7日、ゲーツ国防長官がフォート・リーベンワース基地の陸軍指揮幕僚大学(Command and General Staff College)の学生に語りました。聴衆の学生は30代半ばの少佐クラス、80%がイラクやアフガンでの実戦経験を有し、複数回の派遣を経験した者も半数以上と、「史上最も実戦経験を有するクラスの一つ」「鉄の少佐たち」とゲーツ長官が表する学生達です。
最初の話題に「兵士と家族のケア」を選ぶあたりに問題の根深さを感じます。先日ケーシー陸軍参謀総長が「部下が「出来ない」といえる雰囲気を作れ」と語っていたことと共通する部分もあります。一部概要のみご紹介します。
Transcriptは →http://www.defense.gov/speeches/speech.aspx?speechid=1465
なお、国防省予算の大幅見直しを訴えたアイゼンハワー・ライブラリーでのスピーチは明日以降別の機会に・・
イントロダクション
●フォート・リーベンワースは陸軍の「知」の重心と言われている。9年間の戦いを経て、陸軍が体現しているように、ここは根本的な変化を経験した。「フルダ・ギャップ」を侵入する戦車群からの防御を考えていた時代は過ぎ去った。
●現在ここは、今現在の戦いへの適応を迅速に柔軟に行っている。最新技術、ウェッブ技術、ソーシャル・メディアを用い、戦いの教訓を素早く新たな戦術や手順にして提供している。
兵士と家族のケアの重要性
●軍の指揮官として、君たちは部下が任務遂行に必要な情報、資源、技術を確実に保有するように注意しなければならない。リーダーは部下が命を落とすのを防ぐだけでなく、部下が助けを求められるように常にドアを開けて置かなくてはならない。部下に必要な支援を与えることは君たちの責務である。
●別の観点ではあるが、兵士がメンタルな問題を抱えつつ、将来への影響を懸念して治療の申し出をためらうようなことがあってはいけない。また、兵士だけでなくその家族も忘れてはいけない。米政府として様々な家族のケア施策を打ち出しているが、家族にその情報が届いていないことが多い。
資源配分への批判に対して
●非正規戦に集中しすぎているとの批判があり、第1次大戦前の英国植民地軍の経験がよく例にされる。正当な懸念であり、今後ともバランスを取ることに留意する。しかし、米陸軍が国家建設団体になり機動・射撃・通信の分野で能力を失いつつあるとの意見は、イラクやアフガンでの厳しい戦いの現実を反映していない。
●ローエンドかハイエンドか、通常戦か不正規戦かの白黒をはっきりさせようとするのは現実世界に適していない。他の軍隊を全滅させる能力は、我々の戦略目標達成を保証しない。新興軍事国家もが非正規で非対称な戦術を使用し、非国家対象がWMDや誘導ミサイルを入手する時代である。
後輩育成と諫言の精神
●次の世代の幹部を育てることも重要不可欠な任務である。君たちのみが戦場で体験した、殺し合いでない地域部族と協力しての選挙、社会やインフラ再建の重要性、激しい戦火、部下の死など21世紀の戦いの経験は、博士号や将軍達よりも優れた知識である。
●陸軍の専門雑誌であるMilitary Reviewに掲載される優秀で革新的な士官による論文は、時に軍や上級指揮官の働きを厳しく批判している。これに私は強く感銘を受けている。これこそが組織が活力にあふれ、健全で力強い証拠である。君たちには、恐れを知らないが思慮深く、状況が望めば忠誠を尽くす様であってほしい。
結びに換えて・・・
●最後にユーモアのセンスも忘れないように。レーガン大統領が使ったジョークを紹介しよう。ある紳士が、友人の事務所開きに花を贈ろうとして花屋に依頼した。しかし花屋は配達先を誤って「安らかにお休み下さい」と記された葬式用のカードを添えてしまった。花屋に事情を確認したところ、「このように考えていただいてはいかがでしょうか。今日どこかで埋葬される方の元に、‘Good luck in your new location”とのカードが届くと。」
みんなの新任地での幸運を願う。‘Good luck in your new location.” 君たちとそのご家族の献身的な貢献に改めて敬意を表し、それなくして国家の日々の安全が保たれないことを肝に銘ずるものである。
「ゲーツ長官が国防省と議会にも宣戦布告」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
「米の対中国新作戦は「Joint Air-Sea Battle」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
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