12日付「DefenseNews」が掲載のゲーツ長官へのインタビューご紹介の後半です。本ブログでご紹介してきたゲーツ長官の主張が、新たな事例を含めて述べられており、非常に興味深いですし、参考になります。
今日の後半は、「35兆円削減要求への対応」と「調達装備品開発改革の処方箋」についてです。
概要をまんぐーす的意訳でご紹介します。是非原文をご覧になって、プレス対応の巧みさもあわせてお楽しみ下さい。ゲーツ長官はプレスにとっても評判が良いのです。
更なる35兆円の予算削減要求には?
●4月13日の大統領による更なる35兆円の安全保障費削減宣言は驚きだった。しかし、50兆円案もあったことを思えばましな方かも知れない。
●私は、議会や国民や大統領に、これこれのメニューがあり、それぞれに伴うリスクはこれこれだと示し、その上で熟慮の上判断してもらいたい。みんながリスクを理解して共有しなければならない。
●これへの対応には4つの対応項目がある。一つ目はこれまでの効率背追求の継続。二つ目は必要性や重要度が低い(marginal)任務や能力の削減であり、これには複数の軍種間に重複して存在する装備も含まれる。
●陸軍と空軍に重複する高等無人機などは、これ以前の業務管理の問題である。難しいのはは、どの分野が経費を削減してよいmarginalな分野か見極めることである。しかしこれら2つでは到底大統領の額には到達しない。
●三つ目は政治的に最も難しい分野である。医療費、保障費、退役後の給付等であり、リタイア後の件は最も悩ましい。20年間勤務し、いよいよ脂がのっている中佐クラスがリタイアした際の手当を厚くすると、それまでの投資が無駄になるし等々、退役軍人団体との関係もある。
●医療保険については負担を増やす件であるがこれも一筋縄ではない。(この第3分野はまんぐーすに基礎知識がなく正確かどうか不明。これ以上説明できません)
●4つ目は、我々の戦略に関わる困難が伴う。どの部分でリスクを甘受し、戦力構成を削減するかの問題である。陸軍の戦闘旅団か、空軍の航空団か、艦艇数か・・等の課題である。全分野に渡る一律Xパーセントの削減は、部隊や装備があっても訓練不足や整備不足や弾薬不足を招き、部隊に破滅的結果をもたらす。70年代や90年代と同じになる。
将来を無視との批判には?
●(あなたは米軍幹部を「次の戦争狂」と非難しているが)私が着任後最初の2年間、今現在の戦いに注目するものはおらず、将来の戦いにのみ投資していた。
●最初の2年間でみんなの意識を変え、アフガン等の今の戦いに少しずつ目が向いてきた。それでも今現在の戦いへの投資は10%程度である。
●40%はC-17のように今と将来の両方への投資であり、残りの50%は全て将来への投資である。今の戦いへの投資を強調した時期があったが、それだけを実施しているのではない。バランスのとれた投資の必要性を訴えたのだ。
調達や装備開発の処方箋は?
●調達分野の統合が不十分。海兵隊と陸軍が無人機の分野で協力関係にあり、他にも例が有るが、例えば空軍が要求していて私が09年に切った新型捜索救助ヘリがある。
●パイロットが撃墜されたのはもうだいぶ前のことだ。今や重要なのは医療救出搬送(medevac)である。昨年アフガンで9700ケースの対応をしているのに、なぜ空軍の捜索救助のためだけに新型ヘリが必要なのだ。
●(国防省に経費や無駄管理責任者chief management officerが必要では?)この点では議会や民間部門が進んでいると思う。国防省の多くの組織や付属機関が勝手にやっていることを、一括してチェックする番犬が必要である。
●装備品の開発や価格については2点が重要。まず、特別なものは除き、もっと既存の実証済みの技術に焦点を当てることがコスト膨張防止に必要。更に開発途中で新たな要求や機能等を付加しないことが重要。この点に関しては、要求側も企業側も節度を持つ必要がある。
●(軍需産業基盤の維持問題について)例えばC-17の生産を止めると軍需産業基盤が失われるとの話か?今やどれだけの人が巨大な民航機を製造していると思うか? もちろん特別な造船所のように、民間需要がない真に心配な部門もあるが、どこが危機的状況にあるかを良く見極める必要がある。
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このブログは、オバマ政権誕生直後の2009年4月末からスタートしたため、ゲーツ長官任期の最初の2年間をカバーできていません。そこにも戦いがあったんでですねぇ・・・
2回にわたってご紹介しましたが、おそらく世界の軍事組織が共通に抱える問題を集約したような中身でした。
繰り返し、反芻して味わいましょう
経費縮減関連
「政治家よ目をそらすな議論を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26
「4段階で経費削減に臨む」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-20
「更なる予算削減に備えて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23
「オバマ35兆円削減宣言」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-05
「14兆円精査案で政府議会と」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29
「国防省コストカット」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-30-1
「Transformerゲーツ長官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-17-1
「ゲーツの取得開発改革指針」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「ゲーツ長官が議会にも宣戦布告」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
「アイゼンハワーライブラリ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-11