16日、米空軍参謀本部のジェームズISR部長が空軍協会のGlobal Warfareシンポジウムで講演し、将来予想される厳しいA2AD環境下で求められるISR能力について語りました。
タイトルの「対中国」は勝手に付けたもので、ジェームズ中将が具体的国名や組織を挙げたわけではありませんが、イランやヒズボラ等とは格が違う存在ですのでご理解いただけると思います
19日付AF-Magazineのデイリーニュースは、極めて断片的な紹介しかしていませんが、重要な話だと思うので取り上げます
空軍ISR部長Larry James中将は・・・
●米軍のアジア太平洋への「リバランス」は、ISR需要の増大をもたらすだろう。そして米空軍は、過去10年間イラクやアフガンで実施してきたものとは異なる対応を求められる
●我々は過去2年間(恐らく2010年QDRが出て以降の2年間)、将来のISRはどうあるべきか、またA2AD環境下でどのようにISR作戦を行うかを自身に問いかけてきた
●アフガンやイラクでのISR作戦は、ほとんどが敵からの抵抗がない環境下で、空中アセット中心(very air-centric)に遂行され、無人機MQ-1、MQ-9、グローバルホーク、そして有人のMC-12が活躍した
●しかしこのような手法は変化する。我々は、言わば「platform-agnostic and sensor-agnostic」(センサーやアセットに余り期待できない状況)で「more about the data」(より多くの多様なデータが重要)な環境に直面する
●より冷戦時代に近いとも表現できる。空軍の空中ISRアセットはほとんど敵領土内に存在できない状況であった冷戦時代のように、A2AD環境ではすべてのISR情報を融合することが求められる
●空中アセット、宇宙、人的情報、サイバー、クラウド等からの全ての情報を総合的に処理分析する必要がある。ツイッター情報も「Twitter-int」として活用されるべきだろう
●米空軍ISR部門への課題は、上記のような多様なソースからの膨大な情報を、如何に管理して活用するかである。
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突破型の長距離ステルス偵察機かねて爆撃機の開発は優先事業だったはずですが、それだけでは不十分だとのもっともな指摘です。
GDP世界第2位の国を相手にするには、従来の画像や映像情報だけでなく、人的情報やツイッターなどSNS情報までを分析対象にしなければならないという問題意識です。
ジェームズ中将は、空軍士官学校も米空軍大学もトップ数%で卒業の優秀な方で、宇宙分野を中心に電波情報や関連調達業務も経験している宇宙情報の権威です。
唯一の海外勤務が、横田の5空軍副司令官(兼ねて13空軍副司令官:2007~08年)という変わった経歴です。あとはワシントンDCとカリフォルニアとフロリダがほとんど。
空軍ISR部長はA-2とも呼ばれ、以前は情報部長とも呼ばれていたポストです。しばらく戦闘機パイロットが占めていたポストですが、時代も変わったものです。日本でご存知の方も少なからずいるのでは・・・。
「米空軍ISR組織の革新」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-21
ジェームズISR部長の記事
「MQ-X計画は中止」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-16
「データ処理容量不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-27