海空シフトの中で米陸軍は：AUSA2012

10月22日から24日の間、米陸軍協会（AUSA：Association of the U.S. Army）主催の年次総会が開催され、陸軍高官・軍需産業・安全保障専門家等が一堂に会して陸軍の将来を議論し、装備品見本市も行われたようです。
今年のAUSA年次総会の話題はこの一点、「新国防戦略でアジア太平洋重視が示され、そこでは海空軍中心のAir-Sea Battleが重視されている。同時に国防予算の大幅削減が現実味を帯びる中が、陸軍はどのように生き残っていくのか？」・・・です
この疑問に対し、直接・間接に多くの米陸軍高官が本年次総会で発言しましたが、本日は総会最終日に行われたオディエルノ陸軍参謀総長の講演を中心に「DODBuzz」記事からご紹介したいと思います
オディエルノ大将は陸軍人トップとして
●中には新国防戦略を陸軍の存在に疑問を符をつけるものだと解釈する者がいる。また将来の戦いを誤解し、10年以上に及ぶ最近の戦いでの犠牲や経験を忘れ去りたいと考えている者もいる
●そうした人間に私は言いたい。わが陸軍は237年にわたり米国の国益と米国を守ってきた。この必然には何の変化も無い
●紛争防止にはプレゼンスが必要だ。環境を整えるにもプレゼンスが必要である。また平和を回復するにもプレゼンスが必要なのだ。そしてほとんどの場合において、プレゼンスは誇り高き陸軍人の着る制服が体現しているのである
●米軍が将来作戦する環境はますます複雑になる。そこで必要になる戦いの「人間的側面」を、我々は10年を超える厳しい戦いの中で体得してきた。これらの教訓を将来の環境にも生かさなければならない
●米陸軍は「Unified Quest」と呼ばれる検討会を継続して行っている。そこでは大学やシンクタンクの専門家等々、陸軍内外の有識者が陸軍を取り巻く将来環境や役割を脅威、財政状況、文化側面から議論している
●この検討会は、陸軍が将来何を期待されているかを明確にすることを助けてくれる。不正規戦、通常戦、対テロ戦、犯罪的行為等々が組み合わされたもの等が議論されている
●これら検討対象は我々が世界中で目にしているものである。米陸軍は多様な分野で前進しているのだ。
カーター国防副長官は・・・
●我々は統合の目標として「Joint force of 2020」を定め、それに向かっている。陸軍は新国防戦略においても重要で主要な役割を負う
マクヒュー陸軍長官は・・・
●皆さんはAir-Sea Battleと聞くと海空軍を考えるだろう。それは自然なことだ。しかしAir-Sea Battleは皆さんが考えるより遥かに広範な概念である。
●私は明確に言い切ることが出来る。Air-Sea Battleには陸軍が担うべき役割があり、我々はそれを追及していると。
●皆さんに知ってほしい。米国以外の世界10大陸軍国が全てアジアにあり、アジア太平洋地域の軍事力トップ28位までの国のうち22カ国の軍は陸軍人がリーダーであることを
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「DODBuzz」記事は、最後にゲーツ前国防長官のかつての言葉を紹介しています。その言葉とは・・・「将来どこでどのような紛争が起こるかを予想する点において、米国防省は完璧であった。完璧に予想をはずし続けている」です
マクヒュー陸軍長官は、「米軍にとって鍵となるのは、あらゆるスペクトラムの脅威や紛争にいつどこででも対応できる能力であろう。米陸軍はあらゆるリスクへのヘッジを提供できるだろう」と存在意義を語っています。
ご紹介した発言は全て正しく、陸軍高官の気持ちは理解できます。しかし、どれだけ「ヘッジ」を行う余裕があるか？　どれだけ海空軍戦力に投資が必要か？を総合的に判断すると・・・
どのような方向に向かうのか、予算強制削減の今後もあり、注目です。　
「Unified Quest」と呼ばれる検討会・・・このような場が日本で成立しないのが残念です。F-35の導入に関しても、陸上自衛隊の今後についても・・・。
「前：陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後：陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
「陸軍参謀長に与える課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-13
「脅威の変化を語らせて」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
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