予算削減を巡る様々な発言や動きが盛んですが、米国防予算史上最大の投資案件F-35を巡る議論は避けて通れないようです。
13日、下院軍事委員会にパネッタ長官と共に出席したデンプシー統合参謀本部議長は、これまでの国防省高官の発言ラインとは少し異なった、F-35の3機種調達に疑問を呈するトーンの発言を行い物議を醸しています。
特に、並んで出席のパネッタ長官によるこれまで通りの発言と一線を画した内容に注目が集まっています。13日付「DODBuzz」記事より
まずパネッタ長官は・・・
●F-35への強固なコミットメントを確認するように、「驚くべき性能を持った航空機である」、「真に良い仕事がなされている」、また「国防省関係者は、付随する種々の課題を的確に把握するように勤め、コストの低減と要求性能達成に取り組んでいる」とコメント。
●ゲーツ前長官が「2年間の保護観察(probation)」を設け、結果次第では開発中止するとした海兵隊用垂直離着陸型F-35Bについてパネッタ長官は、「これは政治的な用語で、事業管理上の言葉である」、「意味するところは、同機種をテストするチャンスを与え、成績が良ければ単位を与えることである」と淡々と語りました。
一方隣席のデンプシー議長は・・・
●最近のどこ関係者より率直に、「私は異なる3機種の状況に懸念を抱いている。本当に我々に3機種とも購入するだけの余裕があるのかどうかに懸念を持っている。」と語った。
●デンプシー議長は、そのジェット機を導入せねばならない、コストを下げる努力を、と述べるのではなく、「我々は戦闘機を必要としているが、我々がロールアウトしようとしているモノを購入できないかもしれない」とまで述べました。
F-35用第2エンジン開発について・・・
●(利権がらみ議員からの、競争原理が重要だとしながら、なぜGE社が自費で行う第2エンジン開発に冷淡なのか、との質問に対し、)パネッタ長官は「競争導入はより良い調達のための重要な手段であり、私はその支援者である。しかしそれは効率的な結果を生まなければならないし、競争の結果余計なコストを生むモノであってはならない」。
●パネッタ長官は、カーター新副長官と共にGE社のブリーフィングを受けることに同意したが、それ以上のことを何も約束していない。
●このような「曖昧戦術」を採ることは、パネッタ長官の議会と丁寧につきあっていこうとの戦略の一環かもしれない。
●GE社が自費で開発を行うにしても、議会や国防省の許しを得て、政府のテスト施設を使用しなければ開発は不可能であり、数ヶ月前からGE社は計画の説明と施設使用の申し出を行っていたところである。パネッタ長官は細部には触れなかった。
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長官と議長の間の発言の差は、両名の考え方の違いではなく、発言内容の「分担」が両者の間にあったように思います。パネッタ長官は就任に当たり、週1回国防省主要幹部の定例ミーティング開催に言及し、更に発言や行動においてパネッタ長官の考えと一致した姿勢で行うよう達していたところです。
第2エンジンに関しては、予算削減を巡る議論で議会との関係を重視する「予算編成問題のプロ」パネッタ長官の知恵が感じられるやりとりです。「曖昧戦術」がどれくらいの期間有効なのか判りませんが、一つの政治手法なのでしょう。
「2016年にF-35を日本へ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-16
「豪は14機のみ購入確約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-27
「F-35輸出商売は好調」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-27
「米空軍F-35は航続距離不足」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-14
「空海軍用F-35は2017年以降」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-24
「パネッタ長官が使命感と信条を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-07
「議会承認のために、私は・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26