中東歴訪前の21日、ゲーツ国防長官はロシアを訪問してメドベージェフ大統領等と会談した後、サンクトペテルブルグのロシア海軍アカデミーの学生を対象とした講演を行いました。
ロシア軍への主要なメッセージは、アフガン物資輸送陸上ルート(NDN)の活性化、対イラン政策での協調、新START条約の相互履行、各種軍事交流の更なる促進に関する呼びかけでした。
しかし、まんぐーすが興味を持ったのは、講演冒頭のCIA長官時のエリツィン大統領とのやりとり回想部分や、巨大な官僚組織である軍組織を改革していく難しさをセルジュコフ国防相と共有したとの下りです。
「軍組織は、放置すると昔ながらの心地よい習慣に回帰する」と述べ、変化を拒む軍事組織を嘆き、そして警告を発しています。 久々のゲーツ節をお楽しみ下さい。
トランスクリプトと米国防省HP記事からです。
エリツィン大統領との思い出
●1992年にCIA長官として当地を訪問して以来のサンクトペテルスブルグである。
●92年に訪問の際、1970年代に米国が巨費を投入し、敵潜水艦の能力調査のために必死で引き上げた当時最新の露ゴルフⅡ級潜水艦から発見された6名のソ連海軍乗員の遺体と国旗、加えて海底の映像にソ連国歌を加え、25年ぶりに祖国のエリツィン大統領に手渡した。映像は数ヶ月後にロシアのTVで放映された。
●92年の訪問は、厳しい冷戦時の対立から、ロシア情報機関とCIAとの新たな脅威に立ち向かうための協力関係を模索するモノであった。
●対テロ、兵器の拡散防止、麻薬流通阻止等々が話題であったが、20年後の今、それらの課題が現実のものとなっている。
共に21世紀の軍事組織を考察
●また、米露両国軍が、20世紀の脅威でなく、21世紀の脅威に対応できるよう変化するために厳しい取り組みを行っている点でも同じである。
●21世紀の軍事組織は、機敏で全スペクトラムの脅威に対処できるように柔軟でなければならない。ならず者国家やテロリストは、これまでの手段によらず、戦争法規を守らず、一般市民の命に配慮無い相手であり、先のモスクワ空港爆破犯のような者たちである。
●米国防長官として、私は全軍を不正規戦や非対称戦に対応できるように全力で取り組んできたが、一度この戦いが終われば、この巨大な軍事官僚組織が、昔ながらの心地よい習慣に回帰するのではないかと懸念している。
●また軍事官僚制の2つの病巣、つまり兵器システムの継続的価格高騰と納期の遅延、を危惧する点でも、セルジュコフ国防相と意見が一致したところである。
安保の課題と両国の協力
●両国が直面する21世紀の安保上の課題は、両国軍に同方向の変化をもたらすのみならず、新たな協力機会を生み出している。例えば・・・
–アフガンへの地上物資輸送を促進するため、北部物資輸送ルート(NDN: Northern Distribution Network)での協力拡大
–制裁や交渉を通じて、イランによる核兵器追求の阻止
—新START条約を実効あるものとするため、検証と透明性確保に双方が努力
–昨年9月にワシントンでセルジュコフ国防相と合意した国防関連ワーキンググループの枠組み関連。軍の教育訓練、IED(簡易仕掛け爆弾)対処、NDN協力強化、海洋活動や海賊対処の協力等々
—ミサイル防衛分野での透明性確保、演習への取り組み
「米露が関係改善へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-16
「ロシアの動きを見極めて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-22
最後に・・・
●将来の軍を担う皆さん、仮に私がCIAに入った1967年頃、私の最後の仕事の一つがロシアとの関係強化に尽力することになろうとは夢にも思わなかったし、世界中で米国の4軍が現在行っていることを想像することなど到底出来なかった。
●将来の軍事組織は皆さんに掛かっている。皆さんの努力と決断が歴史を作っていく。
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米国内で米軍の改革に向け孤軍奮闘のゲーツ長官は、かつての宿敵ロシア軍の将来のリーダーたちに自らの考えを訴え、改革への取り組みと協力を求めたのでした。
トランスクリプトを読んで、しばし地震の惨状からリリーフされました。
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