22日、ブルッキングス研究所主催、笹川平和財団助成のセミナー「アジア太平洋地域における米軍の将来:米国国防予算の削減、大統領選、そして地域変動」が都内で開催され、M.O’Hanlon氏の仕切りにより2時間半にわたって色んな話が出たようです。
当日は激しい雨で、出不精のまんぐーすはスキップしましたが、知人からの聞き取りやネット情報をかき集め、勝手に再構成して「おおよそ」の内容をご紹介します。なので間違いもあると思いますが・・・。
壇上パネリストは・・・
Michael O’Hanlon氏(ブルッキングス)
Jonathan Pollack氏(ブルッキングス)
Mackenzie Eaglen氏(AEI)
Mike Mochizuki氏(ジョージワシントン大学)
Wang Dong氏(北京大学国際関係大学院)
Doong-Joon Jo氏(ソウル大学国際関係学部)
高橋杉雄氏(防衛研究所)
山口昇氏(防衛大学校)
西 恭之氏(国際変動研究所主任研究員)
知人からの聞き取りやネット情報をかき集めると・・
(O’Hanlon氏とEaglen女史)
●米国防費の削減イメージは以下の通り。現在750→2013年度650→現削減計画では将来500→強制削減(Sequestration)発動で450(単位BillionUS$)
●国防費の強制削減(Sequestration)発動は何としても阻止しなければならないが、議員の目は社会保障や教育等の票に繋がる分野の予算削減問題に向いており、国防費の問題は理解しているが、妥協形成に向けた動きが見られない。
●大統領選挙を待つ必要・・との論調もあるが、選挙後も共和民主の構図に大きな変化は見込めず、誰かが動かなければ打開の道は見えない
●仮にSequestrationが発動されれば、現有装備品や将来取得計画の変更だけではとても対処できない。国防費の半分以上は人件費であり、更なる定員削減の他、医療費や付加給付や退役軍人への処遇など、これまで困難で手を付けられなかった部分の議論が必要である。
●Offshore-balancing派が盛んに言論活動を行い、米国民の厭戦気分や財政懸念に乗じ、また大統領選挙でのアピールを狙って「内向きな」姿勢を訴えていることは確かである。
●また特に最近、シリア問題への米国の傍観者的態度を捕らえて米外交政策の変節と見る者もいるが、アジア太平洋は全く異なる。
●米国政策担当者には、民主にも共和にもOffshore-balancingを支えるようなDNAは存在していないし、極端な論調を好むメディア受けしているだけで大きな勢力とはなっていない。
(Mochizuki氏)
●普天間再編の現計画は現実を直視すべきである。普天間の海兵隊を辺野古やグアムに移設する莫大な予算が、本当に捻出可能か、無駄ではないかよく考えるべきである。
●最も容易で支持を得やすいのは、在沖縄海兵隊の司令部や緊急展開受け入れ施設を沖縄に残し、定員削減で空きが出る米西海岸やハワイの施設へ主要部隊を移転、そこからグアムでも沖縄でもフィリピンでも豪州でもローテーション派遣してプレゼンスを示す方法ではないか
(Pollack氏)
●16日にAir-Sea Battleに関するセミナーがブルッキングスで開催されたが、これまで予算獲得争いで対立してきた米海空軍トップが揃って同コンセプトの重要性を訴えるという画期的なイベントだった
●相変わらず抽象的な言葉が並び、予算縮小対策の側面が強く、また中国等を抑止するコンセプトであって具体的な戦闘場面をイメージしにくい等々の問題点が指摘されている
●また、Sequestrationが迫る中、またそれが無くても現在の予算で実現できるのかとの疑問が強く出されている。
●更に、米国は経済的な曲がり角に直面しており、米国経済活性化の鍵を握る中国との関係に配慮しつつ、対決に備えた準備を進める難しさに益々直面するだろう。
(Wang Dong氏)
●米国がどのようにソフトな対応を装っても、中国は米国が周辺国を巻き込んで「封じ込め体制」を形成しようと警戒するし、警戒している。これは政治レベルだけでなく、一般国民レベルにも根強い感情である
●南シナ海での領有権争いを、中国対他の周辺諸国、との構図だけから見るべきではない。最近もインドネシアとマレーシアの間で領土問題が持ち上がっていたが、元々種々の懸案を抱えたエリアなのである
(Doong-Joon Jo氏)
●AEIのEaglen研究員によれば、朝鮮半島に緊急事態が発生した場合、米軍は5万人派遣の計画を有しているらしい。5万人は小さな数字ではないが、北朝鮮軍の規模や南北境界線と首都ソウルが近い状況を考えれば、十分な兵力とは考えにくい。
●米国のアジア太平洋重視は文書で明らかになったが、どこまでその中身が有効なのかをしっかり見極めないといけない。戦時作戦統制権の返還の勢いで、韓国自身の自助努力がより大きく求められるのではないかとの懸念がある。
(山口氏と高橋氏)
●日米関係や国防費削減の問題は、紆余曲折はあろうがそれほど悲観的には見ていない。米国防費の件は同様の議論が過去にもあったし、日米同盟に関しても順調ではないが、他にこれに変わるような枠組みがない以上、相対的にこれがアジアの中心的役割を果たす構図に急激な変化は考えにくい
●ただし、F-35の開発遅延は日米同盟に水を差す懸案である。開発と日本への提供遅延は制空能力の穴を意味し、良くて現状維持の防衛予算におけるF-35価格の高騰は感情的な反応も含め、日米関係をぎくしゃくさせる負の要因となる
(西氏)
何を言っているのかさっぱり聞き取れなかった。
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日本側参加者で発言が理解できた山口氏と高橋氏は共に防衛省職員であり、防衛省や日本政府の公式見解を越えた発言が出来ないため突っ込んだ議論を行わず、歴史的経緯からの視点や防衛省の立場を説明するに止まらざるを得なかったようです。
ただ、高橋氏がF-35導入に精一杯の反対姿勢を示す姿(推測)に胸が熱くなりました・・。がんばれ!
今回のセミナーの米側パネリストは、多少の立場や考え方の違いはあれ、基本的に日米同盟が重要で充実させなければならないとの姿勢の皆さんです。勢いは以前ほどありませんが、議論の論点や政策的なアプローチは「地に足が付いた姿勢」や「現実的な姿勢」を失っておらず、賛成反対は抜きにして今後も相談したくなるタイプです
一方で、1980年代の日米貿易摩擦全盛時代に「反米」が染みついた方や昨今の極論月刊誌に登場する皆さんにはどうも馴染めません。老後の寂しさを紛らすためのような「晩酌発言」は、晩節を汚すだけだと思うのですが・・・。
「強制削減の陰が・・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-17
「敵に財政負担を強いる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-03
「追加予算削減の致死的影響」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-16
「Brookings AirSeaBattleセミナ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-16
「国防戦略とoffshore balancing」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-27