「御社への強制削減の影響を知りたければ、売上11%カットで考えて下さい」
5日、軍需産業担当のケンドール国防次官が関連産業関係者の会合(ComDef 2012)に出席し、「馬鹿げた方法だが・・」と苦笑しつつも、上記の言葉で企業関係者の関心事項に回答を試みました。
国防予算の強制削減(sequestration)については、これまで繰り返し状況をご紹介してきましたが、夏休みシーズンが終わった今でも議会や政府側に動きがありません。
そんな手詰まりな状況を、6日付「DODBuzz」が報じています
6日付「DODBuzz」記事は・・・
●冒頭の言葉は、国防省の武器バイヤーである国防次官から、予算削減の細部を知りたくて困り果てている企業幹部に告げられた言葉である
●次官自身も馬鹿げた方法だと認めながら、同時に強制削減が来年1月2日に発動された場合、国防省の手は縛られており裁量の余地がない状態にある。
●ホワイトハウスのOMB(Office of Management and Budget)は、大統領の命を受け、2~3週間程度で強制削減によるカットが具体的にどのような影響を与えるかのレポートを発表する予定である
●ケンドール次官は単純化して複雑な削減説明を試みたが、軍需産業界はOMBレポートの細部内容に強い関心を示している。パネッタ長官は議会に最低限の削減対応計画しか立てていないと述べているが・・・
●オバマ大統領は、現場兵士の給与や退役軍人関連予算は保護すると語っており、残された部分で国防省の希望事業を活かすクリエイティブな考えがあるのか・・・との疑問を専門家は呈している
●ケンドール次官も「ほとんど柔軟性を発揮する余地はない」と苦悩を語り、アフガン経費である海外緊急作戦費も削減されることになる。
●アフガン経費を削減して前線兵士を危険に晒し、退役軍人経費を例外にするのか等々の疑問の声が専門家から上がっている
●複数年契約の事業への対応も多く聞かれる疑問である。海兵隊司令官を含む高官は、強制削減を吸収するため、更なる事業の削減やロスを受け入れざるを得ないと語っている
●ケンドール次官が5日に語ったような単純な図式よりも、もっと複雑なやり繰りを「強制」するのが強制削減(sequestration)である。
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相変わらず消化不良ですが、2~3週間程度(next couple weeks)で出るOMBのレポートに注目しましょう。
大統領選挙に向けた党大会も行われ、両陣営の政策論争が活発化する時期ですので、国防政策にかかわるそちらの議論も含め関心を持って参りましょう。
1機150億円(まだまだ仮置き)の戦闘機価格や、組織防衛優先の地上部隊だけが勝手に意気盛んな島嶼防衛予算を含む、陸海空内局完全バラバラの我が国防衛予算はもっと混迷しているのかもしれませんが、米国の方が情報があり勉強になり、フォローする気になりますので見ていきます。
「基本を解説:強制削減とは?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-28
「CSBAの削減影響分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-28
「強制削減の影響を企業に質問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-10-1
「強制削減の影響を報告せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-27