韓国で「米韓2+2」に参加した後、ゲーツ長官はインドネシアに向かいました(左はユドヨノ大統領と)。
アジア太平洋地域の中で、米国はインドネシアを非常に重視しており、先のシャングリラ・ダイアログの事前ブリーフィングでも、バイで会談する8ヶ国の中で最も細かく説明があったところです。
インドネシア重視を体現するように、22日からのゲーツ長官訪問を米国防省HPが複数の記事(計8ページ(23日現在))で詳細に紹介しているところです。
大量の記事を、基礎知識不足を省みずHolylandなりに整理いたしますと・・・・
●米にとってのインドネシアの重要性
・世界最大のイスラム教徒数の国(記事には記載無し)
・インド洋から太平洋に通じる海洋通商路SLOCを臨む国
・中国の南シナ海での領有権主張や進出対応の前線
・世界最大級のPKO派遣実績(レバノンに現在多数派遣)
・地域の災害対処や人道支援に大きな実績
・経済成長が著しい(6%前後の成長率維持)
●しかしスハルト時代は負の記憶・・・
1992年のインドネシア軍特殊部隊Kopassusによる東チモール市民への発砲射殺、及び東チモール独立合意後の1999年に発生した同部隊による東チモールでの破壊活動により、米国とインドネシアの軍事交流は一時期をのぞき中断したままでした。
しかし、スハルト政権崩壊後10数年のインドネシア政府による軍改革への取り組み(事件に関連した10名程度のKopassus兵士追放や同部隊の改革)を受け、本年6月オバマ大統領とユドノヨ大統領の間で包括的なパートナー関係が開かれ、国防関係の合意に署名がなされたところのようです。
●慎重な前進
ゲーツ長官は大統領及び国防相との会談後に会見し、「インドネシア国防省が公式に、人権を尊重し、人権侵害を行った兵士の捜査を行い、当該兵士を追放する旨を約束した」ことを受け、「少しずつ、着実に、米国の(人権侵害国への対応を定めた)法律に沿って安保・治安協力活動を始める」と米国内の人権擁護派にも配慮した慎重な姿勢を強調しました。
更に「米国の人権を重視する姿勢が緩和されることはない点を、明確にインドネシア大統領と国防相に確認した」とまで会見で述べるほど、徹底した態度を示しました。
今後具体的には、スタッフ間の議論、軍の意志決定プロセス、交戦法規や人権擁護規定に関する会議の開催など非戦闘的なイベントを、特殊部隊Kopassusとの関係再開に想定していると会見で説明しました。
特殊部隊Kopassus出身者が軍の主要幹部となっていることから、慎重ながらも核心部隊から事を開始するようです。
●高まる期待
ゲーツ長官は「最も感銘を受けたのは、米国がどのようにインドネシアを支援するかといった段階から、共に地域や世界のためにどのように活動していくかに重点が移っている点である」と会見で持ち上げると同時に期待を示しています。(左は地元TV出演の図)
中国の手がどの程度インドネシアに入っているかは承知しませんが、人口世界第4位の国で、2005年以降の経済成長率が経済危機の時期を含めても6%前後という成長著しいアジアの新興勢力です。
安全保障だけでなく、経済面でも米の関心が向いているようです。
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(ご参考)
インドネシア軍の概要
●正規軍39万人(陸軍29.8万名、海軍6.2万人、空軍3万人)
●陸軍
基本的には軽装備の歩兵部隊であり、多彩な小火器とともに、軽戦車や榴弾砲、多連装ロケット砲などといった少数の重装備 洋上・航空輸送力が貧弱であるため、主力戦車を保有しない
●海軍
パルヒム級対潜コルベット16隻、フロシュ級中型揚陸艦 14隻、コンドール級掃海艇 9隻
ドイツ製のチャクラ級潜水艦 2隻、オランダ製の先進的なシグマ型コルベットを取得し潜水艦戦力を強化
●空軍
それぞれ10機程度と少数ながらF-16とSu-30を保有 C-130輸送機は米国内でオーバーホール整備実施中
(参考記事一覧)
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