CNASが空母とF-35製造中止を提言

Ford-Class-Carrier.jpg11日有力シンクタンクCNASが、今後「Disruptive:破壊的」シリーズとして複数レポートを発表する計画の第1弾として、「空母の追加建造は不要で無駄」と断じたレポート「At What Cost a Carrier」(約12ページ)を発表しました。
本研究シリーズは、安全保障環境が厳しい中でも国防予算削減が避けられない状況下、脅威に対応するには米軍を根本的に見直す必要があり、そのための大胆な「本音」提言を行うことにあるようです
上記考え方は、フロノイ前政策担当国防次官(元CNAS理事長)も最近発表しています
→http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2628
本日の記事はDefense-Newsの記事紹介ですが、レポートの内容たるや、戦闘機批判の「東京の郊外より・・・」も真っ青なほど辛辣かつ直接的です。著者は元空母艦載機パイロットであり、その辺りも皮肉です
当然米海軍からは、平時のプレゼンスや抑止効果、同盟国への安心感の提供等々の「空母の効用論」が出るのでしょうが、そんなことは枝葉末節と言わんばかりの内容です
「破壊的」シリーズ第一弾は空母を
ASBConcept.jpg●70年以上海軍作戦構想の中核であった空母は、対艦弾道ミサイル等の出現進歩により極めて脆弱な装備となっており、かつての戦艦のように、巨大で高価で脆弱で驚くほど時代に則していない装備になる危機にある
●また海軍が継続して空母を建造することで、必要な無人機や潜水艦搭載ミサイルを犠牲にする点でも問題が大きい。更に関連で、海軍は高価で試験も終了していないF-35の調達を止め、FA-18を維持すればよい。
●これらの結論は、仮に今「ゼロ」から海軍を創建するとして、現在の技術動向を踏まえれば、今現在の姿とは異なった形になることは明らか
なぜ空母の建造を中止すべきか
●他国のISR能力や長距離精密誘導兵器の拡散により、空母はもはや目標に十分接近できず、又は長く生存できないだろう。
●中国は、63隻の潜水艦、75隻の戦闘艦艇、227機の航空機(?)、30種類の対艦巡航ミサイル、更に332艇の警備艇等々で、米海軍機動部隊に迫ってくる
中国の対艦弾道ミサイルDF-21Dのような兵器を、海軍戦略家は無視している。機動する多弾頭で米艦艇の防御を飽和させることが出来る兵器なのに。
ASBM DF-21D2.jpg●DF-21Dは高価に見積もっても1発10億円だが、空母(フォード級)1隻の建造費で1227発のDF-21Dを準備できる計算になる。中国はゴビ砂漠の空母を模擬した標的でDF-21Dの試験を行っているが、費用対効果からして無視できない
空母艦載機も極めて非効率である。膨大な訓練費、操縦者の維持費、整備費はその有効性を上回るペースで増大している
●巨大空母の必要性は、米国が多数機を運用する必要があるとの思考で政策決定者を誘導した結果であるが、今後も高価なため多数準備できない艦載機を防御するために多数の艦艇等を必要とする
●このような脅威下で、50年以上使用するフォード級空母の建造し運用するとの思考には「傲慢さ」を感じる。6000人もの乗員を要し、毎日運営に6億円も要する空母の有効性は疑問である
対応策の一例は・・・
SSGNOhio4.jpg解決策の一つは、空母艦載無人機の開発とF-35計画の中止である。より長い航続距離と滞空時間を持つ艦載無人機を、現在の空母や強襲揚陸艦に搭載する案である。無人機は必要時に飛行すれば良く、技量維持訓練費などが大きく圧縮できる。
●これにより、今新型空母建造を辞めても、最長2065年まで使用可能な現有空母を無人機で活用可能である
●同時に、通常ミサイルの成熟と配備拡大も進めるべき。現空母は1日に最大で航空機を160回出撃させるが、オハイオ級ミサイル潜水艦は巡航ミサイルを155発搭載している。オハイオ級原潜は敵拠点近くにまで潜入し、緊要なインフラ等を直接攻撃可能である
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CNASのレポートは
→http://www.cnas.org/node/10190
RIMPAC2010-2.jpg冒頭で述べたように、空母命派からすれば、平時のプレゼンスや抑止効果を叫びたいでしょうし、つっこみどころも多そうなレポートですが、その中心となっている考え方は全くの正論です。
それは、空母は脆弱性を増しており、維持費に見合った効果が「ウナギ下がり」である点です。
それ以外にも、ゴビ砂漠の空母型目標の存在や様々な数値を示して説明する中身はなかなかおもしろそうです。以後の「Disruptive:破壊的」シリーズにも期待です!
CNASの研究レポート関連記事
「横田基地官民両用を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-11-01
「良心的:CNAS米軍改革案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-27
「CNAS対中の日米同盟提言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-10

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