陸自も見習え:米陸軍にA2ADミサイルを

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米陸軍よ、ミサイル部隊として米国版A2ADを遂行せよ
(当然、陸自も見習え!)
FA2013.jpgフォーリンフェアーズ4月&5月号がなぜ陸軍にミサイルが必要か:陸軍を救う新たな任務」とのCSBA研究員Jim Thomasの論文を掲載し、土地の占領と支配を任務としてきた陸軍の役割を見直し、軍事的合理性に基づき中国等が進める、ミサイルによるA2AD任務に転換していくべきだとの主張を紹介しています
全くの正論です! 戦車や大砲ではなく、ミサイル防衛であり、ミサイルによる敵の戦力投射能力の制圧を目指すべきだとの「直球ストレート」な主張で、INF全廃条約破棄も訴える「我が意を得たりの膝たたき」論文です。
これはそのまま、震災対処と無理矢理こじつけの離島奪還作戦に固執する陸上自衛隊にも適応できます。5月病のようなダレ気味の日々でしたが、気持ちがシャキッとなりました
かなり長い記事になり大変恐縮です。また、熱くなって一気に「適当翻訳」しましたので意訳が多いですが、論点はカバーしたつもりです
なお、以下のCSBAサイト記事からアクセスすると、全文がご覧いただけます
→http://www.csbaonline.org/2013/04/22/why-the-u-s-army-needs-missiles-a-new-mission-to-save-the-service/
まず陸軍に先制パンチの結論
Thomas-CSBA.jpg●WW2以降米陸軍は、海外の同盟国に侵入する敵から友好国を防衛し、占領し、領土を守るのが任務だった。しかし、イラクやアフガンでの長引く地上戦で、これが極めて困難で望まざる戦いだとの認識が広がった。そして今、いかなる陸軍が必要かの議論が盛んである
●より小規模で軽量な陸軍がよくある答えだが、アジア太平洋回帰の中でその役割は小さくなりつつあり、更に予算削減の中で労働集約型の陸軍は人件費の高騰で削減の矢面に立っている
●1990年代以降、米国のライバルは米国の戦力投射能力を否定する装備に重点を置き、これへの対処を米海軍と空軍が担っているが、陸軍も地上配備型のミサイルを装備することで、我や同盟国を守り、更に敵の戦力投射を妨害することで貢献すべきである
●陸軍は、伝統的な機甲部隊や短射程砲兵や歩兵を中心とした派遣部隊から、緊要な地域に展開する地上配備のミサイル部隊重視へシフトすべきである
現代における地上戦闘部隊の限界
●冷戦期以降、地上部隊が敵部隊を撃破し、地域を制圧し、敵指導者を追い出すことは出来なくなっている。冷戦時でも核兵器の使用以外でワルシャワ軍をそこまで追い込むことは出来なかった。
●イラクやアフガンで明らかになったのは、従来の視点での決定的な勝利が移ろいやすく、今後想定される敵でも同様であろう点である。イランへの侵攻や占領が実行可能だろうか? 誰が中国やロシアとの地上戦を想定するだろうか?
US army infantry.jpg●インドとパキスタンは例外だが、中国やイランは長距離ミサイル部隊を創設し、他国の陸軍相手ではなく、他国全体や海からの接近阻止に備えている。中国は「第2砲兵」を編成し、弾道ミサイルや対衛星兵器を運用させている
●これらイランや中国の地上部隊は最新A2ADシステムをリードし、防空網や宇宙兵器や最新戦闘機や静粛な潜水艦やサイバー兵器とともにA2ADを支え、米国が戦力投射するコストを押し上げ、米軍による遠方での作戦と統合作戦をより困難にしている。
●特にA2ADは陸軍の派遣展開活動を困難にしている。展開のために陸軍が利用する港や空港は敵A2ADの容易な目標で、展開先で使用する装備の集積場所も簡単な目標である。先端の潜水艦や機雷は、海上交通路に脅威を与える
米軍戦闘機の展開先も同様で、将来は一時的な移ろいやすい航空優勢獲得が精一杯だろう。先端兵器で武装した敵の不正規部隊は、展開し蝟集する我々の部隊の拠点をより簡単に攻撃するだろう。
●ロシアのような国は、近隣の小国を侵略制圧する能力を維持するだろう。しかし米国を含む他の全ての国は、海外に戦力投射を行うことがより困難になるだろう。逆に、他国が陸海空のコントロールすることを拒否することは、より容易になるだろう(注:正しく脅威の変化や技術の変化を理解し、戦力組成を変革できた場合に限り)
陸軍が保有すべきミサイル部隊は
海空軍はエアシーバトルでA2AD対処を考えているが、陸軍は排除されたと考える必要はない。しかしその為に陸軍は、伝統的な展開しての地上戦指向から、前線展開のミサイル部隊構築に焦点を変更しなければならない。現在も限定的ミサイル部隊を保有しているが、射程300km以上や対艦ミサイルが欠けている
●中国やイランに学ぶと、米陸軍は独自のA2ADミサイル部隊ネットワークで、前方展開の海空軍部隊を守り、一方で敵航空機、艦艇、地上目標を攻撃できる。技術を生かして新たな移動発射機も準備すべきだ。これらは海軍艦艇の発射機とは異なり、対空、対艦、ミサイル防衛ミサイル等、多様なミサイルに対応可能であるべきだ
US army artillery.jpg陸軍のミサイルは、第一列島線沿いの日本から南西諸島やフィリピンまで、対艦ミサイルや隠蔽可能なミサイルを展開でき、中国海軍の行動の自由を奪うだろう。同様にペルシャ湾岸でも、湾岸GCC諸国に展開してミサイル防衛網を構築し、イランの脅威に備えることが出来る。
