Air-Sea Battleの考察論文

ProceedingCoverAug10.jpgこれまで本ブログでは、米軍の西太平洋戦略の変化、つまり中国対応の今後について注目し、シンクタンクCSBAの関連レポートや高官の発言を紹介してきましたが、本日は海軍研究所が毎月発刊している月刊誌「Proceeding」8月号が掲載した論文What’s New About the AirSea Battle Concept?」を取り上げ紹介します。
「Proceeding」はかなり高尚な論文を掲載する雑誌で、米海軍の戦略研究の歴史と奥深さを感じさせます。
元海軍大佐2名と海軍戦略の研究者2名によって書かれた論文は・・
(Air-Sea Battleは新しい概念ではない)
1943年頃、連合国の海上輸送の大きな障害となっていた独U-Boatに対処するため北大西洋で繰り広げられた米、英、カナダの海空軍が協力して行った作戦や、
1944年後半に日本軍が駐留していたフィリピンを攻略するために空母機動部隊と陸軍航空隊が海兵隊と連携した作戦は、海空軍戦力が連携した点で既にAir-Sea Battleのコンセプトを体現していた。
●しかし冷戦終了後、新たな作戦コンセプトを生み出す動機付けは無かった。
ところが以下の3つの変化により新たな作戦コンセプト作成の機運が生まれた。まずオバマ政権がアフガンからの撤退を視野に入れた戦略を打ち出した。また中国の軍事力の増強近代化が無視できないほどになった。そして経済の減速によりこれまでのような国防予算を確保できなくなった。この3つである。
(Air-Sea Battle 誕生の背景・経緯)
CSBAレポート2本の紹介。詳しくは「マイカテゴリー」の「Air-Sea Battle」をご覧下さい。
(Air-Sea Battleコンセプトの示唆するもの)
●CSBAの提起したコンセプトの「出発点」は、戦略的、制度的、計画的に見て無数の認知及び未認知の派生的影響を巻き起こす。そしてそれはどのようにコンセプトが採用されるかによって様々であるが、以下のような観点が程なく表面化するだろう。
公式のAir-Sea Battleコンセプトは中国をどう位置づけるか
chinaFlag.jpgCSBAの研究者は中国を脅威として捕らえてレポートを書けるが、米軍の公式見解として、中国をどのように描写するかは全く別問題である。
同盟国を納得させられるか
中国の急激な軍事力増強を前に、アジアの同盟国やパートナーの米国への信頼を維持し説明するにはAir-Sea Battleへの真剣な取り組みや関与が欠かせない。取り組みへの失敗は予期できない正反対の結果を招く。
作戦基盤基地の強化と同盟国への影響
andersenGM.jpg西太平洋地域の同盟国等での新たな基地の建設や強化は、同盟国の国内政治との関係で単純でない課題である。海外基地の強化や復旧資材集積は、当該国が攻撃目標となることを明らかにすることでもあり、同盟国にとってそれを受け入れることの是非を問う微妙な問題となりうる。
海空軍の真の協力体制構築
例えば、1986年のゴールドウォーター・ニコラス法は統合分野での勤務経験を軍人の昇進の要件に組み込むなど、4軍間の協力を強制的に推進させる役割を果たした。今後も海空軍の協力関係を推進するためには、何らかの制度的な「ゆりかご」が幹部や計画立案者や調達関係者のために設定される必要がある。さもなければ、いつもの軍種間の競争に逆戻りする
軍需産業基盤へのインパクト
gatesWikileaks.jpgAir-Sea Battleがどれほどドラスティックになるか、どれほど調達や軍需産業基盤に影響を与えるかは現時点で不明である。しかし良い影響を受ける者と悪い影響を受ける者が生まれることは避けようもない。
いずれにしても、海軍と空軍が真のシナジー効果を発揮するため、双方の能力をこれまでないほどに生かさねばならない。
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Google(英語版)で「Air-Sea Battle」を検索すると、この論文がCSBAレポートの次に表示されます。
現時点で、もっとも広く読まれているAir-Sea Battle考察論文ですので、原文に目を通されることを強くお奨めします。
A2AD対処の柱の一つ・・LRSに関するCSBAレポート
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃(LRS)構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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