イランへの軍事力使用は核開発を1~2年遅らせるだけ。派生的影響の方を懸念
2日、パネッタ国防長官がイスラエルの在米団体であるSaban Center主催のフォーラムで講演し、イスラエルが懸念を深めている核開発を含むイランへの対応について語りました。
Willard Intercontinental Hotelという、ホワイトハウスに近い由緒正しき超高級ホテルの最上級ボールルームにゆったりと席を配置し、イスラエルと米国の国旗を並べての演出は、まだまだユダヤロビーの威光衰えず・・・を感じさせます。
ただ、この講演後の4日に、米軍の無人ステルス偵察機がイランの手に渡ったとの情報が世界を駆けめぐっており、「一寸先は闇」の世界情勢を暗示するかのようです。
パネッタ長官はイスラエル関係者に・・・
●イラン大統領はイランの核開発は平和目的だと主張しているが、11月にIAEAは公表したレポートは、イランが核兵器開発に取り組んでいる証拠を提示している
●イランによるウラン濃縮や弾頭化への取り組みはIAEAレポートで明らかで、更にヒズボラ、ハマス、他のテロ組織支援も継続している
●現時点でも、経済及び外交的な制裁措置が大きな影響を与えていることは間違いなく、イランは国際社会の中で孤立を強めている。特に在テヘラン英国大使館への襲撃事件の影響は大きい。
●11月オバマ大統領も、核兵器への願望を持ったイランと交渉する選択肢は全くない、と述べている。国際社会も共通の目標を持っている。それはイランに核兵器を開発させないことである。そしてそのために、イランに国際社会で圧力を掛け続けることである。
●圧力を掛け続けることにより、何時か彼らは、破滅か国際社会への仲間入りかを選択しなければならなくなる。
●イスラエルのネタニアフ首相は「イランへの軍事力使用は最後の手段である」と述べている。
●イランに対する軍事力使用は、せいぜい核開発を1~2年遅らせるだけである。むしろ懸念されるのは、攻撃によって生じる予期しない派生的影響である。弱体化しているイラン政権を強化するかも知れないような地域への反動を懸念している。
●また、イラン攻撃による派生的影響は、欧米経済を含む世界経済に影響を与え、更に地域に核開発競争を起こしかねない。それは中東全域を対立と紛争に巻き込むことになる。
●我々の取り組みは効果を上げており、経済と外交的制裁を継続しなければならない。軍事的制裁は最後の手段であらねばならない。
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米国の対イラン政策では、「経済や外交的手段でまず対応。しかし如何なるオプションもテーブルの上にある」との表現がこれまでの定番だったようなに思いますが、そのラインから一歩後退し、軍事オプションに対しより慎重になったように感じます。
まさかですが・・・この講演のこれらの表現を聞いて、イランが強気に出たのかもしれませんね・・・・。
「前モサド長官イラン攻撃は馬鹿」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-12
「なぜアフガンにRQ-170が」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-28-1
「ビンラディン作戦とRQ-170」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-03