14日に政府から議会に提出された2012年度予算案には、2020年半ばまでに80から100機の長距離距離攻撃偵察機(核投下任務を含む:LRS)を導入するための開発経費が、難産の末、初めて計上されています。
米国防省の特集→12年度予算案webページ
更に付言すると、何回も記事をご紹介しているCSBAのLRSレポートと予算化の方向が同じです。CSBAの勢い恐ろしです。
長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「1長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「2長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
このLRSはAir-Sea Battleの中核装備であり、既存の実証済み最新技術を使用して新規開発リスクを局限し、所用の時期に所用の予算内で所用の機数を確保することをメインのコンセプトとしたものです。
それなのに、なぜ2020年半ばまで待たないといけないの? 早期装備化のために新規開発のリスクを避けたのでは? そんなに時間が掛かっては完成時には時代遅れになってるのでは?・・等々の疑問が投げかけられています。
そんな疑問に対する各有識者の見解を14日付「DODBuzz」が掲載しています。
●Richard Aboulafia(Teal Group航空アナリスト)
厳しい予算環境下でかつF-35やSSBN-X(次期戦略ミサイル原潜)など優先度が高い装備開発があるため、十分な経費を確保することが困難
「ブロックが存在するからと言って、要塞がすぐに出来るわけがない」、つまり既存の技術を使用するにしても、高度な要求を持つ飛行物体に組上げるのは容易なことではない。
(この方の中国J-20に関する評価をご紹介した事があります。)
「映像と分析中国J-20戦闘機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-30
●Michael Wynne前空軍長官(ゲーツ長官により空軍参謀総長と同時に更迭された)
このような中核装備品開発で課題となるのは、個々の要素技術ではなく、むしろシステムを統合していく過程にある。最新のエンジン、アビオニクス、センサーを一つにまとめることには時間が必要。
最も大きな課題は、恐らく核任務への適合であろう。(高度なシステムを搭載しつつ)核任務のEMP(電磁パルス)等に耐える丈夫な機体を作り上げるのは短時間では難しい。
2010年代半ばに試験飛行用の機体が完成して試験開始、そして初期の量産型機体が組み上がるのが2010年代末ぐらいになるだろう。
LRS計画全体への苦言
●Michael Wynne前空軍長官
機体の総調達数量を幾つかのブロックに分け、ブロックごとに最新の技術を取り入れて行かないと、配備時には時代遅れになってしまう。
●Loren Thompson(Lexington研究所)
依然として、ペンタゴンの装備品調達は時間が掛かりすぎている。バロック時代の物品調達のようだ。恐らく中国はこの知らせに喜ぶだろう。
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F-35は1990年代半ばに開発が始まり、当初計画では15-18年ほどで部隊運用が開始される予定だったと思いますが、それと比較すると・・・LRSが2020年代当初から配備が開始されるとすると、それなりに短縮効果があるのでしょう。
しかし・・Wynne前空軍長官は現役中から「次期爆撃機が命」な方でしたので、その辺りは割り引いて見る必要があるかも知れません。
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