デンプシー議長「(日本と韓国が)直面する脅威に対して相互運用可能な関係になるべき」
“I think … we should see this as an opportunity to become interoperable, in particular in those domains where we see the threat evolving.”
26日、韓国と中国訪問を経て来日中のデンプシー統合参謀本部議長は、安倍首相、小野寺防衛大臣、岩崎統合幕僚長と会談し、その後、防衛研究所で研究者や研修学生に講演しています。本日は日本のプレスがほとんど報じなかった(たぶん)防衛研究所での講演と質疑をご紹介します。
デンプシー議長は厳しい立場にあります。オバマ第2期政権がヘーゲル、ケリー両長官を含め、あまり軍フレンドリーではなく、同盟国等へのコミットメントについても退潮傾向だからですが、そんな中でも軍人間の仲間意識からか丁寧に同盟国に米国防政策を説明しようとしています。
「野球」や「合気道」(これは意味不明)を例に、米国アジアリバランスと関与が揺ぎ無く、同時に同盟国間の協力が重要な点を強調しています
タイトルの「韓国とも協力を」は米国防省web記事のタイトルにもなり、デンプシー議長が質疑で言及しました。あらかじめ用意されていた内容で無いかもしれませんが、強い本音でしょう。記事のタイトルになるくらいですから。
用意されたいすに座らず、原稿無しに立ったままで、優しい英語で直接聴衆に訴える姿は、防衛研修所の研修生達に強いインパクトを与えたものと思います。もちろん、斜に構えていたであろう研究者たちにも・・・。
防衛研究所でデンプシー議長は
●まず、皆さんの米国軍事力とその維持、同盟関係とアジア太平洋戦略に対する疑念を払拭したい。
●脅威が変化し、脅威が無責任な国家が保有するバックパックやノートPCや最新兵器から繰り出される時代に、また米国防費が削減される中で、米国が世界のリーダーや信頼できるパートナーであるかに関する疑問が生まれている。
●しかし私は確信を持って、米国は出来るし、そうしなければならないと申し上げたい。その理由を今日は説明したい。
●まず米軍の能力に及ぶものはいないし、大部分のエリアで先端を走っている。サイバーを含めてである
●野球ファンの皆さんなら分かるように、シーズン開始当初だけでは長いシーズンを占うことは出来ない。最終的な勝利は戦略と能力とチームワーク、努力とフェアーな戦いを重んじる価値観から生まれるものである
●皆さんも見たであろう。我々は韓国にB-2爆撃機を派遣し、同盟国と共に北朝鮮を抑止している。自衛隊の皆さんと同じく、米軍の優秀な兵士たちはその勇気と技能、米軍指揮官はその賢明さと機敏さで我々に自信を与えてくれている
●また、米国と同盟国関係が強力であり、より強力になりつつあるからである。日、韓、豪、比、タイとの強力な関係、アジア太平洋における米国戦略の基礎がある。これらは多国間の関係の元締めとなるピンであり、これらの関係が、自然災害から危険な支配者に対処する柔軟性と機敏さを与えてくれる
●日米関係は強力な安保条約と相互運用性を伴っており、合気道のようである(意味不明?)。金正恩の向こう見ずなミサイルによる恫喝は、我々の防衛体制改善と関係強化を促している。同時に北朝鮮は我々が永続的な同盟を妥協なき信頼の上に築いていることを知るべきである
●私は米国戦略に(同盟国等が)疑念を持っていることを知っている。それが予算削減からだけでなく、中東からの穏やかでない撤退が背景にあることも認識している
●アジアリバランスは単なる政策ではなく、地域が社会経済的に世界の重心になろうとしている現実からくる不可避な戦略なのだ。米国は包括的なアプローチを執っており、貿易、商業、外交、開発を極東だけでなくアジア全域で優先して行っている
●例えば先週、最新の沿岸戦闘艦の1番艦がシンガポールに配備された。そしてより重要なのは、米軍の最優秀な人材が常にこの地域に配置されるであろうことだ。ここ数週間のミサイル防衛協力の加速も明確な我が国の関与と強固な同盟の証である
●野球で言えば、まだ1回の攻守が始まったばかりである。リバランスの長いシーズンが生産的なものであることを楽しみにしている
質疑応答で米韓関係緊密化を要望
(記事曰く「デンプシー議長は、北朝鮮の継続的な挑発的姿勢に対応するため、日本と韓国がより緊密に協力するよう促した」)
●25日に横田基地内の航空総隊司令部を訪問したが、非常に印象的だった。地上レーダー、空中センサー、センサーとシューターの双方を備えた海上アセット、それに地上のパトリオットミサイルの融合された姿に感銘を受けた
●日米は防空に関する相互運用性で驚くべきレベルにある。ピクチャーを共有し、両国が共に高い能力を持って協力している。米国は同じような関係を韓国と持っており、朝鮮半島でも同様の能力を協力して発揮している
●しかし同じ北朝鮮の脅威に直面しているながら、(日本と韓国の)2つのピクチャーは融合されていないではないか!
Dempsey noted, however, that “as I stand here today, with the North Korean threat very real, those two pictures are not combined.”
●北朝鮮はこれまでのように恫喝と交渉のサイクルではなく、継続する挑発的姿勢に入っている。これを良い機会と捕らえ、(日本と韓国が)特にいま直面する脅威に対して、相互運用可能な関係になるべきではないかと考える
●米国のアジア太平洋戦略は、地域における2国間、3国間、そして多国間のアプローチで問題解決に当たるアプローチを執っている。予測困難な北朝鮮への警戒を厳にするため、米国は地域の同盟国等との関係とその協力を重視する
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安倍総理にも伝えたんでしょうか? 国会で安倍総理が靖国に言及し、脅しに屈しないと言い切った後、米国の政策担当者やアジア専門家の間では「安倍政権は危険だ。米国が間を取り持つ努力を懸命にやってる最中の大事な時期に、いきがって何を騒いでるんだ」との批判的な見方があっという間に広がったらしいです。
日本国内で「あっさり」受け入れられたのとは全く異なり、非常に強い反応のようで、安倍政権は翌日からトーンを随分ダウンして発言しているところです。
デンプシー議長は軍人ですからそこまで言いませんが。内心は(推定)→「靖国に拘っている場合じゃないですよ、韓国と揉めてる場合じゃないですよ、中国と本当に対峙する覚悟があるんですか・そんな能力無いくせに・・身の程をわきまえろ」と言いたかったのかもしれません
でも、この「韓国と協力体制を」との訴えに日本はどのように対応するのでしょうか? 重い宿題になりました。また研修学生は質問したのでしょうか?「F-35や戦闘機の数を削減し、防衛体制を見直したいが米国は賛成してくれるか?」と・・・。
日本の直前には中国を訪問
「米軍トップが習近平政権下で初訪中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-23
「日韓共通戦略目標を提案する」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-10-02-1
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「戦闘機の呪縛から離脱せよ!」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
戦闘機の機数を維持することだけしか眼中になく、脅威の変化や周辺システムを無視し続けた結果、何も出来ない組織に成り下がった我が空軍へ