「在沖縄や在グアム米空軍アセットへの最大の脅威は、中国空軍からのモノではなく、弾道ミサイルからの脅威である。従って米軍は、攻撃を受けた後の環境下で作戦する訓練を志向すべきである」
4日、米空軍協会AFAの下部組織であるMitchell Instituteが中国空軍に関する講演会を開催し、叩き上げの米空軍士官だった中国空軍専門家(現在は民間研究所の中国軍分析官)が講師として中国空軍の今を語っています。
講演の細部は公開されていませんが、発言のポイントを米空軍協会webサイトの5月7日付Daily Newsが報じていますので、短いですがご紹介します。
まず講師Kenneth Allen氏の紹介
●1971年から92年の間、米空軍で勤務
●下士官時代は、中国語専門家としてNSAと台湾で勤務、またロシア語専門家としてベルリンでも勤務
●士官へ任官後は、第5空軍司令部(横田)、太平洋空軍司令部(ハワイ)、在中国駐在武官補佐官、また駐在武官教育の教官
●駐在武官補佐官として勤務時にCIA長官賞を受賞し、更にDIAが設けている「駐在武官の殿堂」入りを1997年に果たす。
●ボストン大で国際関係修士。退役後、中国軍に関する著書多数
Kenneth Allen氏は講演で・・
●米国防省や政府関係者は、中国軍の新型航空機や装備だけでなく、中国空軍がどのように組織を整え、訓練しているかに注目すべきである
●中国空軍は湾岸戦争の教訓から訓練方法を変え、例えば地対空ミサイル部隊は敵の夜間攻撃に備えて夜間訓練し、空中監視レーダーの(敵に所在や電波周波数がばれないように)常時運用を止めた。
●依然、中国空軍は主に防御型空軍であるが、(今後)防御から攻勢空軍へどのようにシフトするか、また中国空軍が他組織とどのように連携をとっていくかにより、作戦行動をどのように遂行するかが決まってくる
●在沖縄や在グアム米空軍アセットへの最大の脅威は、中国空軍からのモノではなく、弾道ミサイルからの脅威である。従って米軍は、攻撃を受けた後の環境下で作戦する訓練を志向すべきである
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講演の一部しか報道されていないので、もし全体像が明らかになれば追報致します。最後の部分だけ突然話題が変わっていますが、全体の一部でしょう。
「湾岸戦争を教訓」や「防御から攻勢へ」のくだりは奇をてらわない中国空軍の王道分析ですし、他組織(海軍等)との連携が鍵、との見方もプロの視点です。
「中国空軍あれこれ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-15
従って・・ではないですが、「在沖縄や在グアム米空軍アセットへの最大の脅威は、中国空軍からのモノではなく、弾道ミサイルからの脅威」との指摘は決して特異な見方ではないと思います。
まんぐーすは自分の主張正当化のため都合の良い報道や研究のみを紹介している、とのご指摘を時々受けますが、米国のポピュラーな軍事ニュースサイトに掲載される記事を坦々と取り上げているだけで、何の作為もありません。
「脅威の変化」や「中国の脅威」について、他の見方をそれなりに信頼できると考える筋から聞いたことがありません。その辺りに疑問の方があれば、ご自分でお確かめ下さい。
なお「Mitchell Institute for Airpower Studies」は「エアパワーの父」と呼ばれるミッェル将軍(写真左上)を記念する研究機関で、「エアパワー」研究の中核組織です。
ゲーツ国防長官(当時)
「今や潜在的敵対国は全て、米国と通常戦の手法で正面から対峙するのは得策ではないと学んだ。・・・潜在敵国は、米国に対して戦闘機や空母等の軍備拡張競争を挑み、破産する道を選ぶだろうか?」
「東アジア戦略概観と脅威変化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-03-1
「Toshi Yoshihara博士の来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
「中国の脅威を誤解するな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-28
「1/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28
「2/2米中衝突シナリオを基礎に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-28-1
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「脅威の見方を変えよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-09