本論2:長距離攻撃(LRS)システム構想

CSBA LRS FP.JPG長距離攻撃(LRS)システム構想紹介の後半です
9月14日、シンクタンクCSBAのガンジンガー上席研究員(Mark A. Gunzinger)が発表したレポート「Sustaining America’s Strategic Advantage in Long-Range Strike」(以下LRSレポートと呼称)は、これまでの国防省・軍高官の発言と方向を同じくし、かつ包括的なLRS構想となっています。
ガンジンガーのLRSレポートは以下を参照下さい
レポート本文  プレゼンスライド  プレス発表レジメ
昨日は、突破型攻撃力、スタンドオフ攻撃力、そして空母搭載攻撃力について紹介しました。
本日は、空中発射巡航ミサイル、PGS(Prompt global strike)兵器、空中電子攻撃機、そして核抑止3本柱の空部門の将来についてご紹介します。
4 空中発射型巡航ミサイル
●短期及び中期に新たなスタンドオフ攻撃母機が無い代わりに、海軍と空軍は、長距離及び短距離母機の両方から発射可能で、通常弾頭と核弾頭が搭載可能な統合巡航ミサイルを開発すべきである。
◎ただし、5項のPGS(Prompt global strike)と同様に、これら精密誘導ミサイルや兵器は非常に高価であり、これだけで所用の攻撃目標に対処することはコスト面から受け入れがたい。従って巡航ミサイルや5のPGSは真に高価値目標のみを対象に運用を考えるべきであり、突破型システムとの組み合わせを総合的に考える必要がある。
◎また生産のスケールメリットによる単価低下効果を利用するため、調達時はまとまった数量で発注すべき。
「どんな兵器:A2AD対応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
5 PGS(Prompt global strike)兵器
CSBA LRS PGS.JPG●国防省は、数時間単位で高度価値目標(very-high-value targets)への限定的な攻撃を支援するため、100基以下程度の小規模のPGS(Prompt global strike)兵器開発を考慮すべき。
◎レポートの中では、HTV-2やX-51Aの事例が紹介されている。(いずれも実験初期段階で、実用化には最低5-10年が必要と考えられる。)
「核抑止の代替?CSMについて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23
6 空中電子攻撃機
CSBA LRS EA2.JPG●現在装備が進められているFA-18Gは、濃密な防空網での運用が困難であるため、新たな長距離攻撃機のための高度なデコイや自己防御システムに加え、国防省は有人又は無人で長距離攻撃を支援する空中電子攻撃(AEA:Airborne Electronic Attack)機を導入すべきである。
●この際、国防省が実施中の他の開発技術や既存の技術を最大限生かし、「75%の出来映え」で良いのでコストと開発期間を短縮して導入すべきである。(イメージ図には空母搭載型N-UCASに似た機体が使用されている。)
「苦難 米空軍電子戦」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-29-1
7 核抑止3本柱の空部門
CSBA LRS2.JPG●核搭載巡航ミサイルの廃棄が決定され、かつB-2の突破力も将来的には保障されていないため、空軍は核抑止3本柱の空部門を担い、将来の不確実性に備えた新たな核搭載突破型爆撃機のデザインを開始すべきである。
すぐにテストして装備する必要はない。その必要が生じた際に軽易な対応をして応じられるようにしておくべき。新START条約でもこの手法に問題はない。
◎LRSレポートでは、1項の「突破型攻撃力」を担う機体に6-8%程度の追加開発経費をかけることにより、EMP対策等を施して核兵器発射母体として必要時に活用可能な機体を保有することが提案されている。
8 軍需産業基盤の維持
ステルスや大型突破型機体の開発が途絶えれば、軍需産業に技術者や施設の維持が困難になり、米国の国防産業基盤全体の地盤沈下につながる。(以上がLRSレポートの紹介)
「武器輸出・共同開発の方針転換」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22  
「QDRの「産業基盤の強化」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08
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LRSレポートに関する米軍事情報サイトのコメントは・・・
CSBA LRS3.jpg●「このレポートが求める約100機のステルスISR長距離攻撃機を調達するには、F-35調達数を大幅に削減(400機程度)する必要があるが、削減時のF-35の価格高騰、また軍需産業とコスト超過状態にあるF-35に疑問を呈する議会との関係もあり、空軍は厳しい選択を迫られている
ガンジンガー上席研究員やCSBAの面々は、2012年度予算案を国防省内で議論する年内が「議論の山」と見ているのかも知れません。F-35の調達数にメスが入るのか、LRSが棚上げになるのか・・・
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我が国はどうするのか・・・
ますます米国の作戦発起位置は遠方になります。これは中国の軍事力増強を考えれば軍事的合理性に沿った方向性です。
CSBAのAir-Sea Battleに関するレポートでは、日本に作戦基地の抗たん性強化や4世代及び5世代戦闘機の増加・導入を求めていましたが、作戦基地の抗たん性強化はともかく、戦闘機の増強を本当に行うべきか・・本当に信じて良いのか・・他の手段はないのか・・・
専守防衛を含め、根本に立ち返り困難な島国防衛を考える時期に来ています
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃(LRS)システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26

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