注意喚起のつもりでしょうが、結構衝撃的な発言が米空軍トップから飛び出しています。
9月18日、何度も取り上げた空軍協会総会でウェルシュ空軍参謀総長は、自身もサイバードメインのことをよく理解しているとは言えず、空軍内でも理解不十分な高官が意思決定を行っていると語り、ブラックホールに予算が向かっていると懸念を示しました。
そして結論として、サイバー戦関連の取り組みを慎重にスローに進めると言及しています。
サイバーの脅威は待ったなしで、わが防衛省も9月7日にサイバー攻撃対処の指針を発表し、「サイバー空間防衛隊」を100人規模で新設する予算要求を行い、更に当該分野で高い能力を有する経験者の採用、つまりハッカー採用にも意欲を示しているところです。
ウェルシュ大将の表現「going a little slow」が、具体的に何をどの程度は不明ですが、重要な分野ですのでTake noteいたしましょう。
空軍参謀総長は空軍協会総会で
●私は「IPアドレス」が何を意味するのかをよく知らない(場内爆笑)。
●また、空軍内のサイバーに関する議論には、何を議論しているのかよくわかっていない人たちが多数参加している。彼らは皆、私のような人達だから理解できる(再び爆笑)
●私はサイバードメインの重要性を否定しているわけではないし、最優先課題と考えている。良くも悪くも、我々が成すこと全ては、サイバー空間により又はサイバー空間を通じ影響を受けているのだから
●実際、米国防省は毎日、約1千万回のサイバー攻撃を受ける状態にあり、専門家には、潜在的敵国は既に対米サイバー作戦計画を確立していると考える者もいる
●一方で、サイバードメインへの投資が、ブラックホールに消えているのではとの懸念を持っている。
●サイバーをより良く理解するまで(投資を)待とうと思う。我々が何をしようとしているのかをよく理解するまで、作戦面で少しスローに進もうと考えていることを解ってほしい
●米空軍は時間を掛け、意思決定を行うに適当なサイバー知識を得たリーダーが配置されるのを待たなければならない。平易に言えば、現状では「idiots:愚か者」が揃っているということだ
●サイバー専門家の皆さんは、我々に教える際は専門的な用語や説明法はやめてほしい。
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本講演はDefense Newsも紹介しています
講演を聞いた空軍士官の中は、「あんな表現を航空機や兵器に用いたら直ちに首だ」と驚いていたようです。
なお米空軍のサイバー作戦担当責任者であるマシュー少将(Earl Matthews)は、「10月に空軍の大将クラスを一堂に集め、NSAの専門家とともにサイバー空間問題について集中的に議論する場を開催する。言わばサイバー戦に関する全身洗礼(immersion)の日と言える行事である」と述べ、指導者自身の勉強をスタートする計画を明らかにしています
参謀総長の表現ぶりはともかく、私を含め、サイバー空間を理解せずにサイバー戦を語っている(振りをしている)人は多いと思います。特に意思決定をする立場の人に・・・。
この指摘は謙虚に受け止めるべきでしょう
「サイバー指揮官がハッカー大会へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-28-1
「サイバーの弱点を探る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-18
「地域コマンドに権限を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-12-2
「軍需産業のサイバー対策強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-13
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