もはや誰も新型戦車や大型クルーザー開発の話題など口にしなくなった今日この頃ですが、唯一景気の良いのが無人機の分野です。
しかしそんな無人機の将来にも、かつて人間が科学技術の発達に「懐疑的」だった時代の面影がついて回るようです・・・。
17日、無人機協会の国際見本市(the Association of Unmanned Vehicle Systems International trade show)で、Jane`s誌のCaitlin Lee女性記者が講演し、無人機の用途拡大の前に、軍幹部の慎重さが横たわっている・・と語りました。
如何にも人間くさい、しかしそうなんだろうなぁ・・と思わせる話ですので、18日付「DODBuzz」記事の補足説明とあわせてご紹介します。
Caitlin Lee記者曰く・・・
●無人機の活躍するイラクやアフガンでは、完全な航空優勢が確保されている。しかし今後無人機の将来を考える時、無人機は敵の3つの脅威、すなわちSAM、5世代戦闘機、そして運用基盤基地への長距離巡航ミサイル攻撃に立ち向かわなくてはならない。長距離ミサイル脅威は、例えば韓国や日本の米軍基地をイメージしている。
●私は、技術的にこれらの脅威に対処することは可能だと思うが、米国防省はこの取り組みに非常に時間をかけている。軍上層部の間で、無人機をどこまで信頼すべきかに関し意見が分かれているのだ。
●典型的な例として、カートライト前統合参謀副議長とシュワルツ空軍参謀総長の考え方の相違が分かりやすい。前副議長は「次期爆撃機になぜ有人タイプが必要なのか? 核任務でも無人でOK。ICBMは無人だろう」と主張。一方空軍トップは、まだ完全無人爆撃機の段階には無いと慎重な姿勢を示している。
●この例は、蒸気機関が発明された頃を思い起こさせる。蒸気機関を備えた船舶が登場した当初は、エンジンが故障した場合に備え、建造依頼者はマストと帆を予備として備えた蒸気船を望んだのだ。
●また50年前は、だれも無人の汽車のドアや無人のエレベーターを信じなかったのだ。無人機にも、人々の自然な信頼を得るために、更に数十年の期間が必要なのかも知れない。大統領専用機を無人機にしても問題にならないような時代がその判断の基準であろう。
18日付「DODBuzz」の補足説明・・・
●Caitlin Leeが語らなかった政治的な側面がある。次期爆撃機に「選択的な有人タイプ(Optionally manned)」が存在するのは、国防省の予算担当者が2重のゲームを画策しているからだ。
●有人型をオプションに止めておくことにより、操縦者の養成や訓練経費を将来の経費削減候補として確保しておけるからである。将来有人タイプが主流として残った場合には・・・そんな将来のことは今の担当者は考えていない。
まんぐーすの邪推
●パイロットが「自分の職を失いたくない」と無人爆撃機に組織的抵抗を行っているため。
●また、B-52による核爆弾誤送事件以来、核任務部隊の立て直しをやっている最中なのに、将来爆撃機操縦者は不要ですよ、などと公言すれば組織が持たないから。
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「日本や韓国の米空軍基地が、(中国の)長距離ミサイルに対して脆弱だ」・・との認識は軍事記者レベルの間でも、もはや常識なんですねぇ・・・。戦闘機命な日本人にも共有して欲しいですね。
鮮明な顔写真が見あたらなかったのですが、Caitlin Lee記者は国際関係専攻の大学院を卒業し、ヒストリーチャネルの「空中戦シリーズ」の出演取材で名を売り、2008年にJane`s社に入った辣腕空軍担当女性記者なのだそうです。
男の社会への取材でしょうが、たいしたモンです。
カートライト前副議長の主張
「次期爆撃機に有人型は不要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1
「米無人機の再勉強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-05
「米空軍無人機のゆくえ・前編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-27-1
「米空軍無人機のゆくえ・後編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-28
「米海軍航空戦力の将来・後編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-27