しみじみムードの予習シリーズ2/2
ゲーツ国防長官の後任にパネッタCIA長官が正式に指名(議会承認待ち)されたことを受け、昨日から独断と偏見で「来し方を振り返り、将来を憂うシリーズ」を始めております。・・・と言っても本日で取りあえず終了ですが。
本日は、久々にご登場のシンクタンクCSBA理事長クレピネビック氏(Andrew F. Krepinevich)による4月11日付ミニエッセイ、「The Challenges After Gates」をご紹介します。
昨日のDodbuzzの記事が内憂関連だとすれば、本日は外憂を引き起こす諸情勢についてです。CSBAのwebサイトより
4月13日のオバマ大統領による予算削減宣言前の記事ですが・・・
●朝鮮戦争とベトナム戦集結を受けて行った軍縮や冷戦終了を契機に行った予算削減と、今回の予算精査は全く状況が異なっている。過去2回は、その検討時点で少しは安全保障環境の改善が期待される状況にあったが、今回は全く異なる。リビアで開かれた第3の戦線や沸き立つ中東だけを見ても、広範なリスクの存在が明らかである。
●上記リスクだけでも十分に手に余るが、中国が精力的に取り組む西太平洋地域での軍事バランス転換の企ては、米の同盟国の同盟への信頼性を揺るがし、中国の覇権を受け入れざるを得なく仕向けている様にも見える。中国が強化しているミサイル部隊は、この目的に添って強化され、嘉手納やグアムに脅威を与えている。
●また、中国は既に衛星破壊能力を証明し、サイバー戦能力とともに米の戦場ネットワークを脅かしている。
●イランが核兵器を保有した場合、世界はイスラエルとイランの不安定な関係に直面する。仮に両国が技術と運用力を保持していれば、両国をまたぐ弾道ミサイルは10分以内に双方に到達でき、早期警戒や指揮統制システムが有効な対応をほとんど出来ない状況に至る。
●サイバー兵器はスパイ行為や利益目的の犯罪に使用される間はまだしも、例えば電力送電網や経済システム等が狙われた場合、国家戦略レベルの惨劇が生起するだろう。
●米サイバーコマンドは「.mil」の世界を活動対象としているが、米国軍事力は民間部門の軍需産業等に大きく依存している。
●海洋安全保障は、従来の通商船舶の安全確保のみならず、油田採掘施設、送油施設、光ファイバー通信網等の大陸棚を利用する脆弱な資産への脅威をも考慮する必要に迫られている。
●更に兵器技術の拡散により、米国は精密誘導兵器を中国のような国に対して独占できなくなり、また近い将来、非国家対象も誘導ロケット等を使用することになろう。これは非正規戦の様相を一変し、発展途上国での作戦をより困難なモノにするだろう。
●手短に言えば、誘導兵器技術の拡散、核兵器の拡散、サイバー戦の悪夢等により、米国の戦力投射力と国土防衛能力は厳しい挑戦にさらされることになる。そしてこのような複雑で厳しい挑戦に、現在のような厳しい財政状況で直面した経験もない。
●次期国防長官は正式就任までに、どのようにこの難局に対処するかに思考を巡らしておく必要がある。さもなければ、敵側がもう将来採用しないような旧来の戦法に備え、引き続き楽に部隊を組織・訓練し、装備を配分することに成りかねない。
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オバマ大統領は「根本的にミッション、能力、役割を見直す」と本エッセイ発表後の4月13日に宣言しました・・・対応を迫られる上記の全てをカバーすることが出来るのか・・・関係国実質丸投げか・・・。
シンクタンクCSBAの主張
「新防衛大綱とAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19
「Air-Sea Battleの状況」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「序論:長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「1長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「2長距離攻撃システム構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1
「中国から南シナ海をどう守る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-07