21日、パネッタ国防長官は大西洋上で訓練中の空母エンタープライズを訪問して兵士を激励すると共に、「おみやげ」として、予算削減の中でも空母11隻態勢を維持するとのオバマ大統領決断を伝えました。乗組員からは大歓声が上がったようです。
ただし、この空母エンタープライズは51年にわたる現役を終えて本年末には退役するため、建造中の空母Gerald Fordが完成するまで、3年間は10隻態勢でしのぐようですが・・・。
26日予定の2013年度予算案発表に向け、予算削減対象の「噂」で必ず議論に上っていた空母の建造・維持管理経費。空母以外で何を削るのでしょうか?
なお、訓練後の本年3月に同空母は中東へ派遣される予定で、パネッタ長官からは「イランへ明確なメッセージを送り続ける」役割を担ってもらうとの発言がありました。最後まで緊張の任務が続くようです。
パネッタ長官は空母乗員に対し・・・
●空母は我が軍に於いて重要な役割を担っており、それは将来においても変わることはない。君たちは、我が軍の多様な能力、柔軟性、緊急展開能力を体現し、世界中で敵に対処できる力なのである。
●これが正に、大統領と米国防省全員が、空母11隻を維持することが重要であると判断した理由である。
●本艦は中東に派遣され、現在活動中の空母カービンソンやリンカーンと共に湾岸地域で活動し、ホルムズ海峡も通過することになろう。我々は世界のこの地域でも、如何なる事態にも対処出来る態勢を維持し続ける。
●国際社会と協力し、イランに対する制裁を継続する。我々はメッセージを明確に送り続ける。我々が準備を整え、強力であり、本地域にプレゼンスを維持し続けることが明確なメッセージを送るに最も重要である。
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24日に大統領の一般教書演説、26日に国防省の2013年度予算発表と今週は米国の話題が多くなりそうです。
ただ、予算削減額に関しては依然として$487 billionのみを対象として2013年度予算も検討されているようで、それ以上の部分がどうなるのか民主・共和両党の間で全く話が進んでいないようです。
空母11隻態勢も、それ以上に削減されれば保証の限りではないのでしょう。
ブルッキングスのMichael O’Hanlonは
●今後10年で、国防費を8-10%(約$500億ドル)節約するのは、困難だが不可能ではない。陸軍は一つの戦争だけに備え、海軍は285隻から250隻に削減し、核戦力維持の経費を節約すればどうにかなる。何とか軍人の給料カットを回避し、東アジアとペルシャ湾間の両方に備えることが可能
●しかし、15-20%のカット(約$ 1兆ドル)になると、単に軍事費を削減するだけでなく軍人の給料も下げねばならなくなる。また、ペルシャ湾と東アジア太平洋の二者択一になる。
●つまり、地上軍は不足が明確だった1990年代レベルにまで下がり、海軍は西太平洋とペルシャ湾の二者択一を迫られる。そして、軍需産業は衰退し、いざという場合に対応不能となる。