新悪の枢軸か!?

昨日は、米国の弱り目につけ込むロシアの動向をご紹介しましたが、本日は同じく米国への揺さぶりを狙う3ヶ国の様子をご紹介します。
3meeting.jpg国境を接する3か国の近隣外交ともいえますが、革命以来30年、アメリカの宿敵であるイランと、最近、対米関係がギクシャクしているアフガンとパキスタンの2国が結束アメリカに揺さぶりをかけるのが主な目的だったと考えられています。
1ヶ月以上前になりますが、2月17日にイスラマバードで開催された画期的なこの3ヶ国の接近、イラン、アフガン、パキスタン3首脳会談について、川上高司・拓殖大学教授のブログ等からご紹介します。
川上教授はまず3者の関係について
これは画期的なことである。なにしろイランとパキスタンはシーア派とスンニ派という宗派の違いと国境沿いのバロシェスタン地方をめぐる問題で険悪だった。
afughanPT.jpgアフガニスタンは、パキスタンがタリバンを支援してアフガニスタンの政情を混乱させていると非難していて不信感が強い。
イランは、アフガニスタンのシーア派を政府が弾圧していると非難してきた。
●まるで3すくみ状態でお互いに不信感を募らせていたのだが、これら3国の首脳が集まって平和的な会談をしたことはこの地域の情勢が大きく変わる可能性を示唆している。
会談では広範な協力が合意され
●政治、経済、国防から学問に至る包括的な交流と関係の構築に合意した。鉄道や道路も国境をまたいで整備する計画だが、中国からパキスタンに通じるハイウエィが西方のイランまで繋がるとしたらユーラシアを走る壮大な道路網ができあがることになる。
アメリカが難色を示している、イラン産天然ガスのパキスタン向けパイプラインの早期建設合意など、3か国の親密ぶりをアピールして一応の成果を得たようだ
●またカルザイ大統領は、イランとパキスタンの支援をとりつけ国内での政治力を取り戻し米国撤退後のアフガンを安定させたいとの思惑がある。
最も特筆すべきは・・
Kawakami.jpg●「イランがイスラエルから攻撃を受けたらパキスタンもアフガニスタンもイランの味方をする」という合意だろう。
●これでアフガンの米軍は人質同然となり、更に同盟国であるはずのパキスタンを敵にまわすことにもなりかねない。アフガンでの戦争遂行だけではなく、撤退時にも大きな問題となる。
●そうならないために米政府は全力でイスラエルのイラン攻撃を阻止しなければならない。
更に川上教授は・・・
米国はアジア太平洋地域へ力点を移すと宣言しているから中東に戻ってくる可能性は低い。その米国の引きに乗じてイランはその存在感を東へと拡大しようとしているかのようである。
●折しも同盟国であるシリアが政情不安で、シリアの現政権が転覆すればイランの孤立は必至。だが東にパキスタンとアフガンという同盟国を作れば強い影響力を持つことが可能となる。イランの戦略は見事である。
世界各地は米国抜きで「ご当地平和」を目指す。この3者会談の実現が米国の存在感低下を表現している。今後の傾向は「ご当地主義」(アメリカ抜きで当事国間で枠組みを作る)
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afghanPT2.jpg川上教授はこの後、米国はアジア太平洋で「ご当地主義」を目指す、と結んでいますが、中東から抜け出すことは簡単ではないと思います。特に大統領選挙の今年、米国の中東への関与を迫るイスラエルロビーは無視できないとの論調も増えつつあるような気がします。
また、アジア太平洋でご当地主義と言っても、Offshore Balancing理論が台頭すれば、「ご当地」の仲間を独自に歩ませ、米国は「ご当地」を遠巻きに見つめることになるかと思います。
3ヶ国のチャンスを狙う戦略眼は大したものです・・・。しかしアフガンでの米国の立場は難しくなりました。シリアの重要性も高まったような・・・。
新国防戦略とoffshore balancing→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27
「イラン核施設完全破壊は困難」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-02
「対イラン:イスラエルの動向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-12
「パネッタ:イラン攻撃は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-05
「シリア情勢を上院で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-09-1
「反政府にアルカイダも」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-20
「シリアを巡る複雑な情勢」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-09

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