約半年ぶりになりますが、ラジオNIKKEIで放送の「伊藤洋一のRound Up World Now!」の中国特集の内容をご紹介します。まんぐーすは内容の真偽のほどを判断出来ませんが、判りやすい分析で、そんな所なんだろうなぁー・・・と思わせてくれる解説だったので紹介します。
6月24日にラジオ日経で放送され、Podcastで配信されたものを聞き取った内容ですので、細部ご関心の方はwebサイト等でご確認下さい。ちょっとタイトルが「大風呂敷」ですが・・・。
伊藤洋一さんは、ご存じ住信基礎研究所主席研究員で61才、結構奔放な話し方のように見えて、大人の気配りが随所にあって、安心して聞ける感じです。
恒例の「中国特集」は、富士通総研主席研究員の柯隆(かりゅう)さんが最新の中国情勢を解説する形で番組が進められました。
インフレと当局の対応
●先日、中国経済のインフレ率が5.5%と発表されたが、直前に食料品の算定比率を下げたからであり、食料品上昇率の11-12%を元の計算式に組み込むと6%になっていたはずの数値。
●中国国民が利用できる預金利子が3.5%程度であるから、庶民は現金を金塊や宝石の「ヒスイ」に交換すべく殺到している状況
●一方で、当局が窓口調整による金融引き締めを行っているため、中小企業は資金繰りが厳しく、特に中小の不動産デベロッパーの倒産が加速的に急増している。
●更に政府や地方の役人が、帳尻あわせのため不動産価格を高止まりに誘導しているため不動産価格が市場の情勢にかかわらず下がらず、混乱に拍車をかけている。
●このような経済の状況から、習近平の下で首相が有力視されている李克強の将来が危ぶまれており、変わりに同じ副首相の王岐山が台頭している。これに中西部の干ばつ被害とここ3週間の洪水による混乱が加わり、次期首相人事は混沌としてきた。
●人民元の切り上げは少しづつ行われているが、基本的に中国経済を支えているのは、為替による価格優位に立つ安価なサンダルやオモチャなどにある構図に変化はなく、中国当局も積極的に切り上げに動くとは思われない。
世界への影響と処方箋?
●世界経済に目を転じると、BRICSの一角ブラジルで政策金利が12,4%、インドも7%にまで上昇する状況でインフレ懸念から成長に陰りが見えてきている。他のBRICS諸国も似たような状況で成長がスローダウンしてきている。
●日本は震災と政治混乱、米はオバマ大統領が選挙をにらんだ慎重な姿勢、欧州は債務問題で混乱中・・・それではどこが世界経済の牽引役を担えるかというと、やはり中国を抜きには語れない。
●今年の新車販売台数が、2000万台を超えることが確実なこの巨大市場の与える影響力は決して過小評価できない。米国経済には回復の兆しもないし、世界的企業の生産拠点は続々中国に移転している現実がある。
●中国に残された政策的選択肢は極めて狭い。しかし中国が転べば世界が大きな影響を受ける以上、中国に改革を進めながら安定的成長を期待するほかない。
●ただ、政権交代が目前に迫る中、現在の指導部が積極的に改革に取り組むとは思えず、新指導部も就任後直ちに新たな方向を打ち出す事は困難であろう。
●ウイグルやモンゴル族自治区では、住民運動を抑えるために密告制度を導入しているようだが、これは将来に禍根を残す手法と言わざるを得ない。
●汚職体質はますます加速。中国新幹線責任者が、スイスの銀行に24億ドルもの巨額の口座を保有していたことで逮捕されたように、途方もないレベルにある
●このような状況下でもリスクが危機にならないのは、やはり高成長だから。これを持続するには窓口規制を止め、金融緩和しながら人民元を切り上げ変動幅を拡大するのが適策ではないか。
●日本や南シナ海沿岸国との関係では大きな動きはない。ただ、日本の東北にあった下請け産業は、震災を機に中国移転が加速する。
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バブルがはじけると米経済誌などは叫び続けているようですが、北朝鮮の態勢と同じでなかなか西洋人の見立て通りには事態は展開しません。
「アラブの春」のような動きも見られず、いつの間にか世界経済がどっぷり中国に依存する構図が確立しているようです。
下に2009年から11年までの中国経済に関する過去記事を並べたのですが、どれも悲観的な見方を述べたものです。
悲観的な見方がまんぐーすを含め「読者受け」するからでしょうが、エコノミストの方の分析にも西側感覚とは異なる視点が必要なのかも知れませんねぇ・・・
番組の柯隆さん曰く、「一般に大企業と言われる会社にも、戦略的に中国を見る知見を持った人が非常に少ない」とも。引退後の手習いに中国語でもやりますか? でもどうしてもあのキンキンとした発音には馴染めませんね・・・。
「中国バブル崩壊は秒読み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-06
「中国経済は下り坂」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-30
「中国経済4つの視点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-25
不慣れながらTwitterも始めました・・・@Mongoose2011です。