地上配備ミサイルは、海空アセット装備のミサイルより多くの点で有利である。衛星通信でなく、地下の光ファイバー通信網を活用でき強靱で、電子妨害にも強い多数の弾薬を保有することが出来、また艦艇に比べ運用コストも低い。空軍機を防空から攻撃に振り向けることも出来る
●ミサイル防衛分野では、実用化が間近なレーザー兵器や電磁波兵器が地上では活用しやすい。これら兵器は攻撃単位のコストを劇的に低下させることが出来る。これら兵器は大量の電力を必要とし、移動アセットには向いていない。陸軍はこの兵器に興味を示していないが、よく考えるべきだ
●地上のミサイル部隊は一方で脆弱であり、分散し、カモフラージュしてネットワーク化しなければならない。このネットワークは展開先の同盟国等のネットワークと連接して使用できる。これを通じて同盟国を訓練できる利点もある
●中国やイランを見た場合、射程300kmでは大陸内部にある彼らの軍施設には届かない。抑止効果を高めるため、また相手に防御コストを課すため、陸軍ミサイルは射程を伸ばすべきである
●中距離ミサイルを保有する場合、米国はロシアと締結しているINF全廃条約を破棄する必要がある。射程500kmから5500kmの地上配備ミサイルの保有を禁じたこの条約は、中国やイランや北朝鮮がINFを保有するに至って無用の縛りとなっている。ロシアも破棄を願っているだろう
大胆な改革でリバランスに貢献を
地上配備ミサイルに力点を置くことで、米陸軍は米国の戦略目的達成に貢献できる。同盟国に展開すれば抑止力を強化して安心感を与え、ライバル国の戦力投射能力を押さえて睨みを効かすことができる
●この改革には大きな組織改革が必要であるし、長期展開も視野に置いた組織が必要がある。このようなミサイル部隊には、砲兵や防空部隊、宇宙やミサイル防衛コマンドの人材も必要だろう
陸軍文化からの抵抗も障害となろう。新たな組織の編成には、近年の予算削減で冷遇されてきた弱小職域にも資源配分される必要がある。今の陸軍を支配し主要幹部を占領している機甲、歩兵、砲兵職域幹部の抵抗を克服しなければならない
US army tank.jpg●軍事組織は予算縮小時に組織防衛を図り、焼け太りするケースすらあるが、この新たな部隊創設には陸軍内や議会に強力な力が必要(strong champions)である。
前例がないわけではない。1812年、当時の米陸軍は大転換を行い、港湾防衛のため沿岸地域に一連の要塞を構築し、以後沿岸防衛を主要任務とした。これは第2次大戦後に海軍が沿岸を担当するまで継続したのだ。今、陸軍が再び沿岸防衛を担当する時がきたのだ。もちろん、自国ではなく緊要な海外戦域の防衛だが
●新たなミサイル部隊の創設は、伝統的な機械化地上部隊の凋落を予告するものではない。むしろ陸軍自身が前方展開A2AD能力を保持することは、伝統部隊の有効性を確保する最善の方策でもある。
●しかしながら、戦艦が空母に取って代わられたように、装甲車両と機械化歩兵が支配する時代は終焉に向かいつつある。これに抵抗するのではなく流れをつかむことが、陸軍の有効性を確保する道である。
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DF-21-1.jpgJim Thomas氏は度々来日していますので、是非防衛研究所や自衛隊の教育・研究機関で講演してほしいと思います。
陸上自衛隊は海外遠征軍ではないからこの考えは日本に適応できないとの主張が陸自から聞こえてきそうですが、日本列島において戦車や大砲で戦う前に、穴を掘って陣地を作る前に、国防を担う部隊としてやるべきことがあるはずです
抑止力を高めて相手に出費を強いるため、本土に接近させないため、敵艦艇や着上陸部隊の自由を制約するため、陸上自衛隊が取り組むべきことは自明ではないでしょうか?
若い人々の柔軟な発想に期待します!!!
陸軍を巡る議論
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
「バランスのとれた軍を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09
「戦車、空母、戦闘機に捕らわれている」→http://t.co/tyFxLrq
「黄昏のエアシーバトル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-03
陸上自衛隊を考える
「天下の正論:陸自削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-09-15-1
「石破幹事長が防衛予算と中国を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
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「戦闘機の呪縛から離脱せよ!Ver.2」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
戦闘機の機数を維持することだけに固執し、思考能力を失い、搭載装備やISRアセット等を無視し続けた結果、何も出来ない組織に成り下がった我が空軍へ

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