Resiliency(強靭さ)を捨てたのか?

7日、防衛省は25年度予算の概算要求の概要(解説資料50ページ:2.8MB)を公表しました。
予算要求の中身は、防衛大綱や中期防衛力整備計画の項目に沿って、主要事業は以下のように無理やりカテゴリー分けされ、さも実質的な中身があるかのようにお化粧されて並べられています。
(以下、主要事業の項目)
NAMA2gaisan.jpg1 実効的な抑止及び対処
(1)周辺海空域の安全確保
(2)島嶼部に対する攻撃への対応
(3)サイバー攻撃等への対処
(4)ゲリラや特殊部隊による攻撃、大規模・特殊災害等への対応等
(5)弾道ミサイル攻撃への対応
2 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化
(1)平素からの情報収集・警戒監視
(2)各国との防衛協力・交流等の推進
(3)アジア太平洋地域における多国間協力の推進
3 グローバルな安全保障環境の改善
(1)自衛隊の国際活動基盤の強化
(2)国際社会が行う活動への取組
4 宇宙・情報通信関連事業
(以上)
JGSDF2.jpgしかし現状は相も変わらず戦車、護衛艦、潜水艦、戦闘機(亡国のF-35)が看板を替えて大部分を占めているのが実態です。サイバーや宇宙は申し訳程度の「研究」費を積み、ISRに関しても小手先の能力向上や小さな装備や部隊導入です。
大きなスペース割いて説明している事業も、実態のほとんどない(F-35を隠すような)カモフラージュ事業です
まさに我田引水、陸海空の組織防衛姿勢が明確に見て取れるラインナップです。
「石破茂元大臣が語る防衛予算」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
本題はResiliency(強靭さ)はどこへ? です
B-52Guam2.jpg米軍のアジア太平洋地域における体制の指針は地理的に分散し、作戦面で打たれ強く、政治的に持続可能な体制」です。
これは中国のA2AD能力、特に精度の高い弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃による被害を凌ぎ、反撃の基盤を何とか確保しようとの姿勢が表れた指針であり、中国の軍事動向を真摯に正面から捉えれば、軍事的合理性から当然の如く導かれる結論です
米軍は「分散し、打たれ強い」体制作りのため・・・
嘉手納やグアム軍事施設の強じん性アップ
●グアム被害を想定したテニアン島などの周辺諸島軍事施設の再整備
豪州やシンガポール等での代替軍事拠点確保(ローテーション派遣部隊の展開基盤
整備を看板にして)
アジア全域での空港調査(代替空港としての使用を念頭)
豪州での緊急部隊展開訓練(グアムからの避難訓練
グアムでの大規模被害対処訓練
宇宙アセットやサイバー攻撃被害を想定した官民同盟国合同訓練
嘉手納や三沢以外の自衛隊基地での米空軍の移動訓練
等々・・昨年あたりから加速度的に増加しています
更に言えば、沖縄海兵隊の再編は、中国に近い沖縄からグアムや豪州への海兵隊部隊の後方退避との意味合いを強く含んでいます。
JGSDF.jpgしかし防衛省・自衛隊の施策を見ると、中国の脅威が日本を素通りしていくかのように、「分散」や「打たれ強い」体制への取り組みは皆無です。
パワープロジェクションしてくる米国が必死なのに、その基盤となる我が国がどうして「脅威」とその「変化」を無視できるのでしょうか???
概算要求には、那覇基地に2個目の戦闘機部隊を配備する施設整備が含まれていますが、本当に強靭性も考えた事業なのか? さもなければ中国に攻撃して下さいと言わんばかりの「ばか事業」です。E-2Cの沖縄整備基盤も同類です
例えば、戦闘機の機数を削減してでも空中給油機の増数を要求し、被害が少ないであろう東日本の基地から作戦を行う体制を目指すのであれば一理はあります。しかしそんな工夫も思考の後も見えない概算要求です
F-35FrontB.jpg残念ながら本概算要求は、戦闘機の機数を維持するため(または議論したくないので)、脅威の変化と軍事的合理性に目をそむけ、無理やり戦闘機が必要な作戦構想をでっち上げるための要求としか読み取れません。
または、脅威の変化への対応などを現在の国情から考えると「疲れる」ので、全ては「後任者負担・次世代へのつけ」にしよう・・との思いが見え隠れする概算要求です。
陸上自衛隊の新型戦車が、「ゲリラや特殊部隊による攻撃対応」に分類されているのも哀れです・・・。更に言えば「ゲリラや特殊部隊」対処と「大規模・特殊災害」対処を1項目にまとめているのも異様ですね。
米軍は「分散し、打たれ強い」体制ために・
「有事直前嘉手納から撤退?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「前対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-03-1
「後対中国で北東から南東アジアへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-04
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12
「嘉手納基地滑走路の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-09
「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
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