切り替えられ、高度2万フィートに上昇して民間航空路に侵入した
●その無人機を追うように飛び立ったスペイン空軍士官学校所属の有人機は、イスラエル製無人機に接近し、正面や90度等の多方面から衝突を意図するような接近を繰り返した。
●上空の操縦席と地上から操縦する2人の操縦者は、航空交通管制官の指示に従い、衝突を回避しながら飛行した。
●また6時間に及ぶ試験の間に、無人機は地上での見学者に対し、各種の安全装置や手順、レーダーやビデオ映像を提供し、民間航空交通領域における無人機運行が1歩前進したことを証明した
●IAI社の担当部長は、「この試験は、無人機への搭載が必須の衝突回避センサーと装置が有効であることを示しただけでなく、航空当局を納得させ飛行証明を得るための十分なデータを提供してくれた」と成果を訴え、
●更に「無人機は民間航空分野の次のフロンティアである。世界が向かっている方向だ。10年以内に到達できると信じている」と実験終了後に語った
実験を支援・推進しているのは
●この実験は、欧州国防庁や欧州宇宙庁が資金を出して進められている「Project DeSIRE」の一環で、衛星を活用して無人機を欧州空域に取り込む技術のデモを行っている。
●実際に実験を進めているのは、スペイン空軍やスペイン航空当局だけでなく、スペイン航空産業が束ねる独仏伊蘭の企業グループである
●このような動きを見た米国も、昨年議会が米航空局FAAに対し、2015年までに無人機を航空交通路に取り込むよう指示を出している。FAAはこれに対し、無人機も有人機のように「sense-and-avoid:自分で感じて衝突回避」出来なければいけないと注文をつけている
●一方でIAI社担当部長は「我々が民間空域やその市場に前進するには、航空当局が定めた基準や手順の公表が必要なのだが、これには時間がかかるだろう」とFAAの動きが鈍いことを示唆しつつ、「我がIAI社が軍事分野で40年間苦労して道を切り開いてきたと同様に、民間空域でも衝突回避装置や有人機システムへの統合、通信途絶時の対処等の技術で世界をリードしているのだ」と語った。
無人機の民間空域統合の障害
●協力的(cooperative)な航空機を認識して回避することはそれほど難しくない。市販の衝突防止装置であるTCASを装備していれば、航空交通管制官にも危険が事前に通知される
●しかし非協力的(noncooperative)な航空機への対応は容易ではない。また無人機の全てのパーツが、有人の民間航空規定を満たすことを証明する必要もある
●IAI社は昨年、イスラエル国内で、無人機の民間空域飛行試験の許可を45回得て試験し、今年も既に25回の試験許可を得ている。IAI担当部長は、「この経験を欧州や米国での検討委員会やワーキンググループで共有し、安全で調和のとれた無人機飛行の標準的手順策定に役立てたい」と語っている
●しかし同部長は「操縦者グループや関係のロビイストが無人機の進出を快く思っていない。また各国の航空当局者も積極的ではない。製造企業関係者による懸命の働きかけが推進力の大半である」と実態を語った
●軍事分野では無人機により人命を危険にさらす必要がなくなる点が効用とされたが、民間分野ではこの主張は響いていない。
●民間航空の全てを無人機でなどとは考えていない。我々は、警察の支援、交通統制、災害対処、火災対処、農業、地図作成やインフラ開発等に無人機の活躍の場は多数残されていると考える
ご参考:イスラエル製無人機の実績
●米軍が初めて購入した戦術無人機はIAI社のPioneerであり、米軍ではRQ-2と呼称され、後に米国内で共同生産されるに至った。1991年の湾岸戦争に初投入されて数万時間を飛行、陸海海兵隊とも連携して運用し、2007年に退役するまで活躍した
●IAI社によれば、同社の無人機はこれまでに49ものユーザーが使用しており、アフガンでは7カ国が使用している(公表ベースでは豪、カナダ、仏、独、スペイン)。総計で100万時間以上の飛行時間を刻んでいる。
●イスラエルのElbit社である無人機Hermes 450は、英軍最初のISR無人機開発のベースになり、現在では計10カ国が運用している。そのうちの3カ国はアフガンで運用している
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非協力的(noncooperative)な航空機というのが、どのようなものを指すのかイメージがわきませんが、航空交通管制の枠外にある、好き勝手に飛ぶお金持ちの飛行機やレジャー用の有視界飛行機を表現しているのでしょうか? それともグライダー?
無人機は「民間航空業界の」操縦者にも嫌われていたんですね! 職を奪われるから・・・きわめて分かり易い理由です。自衛隊の操縦者と完全に一緒ですね。
でも、欧米主要国が全て導入して実戦で活用し、主要国ばかりでなく中小国家も導入している中で、盛んになりつつある各国との軍事交流の中で、日本が「ゼロ」の理由をどう説明するのでしょうか?
ロバート・ゲーツ語録
→私がCIA長官の時、イスラエルが無人機を有効使用することを知った。そこで米空軍と共同出資で無人機の導入を働きかけたが1992年に米空軍は拒否した。しかし私は3年前、今度は無人機導入のため牙をむいて4軍と立ち向かった→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07