最も可能性のあるハイエンドの紛争が生起したら、それは主に海軍と空軍が関与する交戦になるであろう現実に、陸軍は向き合うべきだ。
仮に、アジアや中東やアフリカへ、大規模な地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が将来現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと個人的に思う。
紹介が遅くなりましたが、2月25日ゲーツ国防長官がウエストポイントの陸軍士官学校で「最後の講義」を行いました。
昨日ご紹介した空軍士官学校に先立って行われたモノですが、究極的に変化を促進する姿勢に代わりはありませんが、地上で10年以上実戦に従事している陸軍士官候補生には、ひと味違ったアプローチでした。
かなりの量のスピーチですので、本日と明日の2回に分けてスピーチ原稿からご紹介します。本日は「どう訓練し何を装備するか」と「陸軍の文化を現実の戦略環境に如何に適応」について、明日は「最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか」と「士官候補生に激励と感謝を」の部分です。
前振り
●陸軍には膨大な課題と日々取り組んでいる。それは家族のケアであり、負傷兵士のケアであり、PTSへの対処であり、兵士の素行問題であり、下士官の強化であり、将来に備えた訓練と装備品の獲得と予算の確保でもある。
●本日は、、今の戦いによって最も変革し、君たちが卒業後所属する陸軍の3つのチャレンジについて話をする
1:どう訓練し何を装備するか
●陸軍の官僚的機構は、将来のハイエンドな紛争に備えるために前世紀の教訓から学ぼうとする傾向がある。
●我々は将来の紛争が、複雑で予期不可能であることを知っている。しかし我々は将来の紛争を具体的に知ることが出来ない。実際、ベトナム戦以降で我々が将来の紛争を予期できたことは一度もない。グレダナ、パナマ、ソマリア、ハイチ、クゥート、イラクでは、その1年前でも夢にも考えなかった。
●最も起こりえそうなハイエンドの紛争が生起したならば、それは主に海軍と空軍が関与する状況になるであろう現実に、陸軍は向き合うべきだ。
●もし仮に、アジアや中東やアフリカに大規模な地上部隊を派遣するよう大統領に進言する国防長官が将来現れたら、頭の検査を受けさせるべきだと個人的に思う。
●決して国家建設部隊やゲリラ対処部隊になれと言っているのではない。しかし、大規模作戦を前提とした現装備定数や規模については、ペンタゴンや議会での議論の対象になるだろう。
●重要なのは、地域の問題をコストの掛かる米軍の介入を必要とするような大規模紛争に発展させないことである。
2:陸軍の文化を現実の戦略環境に如何に適応
●イラクやアフガン戦争の初期から、現場の兵士や若手士官はネットやSNSを用いて情報や教訓を共有し、更に本国の準備部隊と意見交換した。このような創造的な姿勢により、AAB(Advise and Assist Brigades)のドクトリンは数ヶ月で完成した。
●しかし、これはペンタゴンや米本土部隊では時間の掛かることである。今後、陸軍を多様な事態や環境に適応できるよう教育訓練するには、どのようにすべきであろうか。外国軍の教育を米陸軍部隊のドクトリンとどのように関連づけるべきであろうか
●陸軍には起業家的精神を持ったリーダーが必要である。そしてそのようなリーダーのみが、新時代のフルスペクトラム紛争を勝ち抜くことが出来る。
●そのため君たちは、これまでの「約束された道(beaten path)」だけでなく、陸軍は勧めないかも知れないがシンクタンク、議会フェロー、他省庁等の勤務を目指す事も考えるべきだ。他の言語習得も私は勧める。
●君たちのすぐ先輩の若手や中堅士官は、歴史上最も実戦経験豊富な士官たちであり、イラクやアフガンが「大尉による戦い」と言われるように、彼らの上級者より経験が豊かな面もある。これら若い世代の多様な経験は、今世紀の複雑な紛争への対処に欠くことが出来ない。
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明日は「最大の懸念、昇任や補職制度を変えられるか」と「士官候補生に激励と感謝を」の部分です。
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
しかしこのスピーチ、かなりのインパクトがあったようで、3月4日の空軍士官学校でのスピーチの冒頭では「陸軍士官学校での話を誤解している人がいる」との切り出しから話が始まっています。
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「陸軍の明日を指揮幕僚大学で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-08
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「Transformerゲーツ長官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16
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