「当初からこの行動規範を採用できないことは明らかだった」
12日、国務省の軍備管理担当Ellen Tauscher次官は、欧州諸国が中心となって作成した宇宙行動規範を「あまりにも制約が多すぎる(too restrictive)」との表現し、よって米国は署名しなかったと述べました。
この宇宙行動規範(code of conduct for outer space activities)は、ますます混雑する宇宙空間における衝突事故や関係国間の誤解防止のため、衛星や宇宙船等の運用に関するルール的なモノを定めようとするモノです。同時に、宇宙ゴミの監視や減少策についても触れているようです。
ちなみに本行動規範は欧州諸国が自主的に数年前から作成を始めたモノで、カナダと日本は承認した模様です。もちろん中国やインドやロシアやブラジルは、全く関心を示していません。
Tauscher次官補は更に・・・
●我々が欧州作成の行動規範に署名しなかったことは明白である
●今日は我々が今後どうするかについて述べないが、近い内に我々の行動方針について述べる
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17日クリントン国務長官は、欧州連合(EU)と連携し、「宇宙活動の国際行動規範」の策定作業を進めるとの声明を発表した。 ただ、「米国と同盟国の安全保障に関する活動を制限する規範には参加しない」との条件も明言
米関係者はそれでも・・・
●欧州作成の規範を米国が完全に拒絶したわけではない。我々は欧州と協議を続けてきており、基本部分は共有している
●欧州による行動規範は、今後の国際行動規範議論への基礎となるモノである
12日付「Defense News」は・・・
●国防省は懸念を示しつつも、時間をかけて規範の中身や表現について検討してきている。ステルス衛星が登場した際はどうする? 宇宙空間の物体を移動する際にどのような手続きと手段が適当か等の諸課題である。
●(欧州規範には不同意だが)米国防省報道官は、「我々は国際宇宙行動規範の作成を支援する」と述べている。
●米議員の一部も、「米国は宇宙で最も技術的に進んでおり、規範は我々を縛るモノである」と反対姿勢を明らかにしていた。
●所詮欧州が作成したモノであって、宇宙で主に活動している国は他人事だと感じているところがある
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昨年の4月から6月頃、米国関係者は中立的前向き発言をしていたのですが・・・
「欧州と宇宙規範協議開始」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-14-1
4月:Greg Schulte宇宙政策担当の国防次官補代理
●米国が署名するかは未定だが、欧州の取り組みはPositiveだ。
6月:米国務省のローズ次官補代理
●米国は間もなく、EUとの間で拘束力を持たない「宇宙行動規範」作成に向けた議論を始めたいと考えている。
●この規範は、米国の宇宙における透明性と信頼醸成追求と一致するモノで、宇宙における関係国の責任ある行動と平和的な利用を促進するモノである。
●規範には、既に宇宙を活用している国も今後積極的に利用しようとしている国にも署名してもらい、衛星の衝突や他の衛星の妨害を防止する一助としたい。
ある意味・・新たな戦いの最前線ですから、各国とも慎重なんでしょう。
クラスター爆弾廃止を巡る議論じゃないですが、日本が馬鹿を見ないように気をつけていただきたいモノです。
「前半宇宙優勢5つの鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-10
「後半宇宙優勢5つの鍵」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-10-1
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02
「国家安全保障宇宙戦略:NSSS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-05