運命の傍観者たることを拒否

「運命の傍観者であることを拒否する。私の仕事は、運命を受け入れることではなく、運命を切り開くことである」
WWilson.jpg「本格始動」などというと怒られるかも知れませんが、7月就任以来約3ヶ月がたち、先週の中東(イスラエルとエジプト)訪問からNATO国防相会議参加を経て、その動きが本格化してきたようにお見受けします
11日には、シンクタンクWoodrow Wilson International Centerで就任後初と言われる政策スピーチを行い、改めて厳しい安保環境と国防省の取り組みを訴え、議会に対し11月23日までにキチンと秩序だった予算縮減計画をまとめるように要求しました。A4版で5ページの本格的なスピーチですので、まんぐーすの好みでつまみ食いしてご紹介します。
11日Wilson Centerにて・・
国家安全保障と財政健全化の2者択一を迫られているとの見方は正しくないと思う。ただし、幾つかの困難な選択無しに、この2者択一を避けることは出来ない。国防省は、この機会を捉え、将来の安全保障環境と挑戦に対応しうる軍について長期視点で厳しく見定めなければならない
●(安保環境について、イラク、アフガン、パキスタン、核拡散NKとイランに触れた後、)核の危険と並ぶ新たな脅威として、サイバーが主要な懸念として我々の前に立ちはだかっている。サイバー攻撃により、国家機能が麻痺する可能性がリアルに成りつつある。(この後中国に触れ、)アジア太平洋地域に前方展開戦力を維持継続を意味するモノである。
●私は各軍種チーフと軍の将来を示すロードマップについて議論している。我々は、21世紀の軍がより小規模に成らざるを得ないことを承知している。しかし小規模でも多様な安全保障上の挑戦に対応可能である必要がある。
Wwilson2.jpg●特に西太平洋から東アジア、更にインド洋に至る地域のパートナー国には彼らの安保のためにより多くの負担を担うように働きかけるが、我々の同盟の再確認のための能力を維持する必要がある。
●米国の人口のわずか1%に満たない、志願して集まった若い兵士の肩に重い負担が集中している。過去10年の戦いで経験と技能を身につけた、歴史上最も鍛え上げられた兵士達であり、偉大な国家の資産である。我々はこの兵士とそれを支える家族のニーズに応え、必要な訓練と装備、更に支援を維持する必要がある。
過去4回の軍縮での失敗のように、戦略無き一律予算削減で、形だけで装備や訓練が不十分な「空虚な軍隊」を生み出してはならない。しかし政府としての予算削減の取り組みに、4段階で取り組んでいく
第1に効率性の向上。昨年ゲーツ前長官が打ち出した各種業務の無駄を排除する試みで$150 billion削減に取り組んでいるが、更に$60 billion上積みして削減することに取り組む
第2に人件費。2001年以来装備等費が5%氏か増加していない中で、補償や医療分野が8割も増加している。ただ、健全な志願兵制度を維持し、前線で厳しい犠牲を伴う任務に当たる兵士との信頼関係を保つため、彼らに全てを背負わせることは考えていない。
第3に戦力構成。地上戦力については、イラクとアフガン後に、より小規模だが高能力の部隊とする方向にある。強靱な州兵と予備役は維持する。
第4に兵器近代化と調達改革。空虚な軍を避け、健全な軍需産業基盤を維持し、軍の新たな能力を守るため、削減は慎重に分野を見極める。また調達においては、競争とコスト管理と開発期間管理に注視する
●10年にわたる戦いや累積債務、2大政党制の機能不全により我々の安全保障上の対処能力は危機にさらされている。そしてこれらを成し遂げるため、危険に満ちた政治的海域を公開して聞かねばならない。誤りが許される範囲は極めて狭い。議会は、必ずしも彼らが好まないこれらの国防戦略を推進する責任あるパートナーでなければならない。
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panettawilson.jpg内容的には、ゲーツ前長官の路線と「空虚な軍を避ける」とのパネッタ長官のこれまでの発言の繰り返しが多いですが、「アジアのパートナー国により多くの負担」の明言や「$60 billion上積み」や「強靱な州兵と予備役は維持」の部分は新しいかも知れません。なお、このスピーチはかなり熱の入ったモノだったようで、「Passionate」との表現で米国防省HPは伝えられています。
ところで冒頭のジョークですが・・・
●後にノーベル賞を受賞する高名な物理学者が、同じ講義を複数の街で繰り返し行っていた。ある時学者のおかかえ運転手が、「先生、私はもう何回も同じ講義を聴いたので、先生の代わりに授業できるぐらいに成りました」と言いました。
●学者先生は「それなら衣装を交換し、今日は君が講義をやってみないか? Fresnoの街じゃ僕の顔をみんな知らないだろう」といって大胆にも実行した。運転手は言葉通り、学者の言葉をそのまま再現し、1時間の講義をやり遂げてスタンディングオベーションを受けたほどだった。
●学者は腰を抜かすほど驚いたが、その後、会場から専門的な数式を含む長い質問を受けた。壇上の運転手はしばし沈黙し、そして言った。「私はそのような馬鹿げた質問を受けたのは初めてだ。どんなに馬鹿げた質問かを示すため、私の運転手に答えさせよう
このあとパネッタ長官は、物理学の世界では質問に答えられる専門家は少数だが、安全保障分野になると今日の会場に溢れるほどの「運転手」がおり、議論は大変なことになる。と講演を始めています・・・。
パネッタ長官関連
「パネッタ長官が使命感と信条を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-07
「議会承認のために、私は・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-26

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