米テストパイロット教育の変革:サイバー宇宙無人機へ

testF-16.jpg1月号のAF-Magazine「Test Pilots for Tomorrow」との記事を掲載し、ただでさえ厳しいテストパイロットコースに、避けて通れない課題であるサイバー・宇宙・無人機科目を組み込む努力を紹介しています
テストパイロットの任務は、新開発試作機での初飛行、新しい機体制御ソフトの飛行試験、付属装備やポッド換装時の適応試験等々、前線部隊に投入する前に確認すべき事項は多数あります
未知の航空機や機体や兵器の特性を実際に身を持って確認し、開発にフィードバックする業務ですから、「未知の世界」に挑める能力を備えた人材の養成が求められます
当然テストの対象となるシステムを技術的に頭で理解する必要もあり、操縦者としての腕だけでなく、アカデミックな部分でも大学院レベルの電気や物理や数学の理解が求められます
米空軍テスト操縦者養成コースの概要
testT-38.jpg●加州エドワーズ空軍基地で行われる48週間のコース。年間約50名を養成も、将来は40人へ。20名を1クラスとし、複数のクラスを並行実施
操縦者だけでなく、エンジニアや兵器システム操作員も履修している。海軍は別のコースを独自に保有している
48週間のコース中、20種以上の機種の操縦が課せられる。マニュアルだけ渡され、実際の飛行を行うことも。各機種の技量向上ではなく、新しい機種への適応力養成が主眼
●毎年500名以上の応募があるが、合格者は50名程度選抜試験には3機種の操縦が含まれ(C-12,T-38, sailplane)、必ず1機種は未知の機体を操縦させる
宇宙アセットへの取組
サイバーや無人機に比べると取り込みやすく、まず宇宙アセットに航空機やシステムが如何に依存し、その欠落が如何に影響を与えるかを学ぶ
航法、通信、データリンク、無人機操作等々との関係と試験のノウハウを学ぶ
サイバー関連取組
testC-12.jpg●サイバー戦と言う意味だけでなく、システムやソフト全体を理解することが「サイバー」に込められている
これまでは無線機、航法機材、レーダー、センサー、ホスト計算機等々を別々に学んできたが、F-35の様な機体は、ソフトで酸素精製装置から機体制御まで全てがリンクしている。
●これまでの機材別アプローチではなく、兵器システムとしてサイバー視点から教える必要があり、カリキュラムの再構成を実施中である。
●既に余裕時間のないコースに宇宙とサイバーを付加するため、「classroom」時間を削り、コース全期間に分散し継続授業する方法を2013年7月から実施で検討している
無人機関連の取組
無人機操縦者のコース履修者は複雑である。これまで4名が卒業しているが、有人機操縦経験の有無等により、個々のケースで対応している
●無人機操縦者は操作員の視点で機体を見るが、実際に機体に搭乗している視点で試験が出来るように教育する。
●無人機操縦者は、F-16とT-38の前席操縦を除き基本的に他学生と同じコースだが、無人機の評価フライト実習が追加される。CSO(combat systems officers)と似た課程となっている。
試行的に、契約企業保有のLearjet-24(有人機)を校内のシミュレーターから操作できるようにして教育に使用している。本機はB-52からグローバルホークまでを模擬でき、混雑した空域で危険な時は機上の操縦者が操作を取ることが出来る点で優れている
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testF-16-2.jpg依然として戦闘機操縦者が組織の中心に据えられ、硬直的な面もある米空軍ですが、サイバーや宇宙や無人機が徐々に組織に浸透し、その特徴や有効性が認識され、テストパイロット教育にまで浸透してきています。導入当初の「組織」や「職域」防衛の壁は一つ越えたと言えましょう。
一方、我が国の空軍では・・・意味無き戦闘機維持の壁に阻まれ、今日に至るまで無人機は「ゼロ」です。
ゼロを100倍してもゼロですから、組織として何の進展もありません。サイバーも宇宙もほぼ同様です。そしてその根源は、我が国防衛政策を「隠れ蓑」にし、変化を望まず考えもしない者たちです
「無人機操縦者の手当と民需」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-23
「無人機操縦者養成の新時代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-27

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