後半:宇宙優勢を保つ5つの鍵

spacemine.jpgAirForce Magazine7月号が「Five Roads to Space Dominance」と題した記事を掲載し、2月に公表された国家安全保障宇宙戦略(NSSS: National Security Space Strategy)で示された、米国の宇宙パワーを保つための5つのアプローチを解説しています。宇宙問題は、米国防政策を取り巻く諸問題の縮図の様な様相を呈しており興味深いです。
記事の筆者は、多数の関係高官へ膨大なインタビューを行い、まんぐーすのような非専門家にもわかりやすく米宇宙政策の現状と課題をまとめています。
5つのアプローチとは1宇宙のルール設定、2米国の能力強化、3新たな協力関係構築、4抑止力の強化、5勝利に向けて、の5つです。今回リン副長官が退任を表明したこともあり、同副長官が担当し苦労した功績をたどるべく記事の概要をご紹介することと致しました。2回に分けてご紹介です。
昨日は、序論、1宇宙のルール設定と2米国の能力強化について、本日は後半の3つ、3新たな協力関係構築、4抑止力の強化、5勝利に向けて、をご紹介します。
3 新たな協力関係構築
spacechina.jpg●NSSS発表による宇宙政策変化の中で、「一匹狼政策」から「国際協力強化政策」への変換ほど大きな変化はない。新政策は、既に宇宙活動で実績を上げている責任感ある国家、国際機関、更に関連一般企業との関係強化を唄っている。
●米国全体の宇宙能力を向上させ、コストを抑え、脆弱性を克服するため、国際協調を重視することになっている。例えば、米戦略軍のバーデンバーグ空軍基地にある宇宙作戦センターは、外国関係者も交えた国際宇宙作戦センターに代わりつつある。米戦略軍司令官は、中央軍司令官のように多国籍部隊の作戦を司ることになろう、と国防高官は述べている
●戦略軍司令官は、情報共有に制限を付けようモノなら、多国間協力は成立しないと述べている。カートライト副議長も、今後我々は単独で戦うことは出来ないと
ゲーツ前国防長官は、画期的な情報共有協定を豪、カナダ、仏と締結し、豪は米システムのある周波数回線を購入しようとし始めている。また米空軍は商用衛星への軍事用機材搭載を真剣に検討し、軍民の協力関係を加速しようとしている。イリジウム等の企業との協力もその一つ。カナダ企業や英企業の衛星回線購入も。
●これらの協力関係強化には、共通の考え方やドクトリンの共有が欠かせない
一方で、機密情報の扱いに関しコンセンサスが得られているわけではない。どこまでを去有し、共有しないかを線引きすることは極めて難しい他者のシステムをどれだけ信頼できるかも疑問である。突然協力関係を反故にされたり、アクセスを遮断される恐れもつきまとう。
本音では、今でも「一匹狼」でいたいのだが、コストの問題がそれを許さない。
4 抑止力の強化
spaceputin.jpg宇宙で相手の攻撃を如何に抑止するかも大きな本戦略の課題である。ASATやレーザー攻撃兵器や通信妨害の普及により課題は大きくなりつつある。
●相手は、仮に米国の宇宙アセットを攻撃しても、米国民は本格的な反撃活動を支持しないのではないか、と考えている可能性も看過できない。
本戦略では、抑止は4つの階層からなっている。1国際規範でレッドラインを明確にして知らしめる。 2打たれ強い装備システムにする。 3宇宙での国際協力を強化し米国一国への攻撃が世界を相手にする形にする。最後に4宇宙での攻撃オプションを保有する。である。
●しかし宇宙で戦いを起こすと破片をまき散らすことになることから、宇宙にない宇宙関連アセットへの反撃力を抑止力にする考え方がある。地上施設は多くが脆弱であることから効果を期待されている。
●宇宙での抑止を確実にするため、陸海空全ての象限での反撃を準備することで信頼するに足る脅威を作り出す。宇宙での抑止には全てのオプションが遡上にあることが重要。
●ただ宇宙アセットへの攻撃は、他の本格作戦の前段階であると想定されることから、宇宙アセット被害下でもたくましく戦い勝つ体制づくりが望まれる。
5 勝利に向けて
AFM0711cover.jpg●端的に述べると、我の宇宙アセットへの強力な攻撃を絶え凌ぐ態勢を準備し、敵の攻撃を受け止め、被害状況下で効率的に戦いを継続し、ねばり強く勝ち抜けるよう備えることである。
●そのために、例えば「宇宙アセットに頼らない日」を設け、限られた能力下で行動する訓練の設定が検討されている。訓練には宇宙を活用した情報を利用している関係者を広く参加させる事が想定されている。
電磁パルス攻撃や地上施設への攻撃への対処も、公開されてはいないが進められている模様。宇宙アセットに関しては、サイバー攻撃より通常の攻撃をより心配すると関係者は述べている。
●代替機能の確保も考えられている。例えば精密誘導兵器や地上兵士の行動に欠かせなくなっているGPS衛星が攻撃された場合を想定し、残存衛星と欧州が運用するガリレオシステム、更に地上や航空アセットを組み合わせてバックアップすることが考えられている。
国防省内で検討されているORS(Operationally Responsive Space effort)、つまり必要時緊急に代替衛星を打ち上げる手段の検討を進めている。しかしORSに関しては、「また敵に目標を与えるだけで効果が薄い」や「代替衛星を購入するほど予算に余裕はない」との指摘も主要幹部から成されている。
●強調と独立、代替と被害前提か等々、多くの選択肢と伴うリスクと利点を比較する議論が今後も続くであろう。
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お金で買って操縦席に入れるなら、日本もお金を出して回線なり映像なり情報なりを入手し、併せて米国を資金面で支えれば良いと思うのですが・・・
スーダンにヘリコプターを派遣するより、より直結した防衛政策だと思うのですが。武器輸出3原則(減速)もですが・・・・
大きく宇宙政策に関する諸課題を概観できたモノと思います。今後の各種情報を読み解くご参考になれば幸いです。梅雨明け・・・暑さ厳しき折、ますますご自愛を。
「衝突警告677回中国産宇宙ゴミ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-14-1
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02
「宇宙態勢見直し作成中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-15-1
「国家安全保障宇宙戦略:NSSS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-05

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