7日、自身が引退後を過ごそうと考えている米国北西部ワシントン州にあるワシントン州立大学の卒業式に出席したゲーツ国防長官は、「米国の将来を悲観しないで欲しい」、また「公に尽くすことを忘れないで欲しい」と訴えました。
これまで何度か各種高校大学でのスピーチをご紹介してきましたので、重複するジョークや例え話は避け、まんぐーすにとって新しい部分のみ概要をご紹介します。
米国の将来を悲観するなかれ
●10年に及ぶ戦い、不安定な経済情勢、そして累積する国家債務を前に、君たちの多くが米国の将来に悲観的な見方を持っているのではないか。世間一般のムードがそうだから仕方ないことかも知れない。
●しかし私が学生の時だって悲観論が蔓延していた。私が高校1年生の時は、ソ連がスプートニクを打ち上げたことで衝撃を受け、宇宙開発や果てはミサイル競争でも米国が後塵を拝するのではと皆が悲観的になっていた。
●1970年代、ベトナム戦の後遺症が残る中、OPECによる石油の禁輸が発表され、追い打ちをかけるように猛烈なインフレと金利の高騰が襲いかかった。この時も米国は将来に疑問を持った。
●そして1980年代、財政と貿易の双子の赤字に苦しむ中、日本に追い抜かれるのではとの懸念が国を覆った。
●いずれの時代をも過ごしてきた証人として言えば、いずれの時代でも米国民は国が負のスパイラルに入ると確信を持って悲観していた。しかし、いずれの困難な時代にも我が国はそれを乗り越え、そしてよりたくましい国へと生まれ変わった。私はもう一度これが出来ると確信している。
●しかしこのように財政が厳しいとき、我々は何らかの革新的解決策を持ち込まなければいけない。そして国が困難なときは、優秀で聡明な若者が前に出て、その才能と斬新な視点を国難の解決に提供せねばならない。
●君たちには、自分を駆り立てるモノが何かを見つけてもらいたいし、その熱情を向ける何かに全勢力を傾けて取り組んでもらいたい。しかし同時に諸君には、その過程において少なくともその一部で、公のために尽くすことを考えておいてもらいたい。
●現代において、公務に就くことがそれほど魅力を放っていないことを私は感じている。しかし公務のやり甲斐について、ほとんど知られていないのではないかとも危惧してもいる。
●21世紀の米国も、自由や正義や法の秩序、更に人権を守る力でありたいと思うなら、能力があり理想を持った若者が前に出てその負担を担わなければならないのだ。
///////////////////////////////////////////
ちなみに、ゲーツ長官はCIA長官時代、クリントン政権下で対日経済政策立案にも関わったそうです。2年前の来日時「13年前と比較して、米日関係は見違えるほど改善した」と述べ、その当時がいかに険悪だったかを伺わせました。
またワシントン州立大学は、ゲーツ長官の奥様ベッキーさんの母校であり、息子さんの母校でもあるそうです。
それにしても・・・この記事の最後は、「ゲーツ長官はワシントン州で引退後を過ごす計画である」で結ばれています。その時が刻一刻と迫っているのですねぇ・・・(遠目涙目再び)
卒業式や一般学生への講演
「CIAでの失敗を高校で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-25
「大学で「公への奉仕を」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「DUKE大学での講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02
「特殊部隊にもっと女性が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02-1
士官候補生への最後の講義
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2