引き続き、シンクタンクCSBAによる対中国軍事対処構想レポート「AirSea Battle: A Point of Departure Operational Concept」に絡んでいきたいと思います。
北朝鮮が自作自演の騒動を起こしていますが、皆が中国中国とNKをかまってくれないからでしょうか・・・。現場の突っ走りかもしれませんが・・・。
そんな北にはかまっておれないので、今の米国防省をリードするCSBAのレポートを読んでいきます。本日も自問自答の設問形式で概要を書き出してみました。NKと普天間が騒いでいる内に「真打ち」登場に備えなければ・・
Q1 ある程度作戦の主導権を取れたら、米空母を大陸に近づけるか?
A1 中国の兵器には破壊力の大きいモノがあり、空母のような超高価値アセットはそのような兵器の射程内に入れるリスクを犯すべきではない。
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Q2 中国に通商海路(SLOC)妨害は有効か
A1 本紛争勃発後も、米国がその通商をある程度維持できるのに対し、中国の通商は事実上遮断される。第1次大戦時のドイツや第2次大戦時の日本のように、敵の海外交易遮断(MIO:Maritime Interception Operation)は戦勝の決定的要素となる。この分野は米に有利な非対称分野である。
A2 海上交易があるにしても、ルートとして南シナ海方面のみが使用可能な状況であり、中国によるA2ADエリア外である。よって無理に撃沈することなく、捕獲すれば事足りる。この任務には戦闘場面がないことからLCS沿岸戦闘艦や小型フリゲートなどが使用可能。仮に大型船が警告を無視した場合、空中哨戒している空軍爆撃機を活用することも出来る。・・・・・・・・
Q3 作戦継続上の兵站補給の課題は?
A1 琉球列島や西日本の数少ない基地が脆弱であることが根本的問題であり、幾つかの対応方向は・・
1 空中給油機の運用基盤、小規模な戦闘補給部隊、海軍艦船特に潜水艦への補給基盤が脆弱で特に不足する。
2 グアム島の防御態勢強化。緊急修理補修機材の集積。作戦面では中国の戦果判定(BDA)能力を低下させ、無駄弾を使わせる意識が必要。欺瞞も有効であろう。
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以降は、これまで説明したJASBCを具体化させる個々の施策(Piece-Parts)です。
これまでの説明に何回も登場した、長距離、長時間在空、ステルス、突破力、ISR力と攻撃力、電子攻撃力、デコイ(模擬目標)、スタンドオフ巡航ミサイル、航空機による衛星機能代替、エネルギー兵器(DEW)、等々については省略します。
Q4 アンダーセン基地等の抗たん化はどこまでやるのか?
A1 抗たん性強化は高価であり、またそれだけでは基地機能維持には不十分であることから、中国ISRや宇宙アセットの無力化・盲目化等の施策と総合的に考慮すべき。テニアン、サイパン、パラオの空港施設は改造すべき。陸海空軍が合同でBMD訓練を実施すべき。日本との訓練も増やすべき。
A2 航空機搭載のBMD機能(ALHK:Hit-to-kill)の可能性を空海共同で探るべき。
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Q5 中国の作戦計画を困難にするには?
A1 米空海軍は長距離攻撃能力に投資し、中国に防御能力強化のための出費を強要するべき。海軍は海配備(潜水艦を含む)の中距離弾道弾配備を考慮すべき。元々米側に取って有利な攻撃しやすい固定目標が中国内には多く、中国は少ない固定目標と多くの移動目標がある非対称な状況、とも解釈可能。
A2 水中に置き去りにして機能する港湾や沿岸監視センサーを敷設する水中無人ビークル(UUV)、水中をプリプログラムで移動する機雷も有効。
A3 我のISRや戦闘ネットワークに被害がでた際の対処策を練り、訓練をして中国に知らしめ抑止効果狙うとともに、中国にさらなる装備の出費を強要する。
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Q6 空海軍の指揮所は現状のままでよいか?
A1 とりあえずは、JASBを現状の別々の指揮所でいかに連携して行うかを考え、統合指揮所の是非やあり方を検討すべき。また本作戦を水上艦艇からどのように指揮できるか検討すべき。
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Q7 艦艇や潜水艦の改善点は
A1 再出撃準備の迅速化。基地に戻らなくても水上で弾薬や各種ミサイルを再装填できる機能が必要。潜水艦にはより多様なモノ(ミサイル、デコイ、電子攻撃等々)を射出できるモジュールと搭載量の増加
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メイン著者が元海軍大佐なので、空軍アセットへの期待が慎重な書きぶりながら、作戦全体は海軍の自由を確保する所にあるように見えます。
←中国ソブレメンヌイ級
ミサイル艦
イージス殺しミサイル装備
通商上より大きな打撃を受けるのは中国・・・本当かな・・・一党独裁国家はその点国民を犠牲に出来るけど、米国は大企業や金融や世論がどう動くか・・・もう少し本レポートの前提部分もちゃんと見ておく必要があるかも、です。
相手に出費を強要、の部分は冷戦でソ連を破産させた教訓でしょうか・・米自身とのチキンレースでしょうか・・。それから・・水中無人ビークル(UUV)の用途はそうゆうところだったんですね・・・
「CSBA中国対処構想」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退?」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「米の対中国新作戦はJoint Air-Sea Battle」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
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