この話を聞いて、米やNATOに救いの手をさしのべるロシアを単純に「素晴らしい」と考える人は少なく、何か裏で狙っている・・・と感じる方が多いと思うのですが、多分そうだと思います。
14日、ロシアのラブロフ外相はロシア議会で、ロシアの内陸部ボルガ川流域のウリヤノフスク(Ulyanovsk)基地をNATOのアフガンへの中継基地として提供することを内閣が検討していると述べました。
アフガンへの補給や輸送ルートは、昨年11月の米軍によるパキスタン兵士誤爆により、パキスタン国内地上ルートが使用不能状態にあり、北部補給ルートNDRが命綱になっているようです。特にロシア、カザフ、ウズベクの鉄道に大きく依存しているとか・・・。
ラブロフ露外相は・・・
●我々は、ロシアに直接向けられている脅威を防いでくれる彼らの任務達成を支援する
●NATOミッション成功は、テロの拡散と麻薬のロシアや中央アジア侵入を阻止する上で必要不可欠であり、その支援は極めて重要である
●ロシアはこれまで、アフガンへの物資や人員輸送のため領空内の航空路や鉄道利用を許可してきたが、新たな提案により初めて物資や人員輸送に関する兵站支援施設をロシア内に設けることを許すことになる
●(外国軍の国内基地使用がロシアの脅威になるとの主張に対し、)コアリションが撤退前にその任務を達成し、アフガンが自身で国防や治安確保をある程度実施できるようにすることはロシアの国益でもある
●NATO兵士はその施設に居住するわけではない。彼らはそこで乗り物を乗り換える等するだけである。
●要すれば、ロシアは通過する貨物等をチェックする権利を保有することになる。細部は議会の了解を得て進めることになる
NATO報道官(Lungescu女史)は
●NATOとロシアが現在構築しているアフガンとの物資・人員輸送に関する協力関係を歓迎している
●現在の協力関係に関する合意が強化されることを楽しみにしている。なぜなら安定し治安が確保されたアフガンは、NATOとロシアの双方にとって共通の利益だからである
露政府に近い評論家は・・
●このロシアからの便宜提供の申し出には、米から見返りを得ようとする思惑がある。ロシアとって外交的によい議論となろう
●露米関係は、欧州への米ミサイル防衛装備の配備や国連でのシリア非難決議を巡る立場の違いでこじれており、本件をテコにロシアは打開を追求するだろう
●特に欧州ミサイル防衛に関し、米は対イランを念頭に置いているが、露は核抑止の低下を恐れている。露は米に、露の核戦力への影響がないとの何ら中の保障を求めるのではないか?
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なぜロシアが、対イランの欧州ミサイル防衛を嫌うのか理解できないのですが、相手の弱みにつけ込んで交渉の窓口にするのは常套手段です
3月上旬にパネッタ長官がカザフスタンを訪問し、マナマ基地の使用延長を願い出たタイミングを見計らってのロシアの動き・・・この狡猾さを是非見習いたいものです。
「米露が関係改善へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-16
「ロシアの動きを見極めて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-22
「映像露ステルス機PAK-FA」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-11
「露の北方領土姿勢を斬る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-28