6月号のAir Force Magazineが「ISR革命(Revolution)」と題する記事を掲載し、米空軍のISRに関する組織変革について説明しています。なにぶんこの分野には公開情報が少なく、本記事でもハッキリしないところがありますが、概要把握に適当と考え紹介させていただきます。
当該記事→http://www.airforce-magazine.com/MagazineArchive/Pages/2010/June%202010/0610ISR.aspx
記事の中から適当に概要をピックアップ・・・
●米本土カリフォルニア州のBeale空軍基地で、空軍兵士がアフガンの基地から車列を組んで出かける兵士の要望に応え、僅か数分後には経路上の要注意地点の情報を与えている。情報は映像と電波情報を組み合わせたモノである。その後も7時間にわたり車列の兵士に最新の情報を与え続け、IED(簡易仕掛け爆弾)を1箇所で、武器の隠し場所3カ所を発見し、兵士への危害を防止した。
●このような状況は日常的になってきているが、5年前まではこのような状況にはなかった。現在有効に使用されているDCGS(Distributed Common Ground System)も、以前は空軍内の情報を有効に共有する体制にはなっていなかった。
●米空軍は2006年にISR機能のオーバーホールに取り掛かった。背景には、現場の要求に応じて急増していた無人機の増加があった。2001年当時、MQ-1プレデターによる1個哨戒点だったモノが、現在MQ-9リーパーも合わせて40個哨戒点を維持するに至っている。そして2013年には65個に増える予定である。
●ハード面でも、僅か10ヶ月でコンセプトから現場展開を成し遂げた、リバティー計画のMC-12Wがある。ライブ映像等をイラクとアフガンの現場にもたらしてくれた功績は大きい。
●2006年7月から米空軍情報部長(現在はISR部長)を努めるデプテューラ中将(Lt. Gen. David A. Deptula:deputy chief of staff for ISR)は、最も大きな組織変革は新設のAFISRA(Air Force Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance Agency:Lackland AFB, Tex)に空軍全てのISR部隊を集めて縦割りの弊害を廃し、空軍ISR部長に報告する形を執ったことである。AFISRAはAir Intelligence Agencyを発展させたモノである。
●AFISRAは複数の下部組織からなっている。それは・・・
480th ISR Wing, at Langley AFB
(現在4100人、今後数年で2200人増計画。全世界の空軍DCGSの管理運営)
70th ISR Wing at Ft. Meade
(空軍唯一の電波情報分析部隊。サイバー戦専門の第24空軍支援の専門部署も設置予定)
NASIC(National Air and Space Intelligence Center)at Wright-Patterson AFB
(人員3000人。画像、映像、公開、人的、国外等々の情報を総合分析。
現場へも進出して生の声を収集するほか、ヒューミント部隊も設立予定)
Air Force Technical Applications Center, at Patrick AFB, Fla
(核関連条約の履行監視、核事案の監視)
●更に480th ISR Wingはエリア別に5つのDGS(Commonを抜いた表記)を保有
Langley (DGS-1)※イラク
Beale(DGS-2)※アフガン
Osan AB, South Korea (DGS-3)※朝鮮半島
Ramstein AB, Germany (DGS-4)※イラン
JB Pearl Harbor-Hickam, Hawaii (DGS-5)※中国
(※はHolylandの独断と偏見による主担当地域の推測)
・5つのDGSは、業務量に応じ柔軟に全世界を担当する。例えばハイチ地震の際は、中央軍の任務を行っていたDGS-2にハイチ支援を命じ、他のDGSがDGS-2の任務を補完した。
・DCGSは通常、U-2,MC-12W,MQ-1,MQ-9,RQ-4グローバルホーク及びRQ-170センティネルを使用して任務を行う。
・この480th Wingは、イラクやアフガンの地上部隊に連絡幹部を派遣して現場の要求を吸い上げる。また、陸軍や英国、更には豪州の連絡官がDGSサイトで勤務する。
●空軍ISR部長が語る、将来検討・開発中事項
・AFISRAのメジャーコマンドへの昇格
・研究開発・取得調達分野への情報提供(これまでの開発初期段階だけでなく、全開発取得プロセスを通じて、最新の関連情報を提供し適切な開発取得に反映)
・「爆撃機」との区分はもう古い。我々の将来シューターはセンサーでもある。新たな空軍「爆撃機」は、正確にはISR-Strikeプラットフォームと見るべきである。
・Gorgon Stareとの名称のWAAS(Wide-Area airbone surveillance)ポッド・システムを開発中で、これは1個のポッドで10個の異なったビデオ映像を提供できる装備である。これにより駐機場、操縦者等々を増やすことなくISR情報を充実させることが出来るだろう。
・強固な防空網が形成されたエリアでの無人機の運用について考えるべき。
・米国防省の中に、各軍種の無人機を統括する部署がない。統合コンセプトも必要。
(以上が記事の概要です。)
最後になって、空軍だけの話であることを改めて認識しました。日本が属する西太平洋地域では、海軍アセットも今後大きな役割を果たすと思われますし、その辺りの融合が海空軍合同指揮所の検討話ともからんで気になるところです。
また、湾岸戦争の航空作戦計画仕掛け人のお一人であるデプテューラ中将がお元気そうで何よりです。
それから、ゲーツ長官が次期DNIに推薦しているクラッパー情報担当国防次官(James R. Clapper Jr., undersecretary of defense for intelligence)も上記改革を推進した一人として記事に登場しています。
「DNI候補者を高く評価」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-07
(400記事記念の特別保存版記事)
「ゲーツ改革のまとめと整理」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「400記事記念 反響大の記事特集」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-18
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