17日、米空軍協会主催の朝食会で空軍参謀本部の兵站副部長フェダー中将(女性:Judith Fedder)が講演し、経費削減に向けた米空軍兵站部門による3年集中見直し計画とアフガンへの物資補給や輸送に伴う課題を語っています。
軍の兵站部門は、装備品の価格以上に「謎」や「闇」の多い部分です。維持費の根拠や部品交換の頻度等、他に代替できる企業がないことから「軍需産業の言いなり」状態とも言える分野です。
また、パイロットのように組織内で「優遇」を受ける事のない軍兵站関係者は、軍需産業との密接な関係を利用した退役後の「職場探し」に力が入ります。
その結果は・・・各種維持装備品の維持費高止まりに・・と言う分かりやすいサイクルになります。
兵站分野の再精査について(18日付)
●米空軍の兵站部門は精査が必要な分野である。過剰な能力や能力の偏在を私も把握している
●注視が必要な3分野は以下の通り
—装備品修理ネットワークの統合強化と推進を2年以内に実施
—兵站分野のコスト把握と精査
—装備品開発や調達計画に兵站や調達専門家を増員して常駐させる
●今後36ヶ月間、「高飛び込み」を行うつもりで精査分析を行う。予算削減の目標額は設けていない。
●この課題を地中に埋めて隠したりしない。私たち自身に課して検討する。重点は将来の米空軍兵站部門はどうあるべきかを再定義する事にある。
アフガンへの重量物輸送は空軍だけ(18日付)
●パキスタン領内を通過する鉄道や道路が使用できない状況が続いており、当面の間、在アフガン米軍への物資補給も前線からの装備品の撤収も、ともに空軍が支えなければならないだろう
●アフガン北部に通じる鉄道ルートは多少米空軍の負担を軽減してくれるが、HumveesやMRAPと言った重量車両は輸送できない。これら重量装備品を中東のどこかの「集積基地」まで輸送できるのは、空軍空輸だけである。
●見通せる近い将来に、我が空輸能力を削減できる可能性は無いと思う。大部分が陸軍装備品であるこれらを撤収させるには、かなりの月日(considerable amount of time)を要することは間違いない。
///////////////////////////////////////////
米空軍は戦闘機や輸送機の削減を予定しており、明らかに兵站部門が過剰になります。単純にはその余剰分を精査するのでしょうが、「修理ネットワーク」や「兵站分野のコスト把握」と言った根本にもメスを入れようとしています。
我が国では軍需産業の維持が正面の話題になっていますが、防衛省・自衛隊の兵站部門にも「地中に埋めて隠したりしない。私たち自身に課して検討」すべきことが山のようにあると考えるのが自然でしょう。
なおフェダー中将は、経歴からすると航空機整備士官として王道の道を歩んでいる方で、今回、自身の過去の部下や知人が多い組織に「メスを入れる」役割を担います。
昨年11月から現職ですから、あと1年ぐらいは本腰を入れ「清水の舞台から飛び降りる」覚悟で頑張っていただきましょう。(写真は9歳時のモノとの対比)
「敵に財政負担を強いる」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-03
「強制削減検討は夏から」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-01
「QDR:産業基盤の強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08
「ゲーツ改革のまとめ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17