18日付の産経新聞「正論」の欄で、以前もご紹介した鳥居民(中国現代史研究家)が台湾情勢に関する分析をされています。
最近あんまり台湾の話を聞かないので、概要をご紹介させていただきます。
タイトル:「対中の輪に台湾が入らんことを」
米国の対中国政策の誤算
●南シナ海、尖閣、人民元安、レアアース(希土類)、さらには、イランへの対応にみられるとおり、周囲を気にしない強欲さが今の中国のすべてだ。しかしこれらの問題とは別に、米政府が中国政府の身勝手さに、煮えくり返る怒りを抑えてきた問題がある。
●話は2005年に遡(さかのぼ)る。ワシントンは、北京が北朝鮮の金正日政権に硬軟両様の圧力をかけ、その核爆弾製造を阻止する努力をするものと信じていた。しかし、その期待は裏切られた。
●北京は、金正日政権が各国から経済制裁を受ければ、救いの手を差し伸べて、事実上の属国にしてしまい、子分の無法な所業をかばうありさまである。
●ワシントンは、北京がこんな振る舞いをするとは思っておらず、金正日政権を必ずや抑えてくれると信じていた。そこで、北京から言われるまま、台湾の主体性を追求する民主進歩党(民進党)の陳水扁総統をいじめ、野党の中国国民党の馬英九氏に肩入れした。
●そして、08年3月の選挙で台湾の総統は馬氏になる。中国の詭計(きけい)通りに事は運び、北京は北朝鮮で完勝したのである。
●あれから2年。当然、北京は馬政権を支援し、馬氏は北京の機嫌をとって、おどおどした言動が目立つばかりだ。かくしてワシントンは、笑いものにされたり恥をかかされたりしながらも、怒りを抑えてきた。(経済関係を無視できなかったからだろう。)
そして台湾のその後は・・・
●総統選で民進党の陳水扁総統が敗北した同じ年の08年5月、党の主席に蔡英文氏が選ばれた。女性である。台北市の生まの学者で、国際政治、国際経済が専門だ。かつて民進党の経済部の顧問になり、多くの人々にその才幹を買われた。
●1988年に李登輝総統の指示で、(台湾と中国の)『両国論』を起草した。32歳の時である。温和な彼女をして今日あらしめる出発点となった。
●その蔡女史が野党党首になって、台湾政治の天気図は大きく変わった。立法委員(国会議員)の補欠選挙、地方首長選挙で、野党候補が勝利を収め、世論調査では、蔡英文主席の支持率が馬英九総統のそれを上回ることにもなった。
●なぜなのか。国民党の議員ですら持つ深い疑惑がある。馬政権中枢の人々の中に「台湾を売り飛ばそう」と、その時機と手法を探っている人がいるのではないかという大きな懸念である。
●もうひとつは、台湾経済の停滞だ。アジアの先頭を切っていた台湾が、今は最後尾を走り息を切らしている。今年6月に馬政権は中国と経済協力枠組み協定を結んだ。中国側の狙いは台湾併合を目指しての第一歩であり、馬氏の狙いは、台湾経済の活性化であろう。しかし、IT(情報技術)産業と中国に進出した一部の企業を除いて、台湾の経済は沈滞している。
●一握りの大金持ちのために馬政権は相続税、贈与税を引き下げ、一般庶民の負担となる消費税を引き上げた。また最近失業率は、8%に高止まりしているのが真実であろう。
5市長選が政権奪還の前哨戦
●そこで今月27日の台湾5大都市の市長選挙のことになる。台北、新北、台中、高雄、台南の5大都市の人口の総計は1200万、台湾総人口の約6割を占める。
●元総統の李登輝氏は民進党を応援して、「馬英九を捨てて、台湾を守ろう」と叫ぶ。これらの選挙が2012年の総統選挙の前哨戦となるからであり、李氏は5大都市のすべてで勝てと檄(げき)を飛ばす。
●控えめにみても、民進党が3勝する可能性は十分だ。地盤の台湾南部の高雄市と台南市は手堅く抑えられよう。そうなれば、残る1勝が、台北市長選に臨む前行政院長(首相に相当)の蘇貞昌氏、新北市(前の台北県)の市長選に出馬した蔡主席の、市民への最後の語りかけにかかってくる。
太平洋を囲む国々、「民主主義、地政学、地理学、経済」によって結びつく国々の輪に、台湾が加わることを望むのは、筆者だけではあるまい。(以上が記事概要)
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知らない間に・・・台湾はそこまで盛り返していましたか・・・。11月27日の5代市長選挙に注目です。
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「台湾空軍の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-14
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「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16
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