Air-Sea Battle検討室は良い話か?

ASEANPlus.jpg9日付「DODBuzz」が、久々にAir-Sea Battle(ASB)の検討状況に関する記事を掲載しています。決して「遂に完成!発表へ・・」のストーリーではなく、記事は、ASBが先の見えない闇の中へ突き進んでいくイメージで描かれています。
中国の拒否戦略が健全な中、CSBAレポートの考え方が消え去るわけではないですが、「数週間後には概要に関する公式文書が出るだろう」との発言も聞かれた春頃の雰囲気は完全になくなりました
9日、匿名で3名の国防省高官が会見を行い、陸軍関係者も含めた15名程度のAir-Sea Battle検討室を立ち上げると表明し、記者の質問を受けたようです。
対中関係配慮と予算削減額未定でコンセプトを打ち上げるのも困難な時期だと思いますが、今か今かの果てに肩すかしのような印象で、取材記者の主観もありますが、記事は米国軍事関係者の雰囲気を表しているような気がします
記事「陸軍もAir-Sea Battleへ」は・
●匿名を前提に3名はブリーフィングした。陸海空海兵隊からそれぞれ最低2名の佐官クラス又は同等の文民職員を派遣してもらい、ASBコンセプト専門の検討室を立ち上げる。陸軍もチームに入れる。
B-2restart.jpg●検討室はA2AD戦略により生ずる課題に対処するため、各軍種のA2AD対応の取り組みを「焦点レンズ」のように集約し、ASBコンセプト開発・遂行、訓練、装備取得、人材育成に関わる軍種間や機関間のコーディネートを行う。
●ASBの目的に関する質問に、「戦争計画でも、作戦計画でも、運用コンセプトでもない。A2ADの課題を表現し描写するデザインのフレームワークである」と抽象的に説明し、3名の高官は決して「中国」との言葉を使用せず、婉曲的な表現に終始した
●以前は、大部分が非公開でも一部は文書が公開されると言う話もあったが、移ろいやすいAir-Sea Battleは今、官僚機構の中に軌跡を向けようとしている。文書が出るか出ないか、具体的な検討期限や時間的計画は全く示されなかった
●海空軍が案をまとめ、パネッタ長官の承認を得るだけになっていたとの過去の説明との関連について、9日のブリーフィングでは明確に触れることなく、ブリーファーの一人が「パネッタ長官はASBを認知し、前進させるよう我々に青信号を送った」と説明した。しかし、本当にパネッタ長官が承認して検討室が出来たのか、拒絶されて検討室が出来るのか判然としなかった。
CSBA2ndjasbc.jpg検討室は「コンセプトを普及宣伝(promalgate)するシンプルな役割を持つ」との回答もあったが、全体に何が言いたいのか、記者達は頭をひねりながら聞いていた。シンクタンクCSBAのレポートが国防省の考えに近いと言われていたが、依然はっきりしない。
●記者が、例えば空軍のA-10が海兵隊船舶に近づく不審船舶を攻撃するとかが考えられているのかと聞くと、そうだと答えたがそれ以上は深く立ち入らず、3名は進んで具体的なことを話さない
唯一ASBを説明しているシンクタンクCSBAのレポートは、空軍爆撃機が機雷を敷設し、イージス艦が沖縄の地上基地を守るイメージを描いたが、その後の進展は何も聞こえない。
「CSBA中国対処構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
●議論は始まっている。(ただし、)検討室に資源配分を直接コントロールする権限はなく、特定の課題にスポットライトを当てることになる。各軍種から派遣される検討室勤務者は、そこでの議論や成果を各軍種に持ち帰る
検討室の設置は、ゲーツ前長官やパネッタ長官が望んでいる軍種横断の分析を永続的に行う一方、組織内の妥協によりASB公式文書の発表延期や中止を意味しているように見える
10日付米国防省HP記事が、上記ASB室設置について報じています。
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=66042
国防省発表の細部には触れませんが、まんぐーすの印象はDODBuzz記事ほどではないにしろ、勢いあるスタートというよりは、QDRで打ち上げ、アジア諸国にも説明した手前、何か取り組む姿勢を見せなければ・・・との感じです。
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以前の記事で、軍種間の対立で話が進まない、また中国を刺激したくないとの政策的配慮からASBの概要文書も発表されない等の「噂」を取り上げましたが、そんな雰囲気も感じさせます。
「Air-Sea Battleに波風」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-04
「久々にAir-Sea Battle」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-16-1
BlueAngels.jpg中国への配慮、海空海兵隊の調整難航、予算も不透明だからチョットじっくり・・・そこで検討チーム・・・。との見方でよいと思うのですが、米国の記者は厳しいですね。
いずれにしても、A2ADの脅威認識は十分に共有され、西太平洋の米軍基地の分散や抗たん性強化に配慮した施策は進んでいます。また同盟国を鍛え、同盟国間の関係強化を推進し、米軍事予算削減を補完させようとの働きかけも行っています。海軍は無人艦載機の開発を進め、空軍は長距離新爆撃機を優先事業に掲げています。
別々にASBの方向に進みつつ、オーバーラップ部分の「譲り合い」が、まだまだ「火が付く」まで進まない・・・と言った具合ではないでしょうか・・・。
Air-Sea Battleカテゴリー記事
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/archive/c2301176212-1

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