サッカーが材料ですが、中国が見えるような話です
2月26日と27日の日経新聞が、中国プロサッカーチームの監督になった岡田武史氏に中国サッカー事情を聞いています。
日本人監督への視線
●私が指揮する杭州チームは、昨シーズン選手が監督を無視して追い出し、選手が自主運営するまでになった問題クラブだと聞いて驚いたが、実際来てみると全然違う。中国には日本サッカー界へのリスペクトがすごくある。最近日本は「アジアのバルセロナ」とまで表現されている
●そんな目で見てくれているから、私の指導を真剣に聞いてくれる。これまで旧式の練習をしてきた選手にとっては「これがサッカーの練習なんだ」と言った印象らしい
●まだ特別な事はしていないが、勝手に相手が深読みしている節もある。ただ、外国人選手の住居や銀行口座に就いてまでクラブが監督に伺いを立ててくる。任されていると思うとやり甲斐もあるが、中間の人が育っていない
●Jリーグ草創期の外国人監督もそうだったと思う。日本人は気を遣っただろうけど、彼らにしてみれば仕事がだめなら帰国すればよいわけで、挑戦でもプレッシャーでもない。私も同じ。
●なぜ杭州にしたかというと、理由はない。単に最初にオファーがあっただけ。しかし来てみたら、街のたたずまいが素晴らしい。決めて良かった。
中国プロチームの様子
●企業の大金持ち社長がオーナーのチームは羽振りがよい。アルゼンチン代表でもないアルゼンチン選手が「世界一の高給取り選手」と言われる給料をもらっているほどだから
●しかし毎年のようにチームを放り出すオーナーがいて、投げ出される若い選手は可哀想な目に遭っている。私は違った社会を見学しているつもりだから気楽だが
●中国のプロリーグは今年、16チーム中、13チームが外国人監督になった。これまでのような外国人FWにボールをけり込む単純なサッカーは変わると思う
●物事はオーナーと直接話して決める。言い換えれば中間の管理職はパイプだけ。人が育ちにくい環境だ
●最初スタッフも全員連れてこいと言われ、日本の仲間を連れて行ったが、現地に着いたら中国人が5人いて勉強のため雇ってくれと。面倒を見る必要があるが、人間が素晴らしく問題ない
●中国リーグでは、「領隊」という思想面とか態度とかを見る共産党員をベンチに置かなくてはいけない。一般には軍隊から派遣され、共産党員が条件なので対応を検討している
人脈が支配するサッカー社会
●レベルが上がらない一つの理由には、中国が人脈社会で、選手起用やスカウトに強く影響している点がある。才能ある選手を見いだすスカウトはおらず、コーチやクラブ関係者が出身地や親戚ゆかりの選手を連れてきて入団させることが広く行われている
●入団テストを受けさせることで仲介料を取っていたり、監督に同郷の選手起用を進言したりしている現状がある。このがんじがらめの人脈社会が八百長に繋がっている。
●ユースから引き上げた選手は口々に言う。「これまでは実力でなく、関係性で選手が選ばれていた」と
●私が監督になって選手8人を首にして、ユースから7人を引き上げた。中には日本や欧州でも滅多にいないような優れた若者もいる
●7人をユースから引っ張ったのは若返りを狙った訳じゃなく、客観的に上手い選手を集めただけ。ちょうど3年前から、オーナーが15歳前後の優秀な選手を集めたらしい。
チーム目標と課題
●金持ちチームと一桁違う金無しチームで、かつ若手に入れ替えたから、メディアは杭州チームは入れ替え戦行きだと予想しているが、優勝を狙っている。チーム力に差はないと思う。選手が若くて経験が無く、気持ちで負けてしまわなければ十分にチャンスはあると思っている。
●選手の95%が3食付きの寮生活である。自立心育成のため、25歳以上の選手は外に出せと提案したが、何をするか分からないと猛反対を受けた。しかし複雑なサッカーの試合では自立心がないモノは伸びないのだが。
●だから今練習では、選手が自分で考えなければ出来ないモノを中心にしている。中国社会を私が変えるのは難しいが、サッカーのチームなら変えられる。そう思って日本でもやってきた。日本のサッカーが強くなったのは、選手が自立するようになったからだ。中国の外国人監督は同じ事を考えていると思う。
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山のように報じられている中国情報の中でも、なぜかとても説得力ある説明です。
「領隊」という共産党員をベンチに置くのがルール・・・ゴルゴ13の世界がまだ残っていたとは・・・
「なぜ中国へ岡田監督?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-28
「ショパン国際ピアノコンクール」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-18
「写実絵画の専門美術館」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-27-2
「数学:リーマン予想に驚愕」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-16
「証明完了ポアンカレ予想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-24
「双葉山:未だ木鶏たりえず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-27