前半:米空軍と湾岸諸国空軍の協力

gulf01.jpg3月号のAirForce MagazineにUSAF and the Gulf」(米空軍と湾岸地域)との記事が掲載され、オイルマネーで潤う湾岸諸国を中心とした各国空軍の状況と、彼らと向き合う米空軍の対応を紹介しています。
日本ではほとんど関心が無いと思われる分野ですが、最近のアラブ社会はいつ何時何が起こるか分からない状況ですので、とりあえず現在の状況を記事から概観して確認しておきたいと思います。
なお、記事で扱われる対象国はGCC(湾岸諸国協力会議)のメンバーである、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジ、UAEが中心で、その他にヨルダン等も登場します
記事は、米中央軍の空軍作戦司令官ホステージ中将(写真左:Lt. Gen. Gilmary Michael Hostage III, Commander US Air Forces Central Command)へのインタビューを中心に構成されています。
本日は「同中将が語る地域の特徴」、「配慮が必要な訓練設定」と「同中将の勤務姿勢」について、明日は「将来への取り組み」、「GCC空軍の近代化」と「米軍の役割」についてです。
同中将が語る本地域の特徴
gulf02.jpg本地域では「個人的関係」が非常に重要で、個人の信頼関係の構築がものを言う。大使館からの外交文書で会談を申し込み、その回答を待っていたのでは物事が進まず、携帯電話を架けられる関係構築が鍵である。
通常各地域コマンドでは、航空作戦司令官(JFACC)はナンバー空軍司令官が兼務するが、担当エリア内20カ国を飛び回って個人的関係を構築する必要性から、現在中央軍ではJFACCと第9空軍司令官は兼務していない。これはシュワルツ空軍参謀総長の判断で2009年から一時的に実施しているモノである。私の仕事の35%は各国軍との関係維持構築に当てている
GCC各国軍は、米軍のイラクやアフガンでの作戦を直接支援していないが、各国の基地やインフラ使用を認めてくれていて非常に協力的である。ただし、米国を支援していると見られたくないので、言わば「公然の秘密」の状態で基地使用等を許可しているのだ。
●小国が多い湾岸地域では各国が協力して安全保障にあたる方が効率的ではあるが、歴史的経緯や様々な思惑が絡み、多国間のイベントや協力がほとんど進展しないのが現状である。そこで米国は、これ諸国の仲人となって各種訓練や施策推進を支援している。
配慮が必要な訓練設定
gulf03.jpg●例えば、中東諸国が参加して毎年ヨルダンで実施している「Falcon Air Meet」では、当初CAS部門の競技会形式を追求したが、関係国が「負けて本国に帰る」事を嫌ったため、各国がそれぞれの技量を披露するような形式にしたところ参加国が増加した。
●また、ある一場面を想定した限定的な演習では、参加各国の兵士が共に計画して共に飛び、戦術等を共に議論することが自然に出来るが、これが継続的に国家レベルで行える公式枠組みにはなかなか進展しない
●それでも、4機編隊長を大規模な編隊を指揮できる操縦者に育てる「Iron Falcon」のような訓練を、継続的に年4回は実施している。また、自然災害や大規模攻撃を受けた場合の危機対処を訓練する「Eagle Resolve」を継続して行い、各国自身がこの種の演習を計画できる基礎作りを支援している。
勤務の基本姿勢
●私に勤務の基本ルールは、各国との関係を害しないことである。この関係を害する軍事的要求はありえない。
●私は常に各空軍トップに話している。「この関係維持以上に重要な任務はない。あなたの側に問題が生じるようなことがあれば、すぐに教えて欲しい。我々は別の方法を考える
各空軍トップから電話があれば、少なくとも30分以内には話せるようにするし、90分以内には彼のオフィスに駆けつけられる様にしている。
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米軍のここまでへりくだった態度で対しないといけないのか・・・との気持ちになりましたが、「背に腹は代えられない」のでしょう。
それにしても、「公然の秘密」でグローバルホークやU-2が展開するUAEは「ジャスミン革命」以降のごたごたも無いようで何よりです。バーレーンが心配ですが・・・。

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