昨日に続き、Air Force Magazine9月号の記事「The Unmanned Tipping Point」から、米空軍を中心とした無人機の働きを学んでいきたいと思います。
本日は昨日予告いたしましたように、航続性能のすごさ、動画情報のインパクト、脅威下での運用と対処等々についてご紹介します。
航続性能が凄いんです。
●無人であることから各種リスクへの対応を低く設定できることは昨日も紹介しましたが、このことは無人機の連続飛行可能時間にも大きくプラスになる。
●有人の場合、人間は搭乗前2時間の準備と着陸後1時間を含め、1日で計12時間の運用時間が安全も考えれば上限で、これ以上の増加は人的エラーのリスクを高めるだけ。
●しかしPredatorではこの時間が32時間可能で、Reaperでも28時間と見積もられている。無人機の場合、飛行中に運行クルーが交代でき、機体の限界まで継続飛行が可能である。
●仮に、1100マイル離れた上空で24時間連続哨戒する場合、Global Hawkが1ソーティーでまかなえるのに対し、有人のU-2では5ソーティー必要となる。更にU-2では飛行時間の5割が往復の行程に費やされる
動画情報が情報分析労力を激減させた
●無人機から情報が静止画の場合、情報の分析には専門的な判定と時間が必要だった。しかしフル動画カメラがPredatorやReaperに搭載可能になり、映像伝送技術が進歩したことにより、動画画像を見る最前線の平均的な兵士でも「現場で何が起こっているか」の判定が可能になった。
●また同時に、電波情報や他の情報との融合技術の発達により、情報判定の即時性が飛躍的に向上したことも無人機の活躍に拍車をかけている。
継続的監視能力が攻撃までの時間短縮に
●無人機の長期在空能力と動画能力等により、敵の識別や継続追尾能力が向上した。湾岸戦争当時はE-8 Joint Starsが敗走するイラク地上部隊へ我が航空攻撃部隊を誘導したが、細かな識別や相手の分析には限界があった。
●コソボ紛争の際、双眼鏡を使用して攻撃機を地上の敵へ誘導していた統制官は、航空機へ誘導指示を出す間隙に目標を見失うことが多かった。北朝鮮のDMZ沿いの山に潜む砲兵部隊も、恐らく射撃したらすぐ山のトンネルに隠れるかもしれない。
●このように短時間しか姿を見せない目標が増加しても、無人機の滞空力を持ってすれば、継続して敵や目標をフォローすることも可能だろう。
脅威下での運用は・・・
●これまでの無人機の運用は、ほぼ完全な航空優勢下で行われることが当たり前だった。むろん例外もあった。ボスニアでは、セルビアのヘリがPredatorを追跡し、機銃掃射で撃墜した例もある。またイラク戦争の際、イラクのMig-25により1機のPredatorが撃墜されたこともあった。しかし将来の敵はこの程度ではないであろう。
●今後の対空脅威を考える時、高々度での運用能力は無人機の強みである。6~7万フィートで無人機を運用させれば、5万フィート以上での十分な能力がない敵戦闘機からの脅威も減るし、一部のSAMしか脅威とならないはずだ。
●現在のセンサー能力からすれば、高々度に滞空していても100マイル離れた目標が監視可能である。
●また仮に、大型の無人機が空対空ミサイルや電子妨害機能を備えれば、ある程度敵に対応できるあろう。
●ただし油断は出来ない。2008年後半には、無人機からの映像を傍受されたとの報道もあった所である。またGPSへの妨害も懸念される。高々度を飛行する無人機はGPSが妨害を受けても影響は少ないが、低中高度の無人機は大きな影響を受ける。(以上が記事概要)
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Holylandは大変勉強になりました。感覚的に理解していたことでも、具体的な数字を伴って解説してもらえるとわかりやすくなりますね。
皆様はいかがだったでしょうか。
(関連記事)
「米空軍ISR組織の革新」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-21
「米空軍無人機のゆくえ・前編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-27-1
「米空軍無人機のゆくえ・後編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-28
「米海軍航空戦力の将来・後編」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-27
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