8日、欧州戦線勝利65周年の記念行事に参加したゲーツ国防長官は、会場となったアイゼンハワー図書館で「国防のため必要な予算は使うべきだが、それ以外はびた一文出さない」との姿勢を貫いたアイゼンハワー大統領を手本に、徹底した装備品、コスト、ポストの見直し・削減を行い、必要な分野の予算増額を確保すると宣言しました。
その模様は、米国防省が部内テレビで同時放映、Podcastや原稿即時公開といった特別態勢で大々的に発信されています。議会に対しても戦いを挑む姿勢を明確にし、本年末の進退再判断時期に向け、退路を断って2012年度予算編成に向かう姿勢を明確にしました。
記事(Transcriptも含め)
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=59082
アイゼンハワー大統領はぶれなかった・・・
●今日の状況を振り返る時、国防事案に関してはアイク大統領の元のみで真の選択がなされていることを私は教えられた。彼は支援する仲間も無い中で、ひとり厳しい問いを投げかけ、厳しい選択を行い、そして限度を設定したのである。
●ここ数十年間で何人かの私の前任者や関係者が改革を試みたが、アイクに及ぶ者はほとんどいなかった。
国防予算の現状と将来見通し
●911事案以降、イラクとアフガン戦費を除いても、国防費はほぼ倍増している。そしてこのままではインフレ率プラス2-3%の伸びが必要になってしまう。
●2011年度要求は2%増を少し下回る要求であるが、現在の経済状況を考えれば長期的にはこの伸びの継続は非現実的な数字である。
●現在の状況を変えるには、ペンタゴンと議会の激しい反対と戦わなければならない。
利害関係者との対決も覚悟
●議会は軍が必要ないと主張しているF-35の第2エンジン開発とC-17の追加生産を予算に盛り込もうとしている。私は断固大統領に拒否権発動を進言する。
●退役軍人の医療費(TRICARE)の伸びを抑える試みに私の前任者も取り組んできたが、議会と退役軍人によって葬り去られた。納税者に付けを回すことになっている。
国防省の調達取得改革
●(過去記事で紹介しているので省略)
将軍や高級官僚ポストの削減
●例えば、1980年代に米軍は大幅に削減され、陸軍などは4割削減された。しかし将軍はその半分の削減しかなく、国防省の管理職層は同時期に増加している。
●我々がNATO司令部の肥大化を批判する一方で、冷戦終結後20年以上たった今でも、欧州には40人以上の将軍や相当官僚がいる。これによる官僚化した業務により、アフガンへ軍用犬管理チームを送るのに5人もの大将の大将の承認が必要とされている。
●数年前に国防省が調査の結果、少なくとも37の将官ポストは格下げが適当とされたが、何一つ変わっていない。それらのポストの内、いくつがそれにふさわしい仕事をしているのか?
脅威を厳密に見極めて精査を行う
●米国以下13カ国の合計隻数よりも多数の艦艇を保有する巨大な米国海軍が米国を危機に陥れるのか? 2020年まで中国の20倍以上の数の優れたステルス戦闘機を保有する米国がおののくほどの脅威にさらされているのか? 3200以上の作戦機を保有する米軍が、100機程度の海軍・海兵隊の短期的な攻撃機不足でお手上げ状態になるのか?
2012年度予算要求作成に向け指示した
●私は軍に指示した。統合参謀本部、各機能及び地域軍、更にペンタゴンの文民サイドにも、厳しく運用と業務要領を、物とやり方の両面から精査するように命じた。目指すところは余分なコストを削って、その部分を予算内で軍の近代化や構造改革に振り向ける。
●全体から一律に数%カットするなどと行ったことは決してしない。一度だけのカットでなく、根っこからの継続的な変更を目指すものである。
●何が必要なのかは謎ではない。これ以上の検討や新たな法整備は必要ない。アイゼンハワーが備えていた厳しい選択を行う政治的意志が必要なのである。そしてそれはペンタゴン内外の有力な人々を不快にさせる選択であろう。
カンサス州のアイゼンハワー図書館で、「アイク」の力も借りて宣言した所にゲーツ長官の決意の程が伺えます。HolylandもTarnscript全体をまだ読んでいませんが、新たな発見があったらまたご報告します。
スピーチの後、CNNのインタビューにも答え、全世界に決意を表明した模様です。
「CSBA中国対処構想」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退?」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「(補足)アイゼンハワー・ライブラリ演説」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-11
(空軍との対決宣言)「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07
(付録)
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
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