脅威の見方考え方を変えよ

「相手は、米国と軍事的に真正面から対峙出来ないことを認識し、非対称な戦略、つまり米国の弱点を突き、長所を削ぐ手段を用いてくる」
lynncyber.jpg8日、リン国防副長官はシンクタンクCSIS主催2011 Global Security Forum」で基調講演を行い、改めて米国を取り巻く脅威の変化を整理し、将来の戦いのトレンドを語りました
ところで・・・リン副長官はゲーツ長官交代後どうされるのでしょうか???、サイバーや調達改革に関し、軍需産業との困難な調整を背負ってやってきた、軍需産業出身(レイセオン)の愛国者の動向にも注目です。ゲーツ長官はブラッセルでNATO国防相会議です。
冒頭では、偉大な国防長官を持つと副長官家業はとっても楽、・・とのジョークを飛ばしていますが、CSISに参集の専門家は、リン副長官の担当分野がどれほど大変かよく分かった人たちばかりですので、ジョークとしては「ひくひく」笑いになっています。
それでも、ゲーツ長官の思考や情勢認識、つまり今後の米国軍備の方向をを分かりやすく整理している20分弱の講演です。国防省HP記事よりVIDEOも視聴可能です。震災への一点集中から目を転じるには格好の材料かと思います。
安全保障環境を左右する3つのトレンド
lynnGSF.jpg3つのトレンドとはlethality:多様な致命的かつ影響の大きい手段の容易な入手、longer-duration:戦争や紛争期間の長期化、asymmetric:非対称脅威の拡散の3つを指す。
●以前は、先進国が元も強力な兵器システムを保有し、その他の国はそれ以下の能力しか持ち得なかった。しかしそのような時代は終わった。テロ組織は、最新の装甲車両を農薬を原料に作った爆弾で攻撃し、破綻国家が核兵器に手を出し、少数からなる犯罪組織が世界最先端のサイバー攻撃能力を保有する時代なのだ。
●米国は、対応を迫られる広範な脅威と対峙するため、ハイエンドからローエンドまで多様な脅威に対処する能力を持たなければならない。つまり、第5世代戦闘機から仕掛け簡易爆弾対処技術までを備えなければならない。
戦いの長期間に備えよ
湾岸戦争のように、大規模な通常兵器による攻撃を行って相手の軍を撃滅し、100日間あまりで戦闘行為が終了するような、これまでの戦争の概念は通用しなくなりつつある
イラクとアフガンでの紛争は、既に第1次と第2次世界大戦をあわせたものより長期間になっており、戦争を計画する者は長期的関与に備える準備を求められ、そのコストも勘案した上で行動しなければならない時代になりつつある。
相手は正面から来ない
lynnBsc.jpg●また相手は、米国と正面から軍事的に対峙出来ないことを認識し、非対称な戦略、つまり米国の弱点を突き、長所を削ぐ手段を用いてくる。タリバンが仕掛け爆弾や自爆テロを行い、戦いを長期化させて我々が諦めて退場するのを待つ戦略を採っている。
サイバー空間は非対称な攻撃に狙われやすいエリアである。テロ組織がより強力な攻撃能力を備えつつあり、多くの場合ほとんど装備を持たない組織なので対処が困難である。またやっかいなことに、彼らはためらいなく攻撃を仕掛けてくると考えられる。我々は、軍や政府や重要なインフラを守るため、より積極的に行動しなければならない。
接近拒否や領域拒否戦術に対処するため
伝統的な大国も非対称な能力な能力を求め、接近拒否や領域拒否戦術に傾きつつある。これまで米国や同盟国が独占してきた高等な精密誘導兵器技術が、今後10-20年後にはより多くに国にとって利用可能となるだろう。
●この接近拒否や領域拒否戦術に対処するため多様な能力獲得を図る必要があるが、特にミサイル防衛と長距離攻撃能力が重要長距離攻撃に関する一連のシステムには、電子攻撃も含め大きく投資するが、米国が強固な防空網を突破して攻撃を世界で行うためのものである。
●厳しい財政状況下、これらの脅威に立ち向かうため、世界一効率的な軍事力を保有しなければならない。そのための正しい判断が、今求められている
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ゲーツ長官退任後の主要スタッフがどうなるかが気になります。フロノイ次官、カーター次官もそうですし・・改革を支えてきた人たちはどうなるのでしょうか・・・みなオバマ政権後からでも2年半の勤務ですから・・・。
「正しい判断が、今求められている」・・・です
軍のあり方を考えるシリーズ
「空軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
「前:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-1
「後:陸軍士官候補生へ最終講義」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07-2
「海軍海兵隊とも全面対決へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

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