「財政に秩序を取り戻し、将来の繁栄を確実にするため、国民に負担を強いるとともに、米国が世界における役割を縮小することは疑いない。我々は国際社会への関与と軍の規模と能力を大きく削減(sharply reduce)することを求められるだろう」
「もし仮に米国が世界をリードすることを断れば、他国はそれを引き受けない」
やっぱり止められないのが、ゲーツ長官のスピーチ読みです。
22日のノートルダム大学では、その前の週末のノースダコタ大やオクラホマ大とは異なるトーンの卒業式スピーチでした。オバマ大統領による35兆円削減宣言の影響が国防省にひたひたと押し寄せているのでしょうか・・かなり危機感溢れるスピーチでした。 スピーチ原稿はこちら
名誉博士号を授与されたゲーツ長官は・・
●パパ・ママ銀行やパーティーまでの障害物ジョークの後・・
●米国は、奴隷制や、ナチの全体主義や、ソ連の共産主義や、経済破綻とも正面から立ち向かい、苦労しながらも立ち直り新たな繁栄を勝ち得てきた。我々の歩みは確かだったが、ときに鈍重だった。チャーチルは第2次大戦時に言った。「米国は正しいことを成すと期待して良いだろう。ただし、他の全ての方法を試した後にだ。」
●それでも我が国は、その後の歴史においても引き続き困難に立ち向かってきた。10年に及ぶ追跡の後、ビンラディンの死を迎えたことは我々にそのことを思い起こさせる。
●しかし、過去そうであったからと言って、今や将来の問題が自ら解決法を見いだしてくれるわけがない。如何に優れた人々が政府にいたとしても、進歩を遂げるために重大な課題に立ち向かっていくには、指導者の厳しい選択とハードワークが求められる。
●今我々が直面している課題は、我々の統一や存在を直接脅かす様には見えないかもしれない。しかし、ある一面で複雑な課題を抱えている。ワシントンDCに共通認識があるとすれば、それは今の危機や課題をこれ以上先送りできないと言うことである。
●我が国の財政に秩序を取り戻し、将来の繁栄を確実にするため、全ての米国民に犠牲を強いるとともに、米国が世界における役割を縮小せねばならないことは疑いない。我々は国際社会への関与と軍の規模と能力を大きく削減(sharply reduce)することを求められるだろう。今日ここでこの件について述べてみる。
(原文:As we make the tough choices needed to put this country’s finances in order and to secure our future prosperity – including the sacrifices that will be required of all Americans – there will undoubtedly be calls to shrink America’s role in the world – for us to sharply reduce our international commitments and the size and capabilities of our military. I would like to address these calls, in this place and at this time.)
●ここ一世紀の間、米国は戦争が終わる毎に、人類の性質が変化して良くなったと期待する傾向を示してきた。人類が進化し、文明とともに人類の悲劇が終わると信じたのだ。
●またはもう一つの傾向、つまり米国から遠く離れた世界で起こる危機の始まりから目を背ける傾向を繰り返してきた。1914年のオーストリア皇太子の殺害、アフガンでのタリバンの浸透、1990年代のタリバンとアルカイダの繋がりから目をそらしたのである。
●そして上記が導いた結果は、米国が地平線の向こう出来事に対処する能力と決意を失ってはならないことを示している。
●歴史が教えてくれるとしたら、それはいつの世にも悪があり、侵攻や抑圧や富・欲望・権力のために他の人類の自由を犠牲にする輩が存在することである。
●私は歴代のどの国防長官よりも、外交や開発支援と言ったソフトパワーの重要性を提唱してきたと自信を持っている。しかし間違ってはならない。20世紀にそうであったように、21世紀においても、侵略者、独裁者やテロリストへの対処を究極的に保障するのはハードパワーである。
●同盟を維持し、貿易路を守り、エネルギーを確保し、潜在的侵略者を抑制するためには、我が軍の信頼性、関与、プレゼンスが欠かせない。残念ながら、これらは国民の目からは見えにくく、国民はこれらの努力の結果を当然のものとしがちである。しかしこれらは、適切に装備され、訓練され、予算を与えられた米国の軍に掛かっているのだ。
●確かに、強い軍は健全な国家財政無しには存在し得ない。我々国防省は、組織の官僚的な無駄を排し、人件費やコストを精査し、願望や必要性を無視した要求を排除して任務と能力を再検討するつもりである。しかしDonald Kaganが述べたように、平和の維持には力の保持と負担と責任を受け止める国家の姿勢が求められると。
●再びチャーチルの言葉を引用する「偉大さの代償は責任である。米国民は世界の責任から逃れることは出来ない」。
●またある母親から息子への言葉「息子よ、公の仕事は常に誰かの手によって成されなければならない。誰かがやらなければならないのだ。もし賢明な人が避けたなら、他の人もやらないだろう。もし誠実な者が断れば、他も断るだろう。」
●私も付け加えよう「もし仮に米国が世界をリードすることを断れば、他国はそれを引き受けないだろう。」 ノートルダムの2010年卒業生諸君、賢明で誠実な諸君が、我が国を新たな偉大さへ導く道を見つけてくれようお願いする。
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シンクタンクAEIで24日、ゲーツ長官が「最後の政策スピーチ in DC」と呼んだ講演を自身の要望で行いました。
中身は「35兆円削減」への覚悟を訴えるモノで、政治家や政権へ「覚悟」を求め、「脅し」を賭けるような勢いです。
細かい字でA4びっちり5枚ですので、気力があれば、忘れた頃にご紹介します。
お好きな方はご参考に。上記で引用したチャーチルの言葉
●You can always count on the Americans to do the right thing – after they’ve tried everything else.
●The price of greatness is responsibility…the people of the United States cannot escape world responsibility.
35兆円削減宣言と対応姿勢
「オバマ35兆円削減宣言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-05
「更なる削減要求に備え」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23
「4段階で経費削減に臨む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-20
士官候補生や中堅幹部への講演
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
学生の卒業式や少年への講演
「ゲーツ長官引用の名言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-18-1
「米国の将来を悲観するな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-09
「大学で「公への奉仕を」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-12-22
「ボーイスカウトの精神を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-29
「ROTC学生へ 4軍が抵抗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07
「DUKE大学・空軍は単に飛んでいたいのか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-02