その2緊縮財政対処のAir-Sea Battle

SchwartzGen3.jpg12月15日、シュワルツ空軍参謀総長が国防大学(NDU:National Defense University)で、大佐クラスの4軍の学生(他国軍を含む)と同大学教授陣を対象とした講義を行っています。口述原稿はこちら
脅威認識と厳しい財政状況を踏まえ、これ以外に道はない、との悲痛な叫びのようにAir-Sea Battleの背景とその狙いについて語っています。
将来枢要なポストに就く上級エリート幹部への講義にこのトピックを選んだことからも、空軍にとってAir-Sea Battleが中核的なコンセプトとなりつつあることがが伺えます。また、本Conceptが今後の空軍予算の削減と投資の優先分野を決定していく基準(手段?)となりつつあることが推測できます。
Air-Sea Battleの狙いを概観するような内容ですが、後半の今日は対処の方向性についてです。
膨大な投資はもう出来ない。だから・・・
●軍事技術の拡散と拒否戦略拡大の中にあっても、我々はもはや、高価で技術的に練られ、特定の軍種のみを対象とする様な投資は出来ない。我々は、厳しい財政状況が求めるより節度と効率性と革新性に富んだ、軍種横断的な相互運用性のある兵器システムを求められている
●ゲーツ国防長官の主導により始まっている、無駄経費の削減と必要分野への2-3%の予算増確保は、本環境下での我が戦闘力向上策の例である。
●他の方向での取り組みには、制度面作戦面からのAir-Sea Battleコンセプト導入がある。私と海軍のラヘッド作戦部長とエイモス海兵隊司令官が共に取り組む、海上航空戦力の恒久的な協力関係を創出するもので、一時的な取り決めでなく、永続的で戦略的な3次元の関係確立を目指すモノである。3つの次元とは・・
制度面(institutionally):協力関係を正常化するため、軍種の文化や組織を変更する
概念面(conceptually):いかに海空のアセットが一体化して行動するかを正式合意する
装備面(materially):装備が最低限相互運用性があり、一体的な取得戦略の基で将来の統合システムを見据える
Air-Sea Battleのため具体的には・・・
SchwartzAF2.jpg●このため歴史的観点からも、この種の取り組みの進め方やサブコンセプトの定め方を見極める必要がある。そして、現在の統合ドクトリンや組織、更に訓練も、抗たん性や相互運用性を高めた兵器システム、連接性を備え結節のない指揮統制ネットの構築とあわせて進める。
●Air-Sea Battleではより現実的な脅威下を想定し、より不完全なネットワークや位置情報下で訓練する必要があろう。また海空軍の兵士は、より協同してステルス潜水艦や航空機を一体的に運用し、全体戦力の残存性を高めるべきである。
●1980年代に当時のソ連艦艇の防空能力に対処するため、当初の反対にもかかわらず、空軍のB-52にハプーン対艦ミサイルを搭載したと同様の取り組みが必要なのである。例えば、空軍の世界をカバーするISR能力でAir-Sea Battleを見れば、空軍無人機撮影の動画を敵脅威下の海軍艦艇に提供することもその一つである。
●Air-Sea Battleが進展すれば、より効果的な多国籍活動のため、この関係が同盟国やパートナー国とも構築できるようも努める
進路変更を歓迎せよ
●Air-Sea Battleとは、我々のアクセスやネットワークに挑み、また様々なタイプの紛争に我々を対応させるあらゆる安全保障環境に応ずるコンセプトの先駆けである。そしてそれは先ほどの3つの次元からなっている。
●再度強調すると、以前や現在のコンセプトとは異なり、Air-Sea Battleは米国の海外での戦力投射能力を維持し改善するコンセプトである。そして海軍海兵隊と空軍の協力強化によって結果が導かれないのなら、それはAir-Sea Battleではない
君たちの心地良い領域が侵されることを受け入れよ。尊重すべき議論や進路変更を歓迎せよ。これら全てが、今後国家が対処すべき課題への備えを後押ししてくれるのだから。そして君たちの、この複雑な問題への理解と実用的な対処案を促進してくれるのだから。
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回りくどい慎重な表現が多い講義ですが、下記のCSBAレポートを読んでいただくとより明確に理解いただけると思います。
ただし講義では、Air-Sea Battleがハイエンドからローエンド紛争にまで対応するコンセプト、との表現もあり、より拡大した発展がありそうでが・・・。
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