Air-Sea Battleに波風の年

AFM1011.jpg10月号のAirForce Magazine「AirSea Battle’s Turbulent Year」との記事を掲載し、Air-Sea Battleを巡る状況を遠巻きに間接的にこれまでの報道を整理して紹介しています。
記事の内容自体は、本ブログの「Air-Sea Battle」カテゴリーで過去にご紹介した内容のがほとんどですが、囲み記事に海空海兵隊や米国防省内の動き、なぜコンセプトの概要が公開されないのかについて記述がありますのでご紹介します。
プロローグ
本年2月17日、米空軍参謀本部J-5のカーライル中将は「Air-Sea Battleの公開用概要文書が2週間以内に公開されるだろう」と述べている。
●また3月には前海軍作戦部長ラヘッド大将も「Air-Sea Battleの大部分は非公開にされるべきだが、海軍と海兵隊の部分の作業はほぼ終了し、2-3週間以内に概要が公開されるだろう」と述べていた。
更に7月末、当時海軍の副作戦部長(現海軍作戦部長)のグリーナート大将もまた下院軍事委員会で「公開部分のコンセプトが間もなく公開されるだろう」と語っていた。
●しかし、本誌が編集中の9月末現在、国防長官室や空軍関係者によると、Air-Sea Battle Conceptは以前非公開のままでパネッタ国防長官の卓上に上がっているという・・・。
どうなっているのか?
Afinalphoto.jpg●Air-Sea Battle Conceptの案は6月2日、海空海兵隊の制服トップと海空軍長官により合意署名され、国防長官の承認を得るため上申された。
ゲーツ前国防長官は、7月1日に退任する以前に同コンセプトに署名すると海空関係者に告げていたが、最終的に書名しないまま退任した。空軍関係者によると、コンセプトは国防長官室の政策部署で保留扱いになっている。
●複数の国防省及び空軍関係者が暗に陽に示唆するところによれば、国際政治的配慮が強く作用しているらしい。この派生的懸念が度重なるAir-Sea Battle Conceptの公表延期につながっている模様
中国の反応を気にしつつ・・・
7月末、空軍関係者は非公式に、国防長官室は中国の本コンセプトに対する受け止めと反応を非常に気にしていると述べていた。
chinachenbing2.jpg●8月24日、国防省は例年恒例の議会への報告書、通称「中国の軍事力」を公表したが、中国国防部はこれを「根拠のない懐疑に満たされている」と直ちに批判したところである。
Air-Sea Battle Conceptは中国を対象にしたモノだと誰もが考えているが、米国防省関係者はイランや北朝鮮などを含む接近拒否戦略をとる多様なシナリオに対応するモノだ、としばしば説明している。
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台湾への最新F-16提供を諦め、現有F-16のアップグレードで納めようとした米国ですが、この改修自体も中国から文句を言われる始末・・・。
8月のバイデン副大統領訪中時の対中妥協の噂を含め、何となく全体の雰囲気から納得できる説明です。
「バイデン訪中と米中妥協」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12
B-2Navy.jpg囲み記事以外の本記事にも、断片的に面白い記述もあります。例えば、海兵隊は2011年の1月まで全く海空軍の検討に関与できていなかったとか、海空軍が同コンセプトに基づく演習を2012年に計画中だとか、マケイン上院議員が予算削減の影響を最も受けるのは海軍だと発言とか・・・。(写真上はB-2を研修する海軍関係者
Air-Sea Battleがどのような形になろうとも、また仮にコンセプトが消滅しても、中国の軍事力近代化を踏まえれば、米海軍と空軍の対中国戦略が「遠方から」を基本とし、長距離無人機やミサイルを組み合わせた方向にあることは間違いありません
また、「作戦面で打たれ強く、地理的に分散し、政治的に持続可能」との米軍体制の方向性は変えようもありません。
AirSeaBattle.jpgAir-Sea Battleが海空軍で合意できなければ、上記の方向が海空バラバラに非効率な形で進められ、予算削減の中、中途半端にまだら模様で形作られる事になるのでしょう。西太平洋地域の米同盟国にとっては大きなマイナス要素です。
まだまだ紆余曲折が予想されるコンセプトですが、本ブログの「Air-Sea Battle」カテゴリーを時系列で眺めていただいて、議論爆発の時期に備えていただければ。

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