北極海を巡る米軍動向

JacobyGen.jpg13日、北米コマンド司令官のジャコビー陸軍大将が上院軍事委員会に出席し、同コマンドを巡る諸問題の一つとして北極海に関する課題について触れ、同時に沿岸警備隊と共に「北極海能力白書」をまとめたと証言しました。
白書の原文は見あたりませんでしたので、軍事委員会での証言を3月16日付「Daily Report」等より
「(温暖化により北極海(航路)が開けるにつれ、通商及び経済的利害関係が顕在化・・・我々はこの課題解決の先頭に立ち、北極海の開発や資源利用が協力的枠組みで平穏に進む事を確保せねばならない」と語っています。
以下は軍事委員会提出書面より
●北極海地域の気候変化は、人間活動の機会を増加させると共に、新たな地域の脆弱性や資源争いの可能性を提起している。例えば、漁業資源や天然ガス、観光開発等々
●経済的なアクセスの確保や行動の自由を確保し、無責任な行動を防止するため、周到な準備が求められる。
ArcticMap.jpg●当地域での活動には特殊な能力が必要。例えば、砕氷船は米国の自由航行やアクセス確保の責任遂行のために必要不可欠なアセットである。地域の厳しい環境や特殊性を考慮し、米軍の責務を果たすために何にどのように取り組むべきかを先行的に考えておく必要がある
●北極海を取り巻く米国とカナダは、安全保障体制を維持し、環境を守り、責任ある資源管理を行い、土着社会の発展を進め、科学的調査を推進し、国際協力を強化することに広範な通の利害を有している
●このため、米軍の北米航空宇宙コマンド(NORAD)、北部コマンド、そしてカナダ軍は3者協力体制枠組みに向け協力し、計画策定、作戦行動、情勢認識、情報共有、演習、能力強化に共に取り組んでいく
●上記3者以外にも、全政府体制に向け、国防省以外の省庁、企業パートナーと共に、通信、状況掌握、救難救助、災害対応、天候予測の強化に取り組んでいく
3月末に、米北部コマンドは米国防大学で北極をテーマにワークショップを開催し、近未来の活動コンセプトや能力開発について関係者と議論を行う。またこの機会に、本年夏に北極圏で計画中の一連の演習について連絡する。この演習の教訓は、今後の計画立案に反映される
●北極地域での活動の成功は、1982年に国連で採択された「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)に立脚している。
●(米国がまだ批准していない)この条約への加盟が広範な米国の国益にしすると信じている。本条約への加盟は、国家安全保障を強化し、危機にさらされつつある利害に対する米国の立場を公式に確立するのである。
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ArcticPct.jpg海洋を巡る諸問題を考える際米国が国連海洋法条約に批准していないことが「弱み」になっているようで、南シナ海問題の議論でも米軍関係者の公式発言には必ず「条約への加盟促進」を訴える文章が入っています。詳しくないのですが・・・
それにしても、北米航空宇宙コマンド司令官を兼ね、北極海の問題を扱う北部コマンド司令官がなぜ陸軍大将なのか???
一方で、先日ご紹介した南部コマンド司令官が空軍大将という不思議さ・・・。 このレベルになれば関係ないとは言え・・何かアンバランスな気がします。

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