予想より早期に中国が覇権国に?

chinaFlag.jpgForeign Affairs 9-10月号で、米ピーターソン国際経済研究所のArvind Subramanianが、控えめに見積もっても、2030年に中国が経済的に世界の覇権国となり、その経済力によって米国に自らの意思を押し付けることができるようになるのは避け難い、と警告しています。
同論文は、米国の4倍の人口を持つ中国が力を付け、米国に揺さぶりをかける手段として米国債を売却する等のシナリオを想定している点で興味深いので、岡崎久彦氏のブログからその内容と岡崎氏の楽観的な見方を合わせてご紹介します。
Subramanian氏は論文で
Arvind Subramanian.jpg●中国の経済的追い上げで注視すべきは
①その国が動員できる国力を示すGNP、②他の国に対する影響力に関わる貿易量、③債権国であるかどうか、の三つの指標。
●少子高齢化等の影響も勘案して、今後20年間の中国の成長率を7%とし、米国の成長率を過去30年間の平均2.5%として計算すると、2030年には中国のGDPは世界の20%、米国は15%弱となり、中国の一人当たりのGDPは米国の半分になる、
●90年代に日本の挑戦を克服したことはあるが、当時GDPの19%だった米国の財政赤字は、2020年には100%になると予想されており、また、1990年には外国による米国債保有は19%だったが、現在は50%に近く、その多くは中国が保有している、
何よりも数には勝てない。中国は人口が4倍だから、生活水準が米国の4分の1を越せば経済規模は中国の方が大きくなる。
Currency.jpg●中国は、すでに世界が欲しないことが出来るようになっており、中国はアフリカ諸国などに台湾大使館を閉鎖させたりしている。さらに、米国が欲しないことをさせられるようになれば、米国の立場は1956年のスエズ危機の際の英国と同じになる。
中国が、西太平洋における米軍にはもう我慢できないとして、$4兆ドルの米国債等を売りに出せば、ドルは暴落、米国の信用は落ち、米国債の買い手はなくなる。そうなった時、中国は西太平洋から米軍が引き揚げることを条件に、IMF融資を認めるかもしれない。
●このシナリオは現実性が無いという意見もある。1956年には米国はドルの価値に影響を与えずに英国を締めつけることができたが、中国の場合は元が急騰、通商上の利益を失い、資産も目減りする。米国はその機会に安くなった米国債を買えばよいという考え方だ。
●しかし、10年後の中国は今とは違って、もはや安い元に固執しないかもしれない。これらを総合すると、中国の覇権は予想よりも早く実現するかもしれない。
岡崎氏のコメント
Okazaki2.jpg●この論説は、一般の予想より遥かに早い将来、米中の国力が逆転した場合に、中国が米国債を大量に売りに出して起きることを想定して警告を発しているわけです。
●筆者は、実績のある一流の経済学者のようであり、この論文でも、独断的な表現は避け、あり得る反論を掲げ、理論的に議論を進めており、この論文が正しい可能性があることは否定できないのでしょう。第一次大戦前のドイツの経済軍事力も予想外のスピードで拡大しました。
●ただ、私は経済の専門家ではないですが、スエズの場合と違うのは、英通貨はその10年前に主要通貨の地位をドルに譲っていましたが、現在ドルは当分基軸通貨であり続けると予想できます。ドルが基軸通貨(少なくともその一つ)であり、それが高度技術に基づく軍事力に支えられている限り、米国はドルを印刷し続ければ、行き詰ることは無いのではないかと思われます。
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中国の不安定要因も数多く聞かれるのですが、シンプルに大づかみで概観すると上記のような可能性は十分にあり、2030年を一つの目安として種々考えを巡らすことも意味あることのように思います
その頃の日本は高齢化が更に進み・・・
「バイデン訪中と米中妥協」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12
「なぜ中国は最近高圧的か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-12
「中国インフレの混乱と処方箋」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-27
「中国バブル崩壊は秒読み」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-06

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