海軍協会Sea Air Space会議(SAS)の話題です。
17日、SAS会議の昼食会で講演した海軍トップのグリーナート作戦部長(CNO:Adm. Jonathan Greenert)は、海軍や軍事産業関係者に「完璧な装備ではなく十分なレベルを」、「海軍に本当にそんなに購入できるのか、との問いかけを」等々と語り、予算状況を見据えた堅実確実な装備品開発や調達計画の重要性を訴えました
「完璧はgoodの敵である(The perfect is the enemy of the good)」、「完全主義は将来機能しない(Perfect will not work in the future)」との言葉を用い、かつてのような研究開発を行う余裕はないと明言しています
海軍トップの海軍大将は
●かつてある議員が「完璧はgoodの敵である」と述べたが、この言葉は現在の海軍装備品調達にぴったりである。
●海軍と軍需産業の皆さんは率直に対話する必要がある。皆さんは共に問いかけるべきである。海軍は本当に今思い描いている艦艇や航空機や関連装備品を購入できるのか・・・。
●この問いかけこそが、普通の装備(common hulls)に海軍の目を向けさせるのである。コストの意識を高め、鍵となる重要な指標であることを認識する必要がある
●完全主義ではやっていけない。十分によいレベルを念頭に、それが具体的にどの程度かを明らかにしていくことが大切である。
●私が現職に就任して以来、産業界の働きは優れている。駆逐艦Spruance、強襲揚陸艦San Diego、高速攻撃型潜水艦California、更に対戦哨戒機P-8 Poseidonの質に喜んでいる。
●現在海軍は32隻の艦艇建造を契約しているが、引き続き早期完成・引き渡しをお願いする。海軍には使用年限に達し、交替を待つ老朽艦が存在するのだ
DODBuzzのコメント
●グリーナート大将の講演には抜けがある。現実に起こっていることへの言及である。今週、政府が糾弾している無駄使いスキャンダル等への言及がない
●政府や国防省役人が「軍需産業は本当に無駄使いや時間の浪費を止めるつもりがあるのか」と叫ぶのを誰も耳にしなかった。
●艦艇建造の競争は、スマホ業界の競争ではなく、(棲み分けが暗黙にある)コーラ業界のようなものである。実際、LCS選定では競合2者が共に受注する結果になっている。
●質の低かったSan Antonio級揚陸艦も製造が継続され、空母Gerald R Fordへの800億円の経費追加もなし崩しで行われている
●グリナート大将に出来ることは、今保有する装備を有効に効率的に活用することである。例えば、同大将が述べたように掃海艇をバーレーンに増強したり、海軍艦艇に魚雷のMk-54やMk-48を能力向上し、より小型の潜水艦に対処することである。
●また、実戦的な訓練を増やすことである。バーチャル訓練への依存ではなく、同大将が述べたように高速移動標的を多く準備し、巡洋艦や駆逐艦が機動力ある敵を撃退して身を守るための訓練を行わせるべきである。
●更に潜水艦探知に必要なソノブイを追加で購入し、対潜水艦作戦の訓練を強化することである。
●グリーナート大将が語ったように、「海軍は将来の艦艇や航空機の調達を求めると同時に、今現在も作戦可能でなければならない。・・・しっかり射撃が出来なければならない」のだ。
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海軍作戦部長の発言を、DODNBuzzのコメント部分も活用してご紹介しました。ゲーツ前長官が蘇ったのか・・と思うような言葉が制服幹部から次々と飛び出しています。
2010年の海軍協会総会では、ゲーツ長官が米海軍海兵隊の装備を過剰(oversized、overmatched)だと表現していましたが、今や現役制服組から「common hulls」や「Perfect will not work」との言葉を聞く時代になりました。
スマホ業界の競争ではなく、(棲み分けが暗黙にある)コーラ業界のようなものである・・・ありますねぇ・・そんな業界。
それにしても、この海軍トップは良い写真が出回らない方です。写真が嫌いなのか?
「米海軍湾岸へ戦力増強」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-19
「海軍トップが2025年の海軍を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-19
「補足:海軍トップの論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-20
「F-35化する新艦艇LCS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09
「海軍海兵隊とも全面対決へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」 http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07